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Dフェイブル ≪Don't dead dreams dive Fable≫  作者: 白黒源氏
【魔術師編】
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【魔術師編】20


 ジェラルドがやって来て慌ただしくなったが、とりあえず紹介がてら皆を集めて説明しようと――思ったのだが、大事なことを忘れていた。



「自己紹介を始める前に先に言っておく。俺の名前をガイアと呼ぶな」


「なんだよ、藪から棒に。自分でそう名乗ったじゃあないか?」


「とっさに思いついた偽名だ。ガイアと呼ぶ奴は俺の敵だ。俺の名前は明坂大智だ。わかったら大智って呼べ」


「……いつになく強く言うね」



 これに関してはずっと前から思っていた。


 呼ばれ過ぎて耳が慣れそうだった。大変危険だ。羞恥心すら忘れてしまったら黒歴史の再来だ。




「それなら私も。ナフカティアではなく、ナクアテッドです。大智からはナクアと呼ばれてますので、どうか皆さまもそれで」


「……大智も変な名前だけど。ナクアテッドってどっかで聞いたことあるな」



 ロインの疑問に周囲の連中も疑問符が頭に浮かんでいる。その中でもジェラルドは気が付いた様な顔をしていた。どころか、冷や汗を流している。


 黙ってる方が良いと思っていたが、なんの感慨もなくナクアが続けた。



「十三魔人将に同姓同名の方がいらっしゃるみたいですが無関係ですので、よろしくです」



 無関係どころかご本人様だよ、馬鹿野郎。

 みんな見る見るうちに全員の顔が真っ青になっていった。さっきのスープを戻しそうな顔つきだ。



「ど、どうしてナクアさんは大智と一緒に旅を?」



 ジェラルドが恐る恐るといった声だった。それほどまでに十三魔人将とは恐怖の対象なのか。いや、自分で設定作っておいてあれだけどさ。


 十三魔人将って基本的に主人公の当て馬――もとい隆也さんの活躍の踏み台としか俺の頭にはない。だから俺の中でそれほどの恐怖が湧かない。



「責任を取ってもらう為ですね」

「せ、せきにん?」

「お前、悪ふざけも大概にしろ」

「ギャー! 大智、痛い痛い! 耳は痛いです放してください‼ のーびーるー!」


 この場が混乱するのを楽しんでいるのかと思う程に滅茶苦茶な自己紹介するな。あと間違ってないけど誤解を生むような言い方をしたので耳伸ばしの刑。



「えーと、別人?」「あんな子が魔人将?」「普通に接してるし」「案外魔族って普通なのか?」



 よし、掴みは取り戻せた。なんか変な奴ってことで済ませて、次に行って記憶を曖昧にさせちまおう。


「次、ジェラルド! どこかの名家だったらしいけど、この度めでたく破門されて、ただのジェラルドになりました。はい拍手」


「なんだか、酷い紹介だね。誤魔化そうとしてないかい?」


「頼むラル、そう言わないでくれ……。これでも必死なんだ」


「わかった、善処しよう」



 普段からちゃんと説明する事を心掛けましょう。

 そんな小学生に言い聞かせる様な教訓が脳裏に過ぎった。それが出来たら苦労しないんだと言い訳したい。



「えっと、こっちの隻腕の人がロイン。【ミッドガルド】に隠れ住んでた魔血種を纏めてた人物だ。後ろの子が妹のロゼッタ」


「よろしく。親しい人にはラルって呼ばれてるよ」


「あ、ああ。よろしく」



 ジェラルドが爽やかに握手を求めると、ロインは少々たじろいだが左手で答えた。ロゼッタは相変わらずロインの後ろから出なかった。


「ロインも私と一緒にジェラさんと呼びましょう」

「そんな変な呼び方する奴はお前ひとりでいい」

「ええーそんな殺生なー」


 一々変なことを入れ込もうとする。ついでにロゼッタに擦り寄って行ったので引っ張って回収した。


「なあ、その紹介を訂正してもらえないか?」


「なにか間違ってたか?」


「俺はもうガルドに居た魔血種のリーダーじゃあない。俺達は、大智に付いて行きたいと考えてる。だからアンタが俺達のリーダーになってくれ」


「……何言ってるかわかってるのか?」


 いや、俺が何を言われているのかわからなかった。あまりの突拍子のない話に現実味がなかった。



「俺がリーダー?」


「そうだ」


「いや無理だろ。俺、お前達の事そんなに知らないし」


「俺だって、全員覚えていたわけじゃあない。でも【アルト】であの時、俺達を止めてくれたのはお前だ。俺達の心を理解してくれたのはお前なんだ。だから、頼む」



 正直、そこまで面倒見切れないと思った。


 コイツ等のリーダー? つまり代表ってことだ。でもそれって俺みたいな自己中がやるべき役職ではないだろう。


 自信はない。そもそも、コイツ等は何か勘違いをしている。



「俺は一緒にどうするかを考えると言ったけど、全員の面倒を最後まで見るなんて言ってないぞ」


「俺達は自分達で考えて決めたんだ。正直、魔境なんてどんな場所かわからない。けど、俺達魔血種が安寧に暮らせる場所があるのなら、そこへ行くのも良いんじゃないのか?」


「新天地開拓の夢でも見てるのか? たぶん、そんなモノはないぞ。魔人だって面白い奴もいれば殺戮を楽しむ奴もいる」


「じゃあ、人間と同じだな」


「……その通りだけどさ」



 なんだか俺が説得されつつある。なんでだ。なんでこうなった。都合が良いか悪いかで言うと、悪い。


 責任なんか持ちたくないって思ってる。


 一瞬考えただけでも、大勢で移動する方が不合理なことが沢山ある。


 誰かがもしも死んでしまったら、それはリーダーが責任を背負うことになる。



 色々と、頭の中で色々と背負いこむ計算をしてしまう。




 この連中の面倒を見ていくなんて、俺には荷が勝ちすぎている。



 連中の顔を見た。どいつもこいつも不安そうな顔をしている。コイツ等がこの先、一緒に旅をしていけるのかどうかわからない。




 でも、こうなったのは俺が彼等を止めたからなんだよな。つまり、彼等を止めるだけ止めて満足したら捨て置くのは、無責任の様な気もした。


 釣った魚は最後まで面倒を見ろ、とは誰の言葉か。面倒な事をしてしまった。



 いや。彼等の命を散らさずに済んだことを、面倒だなどと後悔したくはない。



「大智、私は良いと思いますよ」

「なんでさ?」

「にぎやかになります」

「……あっそ」


 ナクアが右手の裾を掴んでいた。そういわれてしまえば、俺には断れない。


 大きく深呼吸して落ち着いてみた。

 まあ、なるようになるか。


「わかったよ。人の上に立つなんて初めてだから、あんまり期待するなよ」



 全員の顔から、どうしてか笑みがこぼれていた。コイツ等がどんな大船を期待してるのか知らないが、俺は泥船だぞ。わかってないんだろうな。




 ナクアと二人で始まった旅だが、いきなり十人以上に増えてしまった。まあ、どうにかなるか。どうにかするしかないだろうな。

 考えなければいけない事が山ほどに増えた気がする。




 奇跡が起きた。何度も起こした。そして最上に近い結果を得られた。


 その代償がこれだと思えば、なんてことはない。御釣りがもらえたくらいだ。






タロットに置いて【魔術師】とは――




 Ⅰのカード。古くは魔術師ではなく【奇術師】と表記されます。


 奇術師は机の上に様々な道具を広げ、巧妙さと独創力で道具の位置を次々と移し変え、見る者の心を魅了させます。


 それは本人の努力の成果でもあり、また経験にもとる知力を兼ね備えているのです。

 また、奇術師の人物は【愚者】の未来の姿であるとも一説にあります。


 無謀な愚者が努力と経験によって奇術師へと成長し、自立したことを表しています。



 タロットカードの特徴として、正位置か逆位置かで意味が変わりますが、奇術師もその例に漏れません。


 正位置の意味は、独創力、自立心、自分の行動で選択する能力。


 対して逆位置の意味は、意志の弱さ、不安定、不幸な結末。


 今回、明坂大智は努力して自分の弱さを振り払い、最悪の結末を回避しました。

 人は変われるのです。愚かなままではいたくないという意思が本物だったからこそ、今回の様な結末を迎えたのです。

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