親になった男はどう育てる?
「今日も生き残ったか……」
鉄の香りが鼻を通して、脳までしびれさせるような感覚を染みつける。
これが戦場というものだ。
幼いころ憧れていた戦う英雄、そんなものは存在しない。
あるのはただひたすらに敵を斬りつけるただの殺人鬼だけだ。
俺はもう……人を……
はっとして目が覚めた。体中汗まみれで動機がはやい。
俺はあれから過去を忘れようと必死に努力してきたが、戦場の彼らが今の俺を見たらどう思うだろうか。
そんなことを考えながら一生過去の亡霊を忘れることはできないのだろうなと思った。
「せんせぃ!おはよぉ!」
「おはよう、ルー」
俺を起こしに、声をかけてくれたのは俺の孤児院にいる子供であり、天使であるルーちゃんである。
彼女は齢5歳にして人の気持ちをいたわることのできるとても心優しい子なのだ。
先日はプレゼントと称して手作りクッキーを作ってくれた。甘くてサクサクで、ルーちゃんの愛情がこもったとてもいいクッキーだった。
「せんせぃ変な髪だね」
そう言ってルーちゃんは笑った。とてもいい笑顔だ。
「それは朝だからな。ルーこそ寝ぐせついてるぞ」
俺はルーの寝癖を直すついでになでなでをした。本当の親の代わりに俺が彼女に愛を教えてあげるのだ。
……決してやましい意味ではなくな。
「さてと、そろそろ朝食を作るか」
そう言って俺は体を起こした。
「はやくはやく!」
そう言ってルーちゃんに手をつながれながら、食堂へと向かっていった。
「おはようロリコン、ごはん作ってやっといたです。」
んあぁっ、一瞬にして天国へと達しそうになったがぐっとこらえる。
この子はリリィ、年齢は13歳だ。彼女はこの孤児院のお姉さん的ポジションであり、俺のサポートをしてくれている。
余談だが、この罵りが生活に彩りを深めてくれていることは言うまでもないだろう。
「おはようリリィ、俺はロリコンではないぞ。あとその言葉遣いはやめなさいと言っているだろう。もっと綺麗な言葉を使いなさい。」
保護者である身として、もっと罵ってくださいということはできなかった。
これは戦場で培った感情を殺す術というやつである。
「「おはよう、ジャック」」
二つ重なる声が背後から聞こえる、これは双子のカインとサラだ。二人は10歳でカインは唯一の男の子供だ。とはいってもサラのほうが男気があるようだが。
この二人を加えた合計4人、それが俺の子供たちだ。
「おはようカインとサラ、朝食にしよう。」
今日も俺の一日が始まる。