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バタフライエフェクト

涙のひとしずくが落ちる頃、そのタイミングで、私は過去に戻ることができるのです。

あの時に戻りたい、やり直したい、そう思い流す後悔の涙が、私を運んでいくのかもしれません。


私は、そうあの日に帰りたいとずっと思っていたのに、忙しい毎日にのまれていました。

10歳の冬、クラスメイトの間山くんにマフラーを渡しそびれたあの日へ。


私は彼のことが嫌いでした。顔を合わせればからかわれたり口喧嘩をする毎日で、幼かった私はいつも煩わしさを感じていました。だけどそれでも、私の視線はよく彼に向いていたのを覚えています。

それは恋なんかではなく、彼がとてもキレイな顔をし、優しく、さみしそうだったからでした。


彼は自分のことを話すことはめったにありませんでしたが、私の知る12歳までの彼には、何回か父親が変わっていました。


私は編み物が趣味で、毎年冬にはセーターや手袋なんかを製作していました。そして唐突に、嫌いなはずの彼にマフラーをプレゼントしたくなったのです。

当時私は、つい照れてしまって、完成したものを持ったまま彼の家で立ち尽くし、そのまま持ってかえって来てしまいました。


だけど私は時々それを悔やむのでした。私は、彼を少しでも温めてあげたかった。冬のいつの日でも寒そうな格好でサッカーをする彼を、親の目に触れていなそうな提出物を、あまりない表情のバリエーションを、私は少しでも包んであげたかった。


私は帰る。やり直すことができる。でも、と思いました。


私は何も持たず、涙をこらえ、家を飛び出しました。

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