表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dフェイブル ≪Don't dead dreams dive Fable≫  作者: 白黒源氏
【魔術師編】
72/72

【魔術師編】Lost Number



【魔壺の谷】――



【アルト】にある、誰も入れぬ場所に隠された、一つの穴。


 過去、最悪の魔族がその地に落とされ、以後、誰にも開けられずにあった場所。




 そこへ杖を持ち、カンテラで暗闇を照らす、灰色のローブを着た老人が訪れた。



『地上が騒がしくなったが、貴様が原因か?』


「貴方に会いに来る為、致し方なく無用な混乱を呼びました。まあ、実は私もコレほどの規模になるとも思っていなかったのですがね」



 穴の底、地の果よりも暗き場所にて、老人は誰かへと言葉を投げかけていた。



「……どうやら、その様子では意識があるようですね。さすがは十三魔人将、最優の一角【無刃の龍騎士】ムントだ」


『お前は……。隠者の爺か』


 お互いが旧知の存在であったが、ムントと呼ばれた人物は少し老人の事を忘れかけていていた。

 ムントは無数の穴を空け、朽ち果てた肉と骨をさらし、それでも尚、意識を保ったままそこに居た。


『久方ぶりではないか。いや。こんなところまで何をしに来た』


 ムントは体も動かさず、ただ声だけでいぶかしむ様子を老人に印象付けた。


「実は、貴方がお持ちになられていた死の神器【無刃の大鎌】をお返し頂こうと思いまして訪ねてきました」


『なぜ、今になって必要なのだ?』

「長らく眠っていた【賢奴の赤旗】が動きました」


 老人の答えに対し、ムントは感慨深げに声を吐いた。


『それが今になって【無刃】を取りに来た理由、か』


「えぇ。全く持って厄介な遺体故・・・、仕方がなく貴方に預けたままでしたが、事態が動きましたのでね」


『さてな……』


 ムントは鼻で笑った。どころか、それは含み笑いをした。



『それでは私もなんと返して良いのやら、困ってしまうな』


「どういう事でしょうか?」


『残念ながら、最初からここに【無刃】はない。信頼できる小僧にくれてやったわ』


「……なんと――」



 老人が驚く様子と共に、何かを納得したように笑みを浮かべた。



「――それでは、今は何処にあるかも御主には判らぬというのだな」


『すまんね。だが、きっと無事だろう。あの男は強くなる』


 ムントは、いつか見た小さき勇者の未来を想像しては、いつか自分を葬ってくれるだろうと信じていた。

 そのためだけに、彼はいつまでもその意識を体に宿し、じっと耐えていた。



『――して、その【赤旗】とやらはどんな奴が持っているのだ?』


「……それは、些かお答えしにくいですね」


『いつもの答えは自分で得ろというのは勘弁願いたい』


「別段、隠し立てしたいわけではないのですよ」



 ただ――と、老人は頬を指で掻いて、困ったように言った。


「彼はそうですね。貴方の期待する英雄には、いささか程遠いでしょうね」


『それは何を意味する? 力か? 意思か?』


「両方ですね。彼の本質はおそらく恐怖です。恐怖するからこそ、立ち向かう」


『……矛盾しているぞ』


「いいえ、彼は常に恐れているのです。失う事、弱くなる事、諦める事。それ故に立ち上がるのです」



『その者には師が必要だな』

「そうですね、どなたか知り合いを存じませんか?」

『……自分でやれ、爺ぃ』




【魔術師編】終幕



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ