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Dフェイブル ≪Don't dead dreams dive Fable≫  作者: 白黒源氏
【魔術師編】
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【魔術師編】12②


「ヤバい。おいフラガ! ここの指揮官だれだ!」


「ジェ、ジェイド伯爵です!」


「それは最高指揮官だろうが‼ 今この場所に居る責任者は誰だ!?」


「い、いません!」



 は――? 

 俺の頭が阿保なのだろうか。今何を言われたのかわからなかった。


 現場に指揮官が居ないと、この男は言ったのだろうか。

 そんな馬鹿げた話があるのか。



「百以上も天聖術士を動員すれば問題はないだろうと――」


「それは頭カラッポの不死者の場合だろうが‼ 見てみろ、相手は戦略を駆使する! 今すぐ連絡する手段とかないのか⁉」


「一応、宝石機の通信石がありま――」

「あるなら言え馬鹿野郎! どこだ!?」


 城壁の管制室の様な場所に案内されるとエメラルドの宝石のピアスを渡された。これを耳に付ければいいのか。


「一個、三分しか持ちません。貴重なモノです」

「高いモノなんだな。使い方は?」

「耳に当てれば、つがいの方が勝手に反応します」


 ピアスの穴なんか作った事はないが、当てるだけでいいのか。耳に当てると宝石から空気の音がした。電話で無言状態の時に聞こえるような、あの音だ。


 それから向こう側の声が聞こえてきた。



 なんだ、怒鳴り声が遠くの方から聞こえてきた。何をしているんだ。向こう側は聞こえているんだから会話できるんだろうが、とりあえず話をしてみる。


「おーい。御取込み中失礼するぞ、誰か聞こえないかー?」


 すると今度はガタガタと音を立ててノールが出た。「そのままお待ちください」と言われて、ジェラルドの声が聞こえてきた。



『よかった、ガイア。キミがそっちに居てくれて』


「時間が無いからさっさと済ませよう。そっちから状況が見えるか?」


『残念だが、コチラは第二城壁の方から伝令が来るのを待ってる状況だ。情報誤差に十五分ある』


「一応こっちの状況を言うぞ。敵は配列していた三十の不死者を見せ餌にして東の方角から伏兵を四十走らせている」


『不死者が囮を? ……にわかには信じがたいな』


「それから現場指揮官が居ないせいで前衛がガタついてビビってる状況だ。誰が適任だ。フラガが目の前に居る。コイツに任せてもいいのか?」


『フラガに任せていい。他の有力者が軒並み、第二城壁に固められているんだ』


「ジェイド伯がそう指示したのか?」

『その通りだ』



 めまいがしてくる。ここに来て俺の中でもジェイド伯の株が音を立てて値崩れしている。もう本当、冗談じゃあない。


 なんでこんなテンプレみたいな無能をここで発揮されなきゃいけないんだ。他所でやってくれ。


『フラガ、聞こえてたか? お前が頼りだ。頼まれてくれるか?』


「はッ! このフラガ・バード、一命にかけて!」


 とりあえず目の前の前線はフラガに任せるしかない。残る問題は隠れていた四十の魔血種の不死者共だ。


「東の奴等はどうする」

『すまない。完全に虚を突かれた形だ。今から第二城壁の天聖術士たちを急いで向かわせても、一時間は掛かる』

『いかん! そんな事誰が許したか!』


 いきなりジェラルドとは別の声が聞こえてきた。恐らくジェイド伯の声だ。


『貴様、一体どこのどいつだ!? いきなりやってきたと思ったら何様のつもりだ!?』


「……ジェラルド、無理そうか?」


『誰に向かって話している! 勝手に『通信石』を使いおって! 貴様の命を持って弁償させてやるからな‼ その上、兵を勝手に動かすなど――』


「ジェラルド。とりあえず俺達で四十の方を対処するから、なるべく早めに援軍を寄こしてくれ」


『わかった。直接騎兵たちを説得してみる』

『おい、貴様ら! ふざけるんじゃあないぞ!』



(もういいや)



 通信石を捨てて城壁から飛び降りた。ナクアもつられて降りてくる。


「ナクア、俺達で魔血種の不死者をやるしかない」

「……それはわかる話ですが、作戦はありますか?」

「とりあえず馬に乗って移動しよう。目の前で俺が餌になる」

「一緒に戦います」

「……気乗りしない。今回は休憩無いぞ」

「大智一人に任せる方が怖いです」


 信用ないな。だがナクアは頑なに離れようとしない。そもそも馬に乗るにはナクアを頼るしかない。


 他に手段はないか。


 いざという時は俺がナクアを守ろう。そう決心するしかなさそうだ。


 馬を全力疾走させてようとすると、街の中では入り組んでいて移動しづらかった。起点を利かせてナクアが外から大回りする形で進軍する不死者達の前に移動する。


 だが、街を大回りしようとすると今度は草が生い茂っていた。


「……この辺の草は立ってるな。邪魔だ」


 これじゃあ伏せている不死者が居た場合、発見が難しくなる。

 いっそ、この辺の草を刈り取ってくれれば――。


「――そうだ! その手があった!」

「何か思いつきましたか?」

「ナクア。悪いが奴等の前に出たら、全力で炎の魔法を使ってくれ。奴らの足を炭にするくらいに!」

「……なるほど。足止めですか」


 魔血種の不死者は普通の不死者じゃあない。全力で走って襲ってくる。反応速度も普通じゃあない。エリートみたいな奴等だ。


 そんな奴等とまともに一体ずつ戦うのは無理だ。


 奴等の足をまず奪う。これ自体は間違いじゃない。



 やがて不死者の群れが通過する場所にまでやってきた。そこで馬から下りる。



「でもいいんですか? 魔法を使うと……」

「いい。立つ鳥痕を濁して去ろう!」

「そういう潔さは嫌いじゃないですよ」


 ナクアが道具袋の中から本を取り出した。


「ちょうど、読んでいた本に影響されたモノがあります。試してみましょう」


 ナクアが本を開けて読みながら触手で魔法陣を地面に掘っていく。魔法陣の形がたき火に使うそれよりも複雑だった。


「我が命を受けよ。炎帝の僕よ。煉獄の炎は今を持って顕現する」


 いつもと違う雰囲気がした。

 空気に熱がこもっている。空気に赤い色が付いたみたいに視界に収めた草原が赤く染まっている。


「原初たる炎よ、(たけ)よ、(たけ)よ、際限なく地を覆え。猛威を持って仇なすものを灰塵とせよ。『ヴァンフレイム』!」


 赤い草原が炎の色をした衝撃波に飲み込まれた。草は全てなぎ倒され、それを燃料に炎の海が出来上がる。

 轟轟と鳴り立てる炎が、目の前の不死者達をあっという間に呑み込み、誰もが足を焼かれて倒れ込んでいる。



「中級魔法なんて使う機会がなかったので不安でしたが上手くいきましたね」


「お前が味方で良かったと心から思うよ」



 だがこれで終わりではない。このまま放置してもやがて両足を取り戻して不死者は襲ってくる。


「そのまま維持って出来るか?」

「長くは持ちませんが、何とかやってみます」

「じゃあその間に――」

「ちょ――本気ですか!?」


 木の杖をナクアに預けて俺も炎の海に飛び込んだ。


 熱い。呼吸すると喉が焼かれそうだ。

 だが、それだけだ。この体は死を知らない。燃え盛る大地だろうと鋼鉄の様な体が延焼をものともしない。



 ……そういえば、鉄の様に硬いとは何度も考えていたが、熱耐性もあるとは思ってなかったな。


 息を止めると、喉が焼けない事に気が付き、無呼吸で焼ける大地を駆けまわった。


 動けない不死者を一方的に【賢奴の赤旗】を巻いた右拳で叩き潰していく。中には炎に焼かれても無事な個体が居たが、そいつは積極的に叩き潰していく。


 できるだけ多くの不死者を殲滅する事を心掛けるが、その中でも異常に手足の長い魔獣みたいな不死者が居た。


 ジェラルドと初遭遇した時と同じか、暴走状態で死んだ魔血種というヤツだろう。片角でトナカイみたいな形の角、身体がガリガリなのに腕や足が異常に長い。


 特徴が、一致する。


「……やっぱり、【ミッドガルド】の連中なんだな」


 一思いに、何も考えずに突き出した拳で胴体を捉えると、体内で爆発するように腹に大穴を作り、病的な姿の不死者は亡くなった。


 あんまり深い事を考えない様にしながら、黙々と不死者を捉え続けた。考え出すと、せっかく動いている体が、止まってしまうかもしれないから。

 一人倒して、溜息がでる。また次を潰しても現れる。何度やっても終わらない気分にさせられる。



「まだいるか……」



 体が棘だらけの鱗の赤いリザードマンの様な不死者がいる。

 目だけが異常に煌々と光らせている少女の不死者がいる。


 どちらも覚えのある人物だ。


(考えるな、考えたら、動けなくなる)


 結局、炎が止むまで、俺はずっと知ったハズの連中を、自分の手でつぶして、つぶして、つぶし続けた。




 きっと、次こそは失敗しない様にと心に刻みながら。


 でも、何が失敗だったのだろうか。どこで間違えてしまったのだろうか。


 何も考えない様にしていたら、そんなことまでわからなくなっていた。



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