課題 ハロウィン
その晩はまだ冬至前だというのに酷く冷え込み、ベットの上の私をいつも以上に縮こませていた。
この病室に囚われてから早一年。闘病生活は長いようで、振り返ればあっという間であった。
時というのは無情だ。数ヶ月ほど前に孫から貰った植木も、今では窓辺に置かれたままぐったりと枯れてしまっている。そういえばあれ以来孫の顔を見ていない。元気にしているだろうかーー
途切れかけの意識の淵で家族のことを思い返していた、ちょうどその時。
「とりっくおあとりーと! さぁ、僕たちとお菓子を集めに行こう!」
ガラリとドアが開いたかと思えば、カボチャの被り物をした小さな子供がベットの側まで駆け寄ってきた。眠りかけていた私は驚きのあまり飛び起きたが、すぐに胸を撫で下ろす。
「裕太じゃないか! 見舞いに来てくれたんだね。しばらく見なかったから、お婆ちゃん嬉しいよ」
自分の孫なのだ。顔が隠れていても間違うはずがない。
「みんな迎えに来てるんだよ? さ、早くいこ!」
黒い外套を揺らしながら、裕太は急かすようにドアの奥を指差す。そこには裕太と同じような格好の男女が数人、揺らめいていた。
「サプライズのつもりかい?」
孫に手を引かれるままベットから降り、ドアの向こうで笑う家族の元へ。
そう、今夜は万聖節前夜祭。この歳になっても、やはりこういうものは楽しい。それになにより家族と共に過ごせるのだ。
「お菓子集めの旅に、しゅっぱーつ!」
孫と共に声高らかに宣言して、私たちは病室を後にした。
今夜は寒いはずなのに、孫と繋いだ手は不思議なほど暖かかった。