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Dフェイブル ≪Don't dead dreams dive Fable≫  作者: 白黒源氏
【魔術師編】
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【魔術師編】6①


 聖獣と守護者。


 俺にとってこの二つの単語は、読めば目を反らし、言葉で聞けば耳栓をしたくなる呪いの言葉だ。


 はっきり言って、これが俺の書いた『異世界戦線日記』らしさを象徴する文字だ。


 単純、安直、どこかで見た設定、真似事。



 そういうのに憧れる年頃だった。しょうがないじゃないか。恥ずかしいけれど、好きだったんだよ。そういう設定が。

 胸の傷に手を突っ込む気分で、今からその設定を思い出すことにした。たぶん、まだ覚えているだろう。



【聖獣】

 聖なる獣。ただし、人の形をしている。変化して獣にもなる。

 フィ――小説を書いていた頃のヒロインも、その種族だ。この世界は魔族と人間の争いを表面に出しているが、他の種族も沢山いる。その内の一つが獣人だ。


 獣人の中にも色々と種類があり、その中でも聖なる力、結界を使える存在が聖獣というカテゴリーになる。フィは白い毛並みの虎をイメージしていたのだ。つまり四聖獣の白虎だ。


 だが話が進むにつれ、四聖獣のくくりだけでは収まりが付かず、なんか白い蛇や白い狼なんかも現れることになるが、まあそんな蛇足設定の話はこの際省く。



 とりあえず特殊な結界が使え、街を守れる存在が聖獣というものになってくる。

 フィは大聖獣の一頭で、ポテンシャルが物凄く高い存在として扱っていた。


 ついでに言うと、十二歳で小さくて白くてモコモコしてて可愛い。さらに尻尾は猫っぽくなく犬みたいでフサフサ、耳も丸くなく尖がってるキツネ耳である。

 忠実で頭を撫でるとなついてくれる。そんな――妄想の塊がフィです。


 今となっては「見事に理想の彼女を妄想した設定だね」と皮肉な顔で嘲笑ってやりたい。あと元の設定の白虎からかけ離れている。


 話が聖獣ではなくフィになってしまったので戻そう。


 聖獣とは人々を守る平和のシンボルみたいな物で、基本的には【聖獣の里】に住んでいる。どこにあるかまでは記憶していなかったが、現在地から東にあるらしい。




【守護者】

 聖獣を守護する存在。聖獣と契約してその身を守る……騎士とお姫様で言うところの専属騎士だ。


 聖獣と契約すると守護者は生命力を聖獣より与えられ、凄まじい力を手に入れる事が出来る。そうして人外までに力を得て主人公は異世界に来て暴れまわるのだが、まあその話はいいか。


 リスクといえば守護者側は特に無い。聖獣の側が守護者のダメージを肩代わりするので、どちらかといえば聖獣が痛い思いをする。


 ただし、契約の破棄権は聖獣にあるので、守護者はそっぽ向かれないように努力しなければならない。


 聖獣が命を絶たれない限り守護者は死なない。守護者はそんな聖獣を守り続ける。相互共存だ。




「で、【聖獣】がナクア、【守護者】が俺ってことになってるんだが……大丈夫か?」

「二重演技ですか。難易度が高くなった気がしますね」


 作戦タイムとして一度ジェラルド達と離れ、【聖獣】と【守護者】の価値観を共有したかったのだが。

 ナクアは記憶を失っているから知らないはずだと。


「……お前、その様子だと聖獣と守護者の存在って知ってたのか?」

「うろ覚えですが、なんとなく認知していますよ。むしろ大智が詳しい事に驚いています」

「まあ、作者ですから」

「あー。例の話ですね。それよりも契約したもの同士で、誓いとか証ってあるんですか?」


 信じてないというか、ナクアからすればどうでもいいって扱いだな。


 まあ、今は確かにどうでもいい話か。


「証はないが、まあ、誓いの儀みたいなのはある。あれだ。キスを……する……こと。です」

「なるほど。理にかなってますね。ところでなんで恥かしげなのですか」

「いや、お粗末な設定だな、と思ってたから。結婚式かよってさ。逆にお前は納得するのか」

「まあ別段……(まぐあうとかだったらドンビキですけど)」



 聞こえてるぞ。流石に下ネタが強すぎるので触れないけれど。


 向こう側で俺達の様子を見ていたジェラルドがこちらの雰囲気を察してやってきた。

 他の連中は魔獣みたいな不死者の処理をしていた。天聖術で浄化して消すと言っていたので、次からはジェラルド一人と対面だ。



「作戦会議は終わったかな?」

「……ボロが出ると思ってるなら質問するの、やめて欲しいんだけど」

「ああ、すまない。だが、君達が聖獣と守護者なら凄いニュースだったからさ」

「へえ。俺達は違うから、ガセネタだよ。じゃあ俺達、もう行っても――」

「ところで二人とも。これから何処へ向かうんだい?」


 なにがところで、だ。会話を長引かせいようとする常套句使いやがって。


「……野宿先を探すんだよ。もう太陽が落ち始めてる、この辺は草の陰が高い。薪も欲しいし食料も少ない」

「なら、僕等も一緒だ。どうだろう、今夜は一緒にというのは?」

「行き先が同じとは限らないだろ。俺達、【アルト】に向かってるんだ」

「それは奇遇だ。僕等も【アルト】に帰っている途中だ。それに次の休息所は直ぐそこだ。そこには薪も食料も寝る場所もある。どうだい?」


 休息所、というのはなんだ。いや、問題はコイツ等が俺達と同じ【アルト】に向かっている事か。断りづらい。先に行き先を言ったのは不味かったな。

 ナクアが耳打ちをしてきた。


「一緒に行ってもいいのでは?」

「お前が言うからには理由があるんだろうな」

「このまま二人で行くより楽です。それにどうせ街に着けば鉢合わせになります。ついでに馬も貰いましょう、丁度二頭ほど余ってます」

「発想が黒いよ、お前」



 俺は一緒に行くのは嫌な予感しかしないんだが。特に、貞操の方面で。


 製作者が自分のナニヌキに使っていた魔道具【フェイクスタイル】。美しい女性に見えるようになり、体臭や、声音まで幻惑させる。


 自分はいい。正直この不死身の体になってから性欲とか感じたことがない。俺に万が一という可能性は有り得ない。


 だが他の連中はどうだ。特にあのフラガという男、やりかねない。


 冗談じゃあない。夜中に夜這いする男が俺の正体を知った瞬間、人と魔の争いが起きる。ギャグだと思ったらホモ展開、最後に殺し合いになるなんて、考えただけでも現場に自分がいるなら逃げ出したくなる。


「……一つ条件がある」

「なにかな?」

「俺とナクアに絶対にさわるな」


 真面目に言ったのだが、笑われた。ナクアまで笑いを堪えている。真剣な話なのに何故だ。


「確かに、女だけの旅ならそこは気にするよね。いいだろう。フラガに言い聞かせておくよ」




 合意してしまった。成り行きとはいえ、大丈夫だろうか。

 しかしもう遅い。とりあえずついて行く事になり、馬に乗らなければいけなくなった。


「お嬢ちゃん、馬には乗れるのか?」

「たぶん大丈夫です」


 目隠ししている状態でも馬に難なく飛び乗りやがった。凄いな。馬の乗り方まで記憶に残ってるのか。いや、体が覚えているのか。

 それにしても馬が誇らしげだ。乗った奴がいいからなのか。


「良い子ですね。落ち着いていますし、度量もいいし、自信に溢れています」

「よかったら貰ってくれるか?」

「いいんですか?」

「もちろんです。聖獣様――ではなく、妹ちゃんなんだったな」


 全然隠せてないぞ、副隊長。


 しかし人の事ばかり気にしてる場合ではない。問題は俺だ。乗馬経験なんて小学校の頃に移動動物園のロバに乗ったくらいだ。いや、アレを乗馬とカウントしていいのかもわからん。まずは足を輪っかに掛けて飛び乗ればいいのか。

 と素人知識しかないのに茶色い毛並の馬に近づいた。すると何故か自分から膝を屈してしゃがみこんだ。凄いな、馬ってこんなことできたのか。

 というか、他の連中の馬ってそんなことしてないだろ。何だコイツ。


 とりあえず乗ってみる。まだ座っている。何が足りないか他人の見様見真似をする。手綱を握り、足に輪を掛け、足全体で馬の体にしがみつく。


 それが合図なのか、馬は勇ましく立ち上がった。凄く視線が高い、いままで見たことも無い高さだ。


 馬は「余裕よゆう」と自慢するみたいに鼻をならした。


 この馬はきっと強い。背中からでもこの力強さがわかる。きっと速い部類だろう。

 でも何故だ。さっきからこの馬、俺を視界に入れ続けている。見つめているのか。


「……なんかいやらしい顔してる馬だな」

「その馬、女なら誰でも乗せる暴れ種馬だから気をつけてね」

「そういう理由かよ」


 敵は人間だけじゃあなかった。気が休まらない。俺の明日はどっちだ。



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