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Dフェイブル ≪Don't dead dreams dive Fable≫  作者: 白黒源氏
【魔術師編】
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【魔術師編】5④


 天気は回復しつつあった。雨もあがり、雲も少し薄くはなっている。

 しかしこちらの状況は不透明極まっていた。


 まさか、目の色と髪で判断されるとは思わなかった。ナクアの見た目はシルエットならば人間かもしれないが、通常の色ではなかった。少し常識を忘れていたようだ。口車に乗った結果がこれだ。

 ナクアには目を隠してもらっておいた。自分の触手で、まるで目が悪く、包帯でもしているように。


「……とりあえず、そうだな。何らかの病気で目が悪くて、魔物みたいに周囲から腫れ物扱いされてきた可哀想な俺の妹ってことでいいな?」


 目や髪の色がアルビノになる病気って確かあっただろう。それに乗っかる作戦というか、ただの言い訳だ。



「大智こそ、俺って一人称、変えた方がいいのでは?」

「もう遅いだろ。男勝りってことで」



 穴だらけの打ち合わせを終え、不自然に見えない様に心掛けてから、いよいよ騎士団連中と御対面だ。

 ジェラルドが代表として話をする――かと思えば、副隊長と名乗っていたフラガだった。鼻の下が伸びているので何を考えているのかすぐわかった。


「凄いな、キミ。まるで戦女神の様だった。貴方の御名前をぜひお聞かせくださいませんか?」

「ナンパ男の第一声かよ」


 面倒だ。アホらしい。

 無視して本丸のジェラルドに向き直った。

 こっちは相変わらず凛々しい顔つきだ。難敵じゃあなければいいけれど。


「助けてもらって感謝してるよ。僕はジェラルド。この隊の指揮官だ」

「ガイア、よろしく。こっちはナフカ。俺たちは助けたつもりも無いから気にしないでいい」

「へえ、ガイアか。性格ばかりでなく名前まで強そうだ。二人はどういう関係なの?」

「姉妹だ。あんまり詮索しないでくれ」

「深い事情でも?」

「……想像に任せる」


 こっちの嫌なところに遠慮なしだな。疑ってるどころか、ナクアが魔族だと確信を持たれているのだろうか。


 いや、それにしてはぬるい。後ろの連中、気を抜いてやがる。もう戦いは終わったとばかりに安心している。陣形どころか、各々好きに休息を取っているぞ。妙な気分だ。


 ナクアが気を利かせて嘘を合せてきた。


「姉はこの通り口下手ですので、私が事情を話します」

「ナフカさんだったね。その目は? 先ほどは包帯などしてませんでしたが」


「私は生まれつき、病気を患っていまして。身体を動かすのに支障はないのですが、目を隠すのは気味悪がられるからです。髪もそれの所為です。姉は私を不憫に思い、この病気を治す為に一緒に旅をしてくれているのです」


「そうか、それは苦労してるね」


「そうでもないです。お姉ちゃんのお蔭で私、自由に外を歩けて楽しいです。里にいた頃は、私の事を悪魔だと母にも言われてきました。それに比べればこれくらい――」


 お、おう。なんだ、この胸に突き刺さる痛みは。罪悪感とかじゃあないな。

 設定が、なんか重苦しい。悲しくなって切なくなってくるのだ。この女やりおる。世界が違えば名女優だったかもしれない。



 しかしこれ以上の演技に俺は設定を用意してない。どこから来たとか言われても、ボロがでる。


「キミ達は何処から来たんだい?」


 ほらきた。しかもナクアの奴、顔は余裕だが、手に汗握ってる。

 たぶん、どこから来た設定にすれば自然か、脳内で計算しているんだ。もっと自然に言わなきゃ怪しまれる。いや、もう十分に怪しまれているのか。


「……あんまり学がないんだ。何処と言われても、東からとしかわからない」

「へえ。ナフカちゃんは?」

「森……ですね」


 ジェラルドの表情が一瞬曇った。なにか琴線に触れたのかもしれない。


「ちょっと、いいですか?」


 聖騎士の一人、たしか一度声を掛けられた女性だ。




「もしかして、二人は【聖獣】とその【守護者】なのでは……?」




 聖獣、守護者。

 聞き覚えのある単語だ。それはもしや、俺が小説を書いていた頃に作った設定じゃあないのか。


 聖獣で幼い見た目の幼女、フィ。

 聖獣を助けて異世界に殴り込みをする主人公、浅見隆也。


 その二人の関係と同じだと勘違い女は言った。

 その瞬間、副団長のフラガと、もう一人の男が急に顔色を変えていた。


「……ま、マジですか!?」

「ああ、そう言えば見たことも無い力を使っていた。だが、聖獣の加護であれば確かに――」

「やっぱり、そうなんですよね!」


 後ろの三人が半分信じて始めた、どころかそのまま納得し始めた。


「東って言えばドンピシャだ!」

「森ってやっぱり聖獣の森ですか!?」

「姿を隠しているのは、世を忍んで魔族討伐の巡回をしていらっしゃるのでは!?」


「静かにしろ!」


 ジェラルドが三人に自制させたが、彼らの喜び様はそれでは収まりきらない。


 この時、俺は別の事を考えていた。


(なんだ、この三文芝居のような展開は。正直、彼らの勘違いは都合がいい。都合はいいが、勘違いのスケールが無駄に大きくて怖い)


 つまり、ビビっていた。



「後ろの三人が失礼した。彼らはこう言ってるが、どうなんだい?」


 もう何も考えつかなかった。嘘を突き通すか釈明をするか。どっちに利があるかないか。いや、それより言葉を早く返さねば怪しまれる。


「……ご想像にお任せします」


 無意識に委縮してしまったからか、丁寧な言葉遣いになってしまった。それが決め手だったのか。

 奴らの喜びがさらに増す結果になってしまった。




 俺達は【聖獣】とその【守護者】という事にされてしまった。




「……壮大な嘘が構築されちまったぞ。どうするんだよ」

「私にもわかりません」



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