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Dフェイブル ≪Don't dead dreams dive Fable≫  作者: 白黒源氏
【魔術師編】
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【魔術師編】9①


 現在、俺たちは航海中だった。客船とは少し違う、ちょっと大きいクルーザーみたいだ。

 個人の所有物なのか、ジェラルドが港に入ると既に出向準備が整っていた。


 舵を取っているのは執事のノールだ。他には水夫が五名、ジェラルド、ナクア、俺が乗船している。



 部屋も広いし、食室もあったり、バスルームまである。客室もあって、寝るのはハンモックではなく、普通にベットだ。


 帆は張っているが、推進能力の一つはスクリューらしい。そっちにも宝石を積んでいるらしく、この船はエンジン駆動で海を駆けているのだ。


 船だけ何故か現代っぽいと感じずにはいられない。

 いや、現実と異世界の渡航がありえるんだから、技術発想の少しはこちらに流れてもおかしくないか。


 一応、丸二日ほどで目的地に到着するようだ。


 それまで綺麗な海で回遊釣りでもしようかと考えたが、ナクアが俺を逃がさなかった。



「ナクアさん。わざわざ船でお勉強ですか?」

「そうです。さあ、そこに座りなさい」

「酔わないか?」

「勝手に酔ってください」


 怒ってた。

 まあ、それもそうかもしれない。



 休憩なし、船出の準備をしてそのまま港に移動、客室で眠ったのなんて夜が半分過ぎた頃だった。

 まさか港に移動するだけで一時間以上も掛かるとは思わなかった。さすが大きな街は違う。


 馬車馬の如く酷使させられた、と文句を言われたのがまだ耳に残ってる。



 ちなみに服装はドレスを着替えて、今はフランス民族衣装のワンピースみたいなのを着ている。


 金持ちだといろんな服を余らせているんだな。と、感想を述べたらナクアに「他にいう事ないですか?」と言われた。


 俺に女子の服装で良い回答を期待してはいけない。仕方がなく「ロリコンが喜びそうだね」と言ったら死んだ目で見つめられた。本当にそう思ったんだよ、許しておくれ。


 いまさらだが、これもナクアを怒らせた原因の一つかもしれない。



「えっと、とりあえずお怒りを御静めくださいませ、お嬢様」

「なんのゴマすりですか?」

「いや、怒ってそうだったから」

「では、怒らせるような事は控えてください。それからこの部屋にいてください」


 今回のナクアはいつもと感じが違うな。いつもの冗談が通じない。


「わかった。でも部屋の中で具体的になにするんだ?」

「とても大事なことです。大智の魔素濃度の上昇を緩和する方法になるかもしれません」

「……どうやら今回は真面目だな」

「はい、今回は冗談抜きです」




 そういう事になった。


 今思えば、部屋に篭っていられるのも船の中だけだ。勉強に集中できるなんて、こんな時くらいだろう。



「ではまず基本的なところから、大智は魔素が生きているのは知っていますか?」


「ああ、前に聞いたよ。でもそれがどうしたんだ?」


「それが重要なのですが、大智は魔素を認知していますか? こう、触れたり、見えたり、聞こえたり。感覚的なものです」


「そういうのは、ないな」


「つまり、大智は魔素のコントロールを自分で行なっていないという事ですね。ではできる様になりましょう」


「できるのか? でもジャック爺さんの言ってた話では、心の強さが魔素を抑えるって言ってなかったか?」


「私から見て大智は強くはないですが、弱すぎるという程でもないです。ですから問題は【始祖の因子】が特別強いのか、体内の魔素のコントロールが下手なのか、そのどっちかです」


 そういうものなのか。心が弱いわけではないなんて言われたの、初めてだからうまく飲み込めない。


 いや、でもジャック爺さんは自分で答えを得ろとも言っていた。つまり今はまだ、答えは無い状態なんだ。


 もしかして心が強いだけじゃあ解決しないのかもしれない。


 それに、心を強くするなんて具体性がないからイマイチわからなかったし。


 この際、色々試しておいた方が良いだろう。



「わかった。で、具体的に何をすれば良いんだ?」

「魔技を使ってみましょう。基礎魔道書にいいのがありました。自身の魔素の特性を知る為のテストです」

「お、おう。なんかわくわくする響だな」

「……真面目な話ですよ」

「ゴメン」


 しかし俺の魔技って確か、自己再生とか体力無尽蔵とか、そういうのだって言ってたな。



「とりあえず属性を知りましょう。自分から魔素を使うイメージをしてください」

「……使うイメージってなんだ? 瞑想すれば良いのか?」



 目を瞑ってとりあえず黙ってみる。


「想像してください。今、自分は何ができそうですか? 自分の体の中にある別の生物を感じてみてください」



 なんかの宗教勧誘みたいな事を言い出したナクアが不安です。いや、今回は真面目なんだった。


 できそうなことか。遠い昔、遥か銀河の彼方にいる騎士みたいにモノを浮かせでもするのか? いや、全然違うな。


(イメージ……何があるかなあ……なんも思い浮かばねえ……)



「これ、本当に意味あるのか?」

「……うーん。ではしらみつぶしで行きましょう。火はどうですか?」

「ないな」

「水や風、土のイメージだったり」

「何にもイメージない真っ暗だぞ」

「……闇属性?」

「うーん? 闇って、また根暗っぽいな」


 闇をイメージして光を吸い込むイメージをしてみる。


「どう?」

「違いますね」

「やっぱりか」


 どう表現すれば良いんだろうか。思いつかない。


「イメージがわかないという事は、目に見えるモノではないのかもしれませんね」


「つまり概念的な感じ?」


「そうです。そう、例えば――生命力では?」


「……わかった」


 しかし生命力をイメージすると言われても、一体なにをすれば良いんだ。


 目を瞑っても何を行なえばいいのかがわからないので、一度目を開けて周囲を見た。


「……あ、そうだ。生命力といえば――」


 ジャック爺さんから渡された樫の枝の杖。


 樹といえば生命の源としてイメージがしやすい。芽がでる感じだ。

 それを杖の先にポンッと生むような想像をしてみる。



 すると暖かい風がふわりと慎ましやかに頬を撫でた気がした。


「あ……」

「お?」


 ナクアが声を上げたので目を開くと、杖の先に若緑色のきれいな双葉の芽が現れた。


「おお。これが魔技か!」

「その様ですね。おめでとうございます」

「なんだ、案外簡単だったな」

「……というより、今まで方法がわからなかった方がおかしいんですが」

「調子に乗ってすみませんでした」



 だが一歩前進だ。これで今まで女の姿をしてきたが、元の男として堂々と歩けるわけだ。


 ジェラルドなんて俺が男だったと知ったらどんな顔して驚いてくれるか、期待したいものだ。



「で、どうやったら魔素濃度は下げられるんだ?」

「魔技を使わないことです」

「……いや、そんなこっちゃわかってるんだが……」

「とりあえず使わないイメージを覚えないと、どうにもならないです。不死の再生や無尽蔵の体力を意識してください。それをやめさせたら魔素濃度は下がります」

「……。全然わかんないです。先生」

「……前途多難ですね」



 とりあえず、魔技というのが俺にも使えるのがわかったが、相変わらず魔素濃度を下げる方法はわからずじまいだ。



「別の話でもして、ヒントを得ましょう」

「諦めないな。でも助かるよ」

「うーん。そういえば昨日、お屋敷に入った時に約束していた宝石に関して説明をしましょう」



 そういえば昨日そんな話をしていたか。


「魔素は生きた微生物のエネルギー体で、彼等は意思を持っています。


 対して宝石や特殊な鉱石などは純粋に別のエネルギーを保有しています。古くはコレを【マナ】と呼んでいた様です」


「おお、博識ナクアさん流石です」


「茶化さないでください。それにこれは本を読んでて得た知識です。【魔道具の作成方法】と【触媒辞典】のお陰です」



 だから絶対に売らないでくれ、と言っている風に聞こえてきた。もう売る必要はないんだから、気にするなよ。



「でも【マナ】か。語呂が魔素っぽいんだが、別物なのか?」


「本では違うと明言されてるみたいですね。それと【マナ】は神秘そのものとまで言われ、全ての生命の生みの親。つまり【マナ】があるから大地や海、神などが生まれたとか」


「ハハ、なんだそれ。いきなり突拍子の無い話になったな」


「ですね。でもそう語られてもおかしくない存在が【マナ】という事です」


「しかし全ての生みの親ってなあ」


 それって要するに創造主じゃあないか。


 創造主は俺だぞ。と、張り合ってしまいそうになる。しかし以前、記憶を失くす前のナクアが言っていた……この世界は俺の考えた世界ではないかもしれないという可能性。


 やはり、うまくピースがはまらない。どっちの可能性もありそうで、どっちでもないような、曖昧さだ。



 話は進んで、ナクアが続けた。


「あとは多種多様な種族にも便利な道具として利用されています。【マナ】は魔素と違うので魔人以外にも多用に使われます。もちろん魔族も使います。使わない理由が無いですからね」


「今の話は後付け設定みたいな存在に感じるんだけどな」



 人間が魔法を使える設定を禁止されたから代替物を用意した……みたいな感じ。


 でも【魔素】なんてどこから湧いて出てきたのかわからない設定よりかは、【マナ】の方が小説を書いていた頃の魔法理論に近いか。




 そもそも、俺が書いた世界は剣と魔法が存在する世界観だ。


 剣士は当然いたし、魔法使いもいた。次元の魔女みたいな悪辣な奴じゃなくて、味方陣営にいたのだ。


 もしかしたらそいつは魔法使いじゃあなくて設定が変わって天聖術士とかになってるんだろうか。確認が取れないからわからないけれど。



 他に【マナ】っていうと、テイル○シリーズが脳裏に浮ぶな。シンフォニ○はシリーズ内初プレイだったから特に印象深い。


 いや、関係ないか。


 後は、現実に存在する原始的宗教でマナがあるというのは知ってる。同時にキリスト教の聖書にも食べ物として登場したって事も小説でネタにする時に調べたから知ってる。


 でもこの話は関係……してなさそうだな。話が脱線してしまった。



「総括すると、宝石は生物ではない無機質なエネルギーの塊ということです」

「つまり死んでるってことだな」

「……生きていないと言う点で言えば、そうですけど。それより、何かヒントでも掴みましたか?」

「残念だが全然頭に入ってこなかった」

「バカチン」


 頭を叩かれた。全然痛くなかったが殴ったナクアが拳を痛めていた。


「うぅ、見た目が普通なので思わずやってしまいました……」

「俺も時々【フェイクスタイル】の事、忘れてる時があるよ」



 この後、再び魔技を少量だけ使いつつ、魔素のコントロール技術を学ばされた。

 感覚さえ自在に操れるようになれば常時発動の『超再生』や『無尽蔵体力』も解除できるかもしれないと考えたからだ。



 しかし成果むなしく、船を下りるまでそれ以上の進歩は何もなかった。


 後で考えた理屈だが、【次元の魔女】にそういう細工をされたんだろうと思う。でないと、初めから『不老不死の呪い』など、言わないだろう。




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