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現世隔離 二話

想わず水を掬いたくなるような、透明な水。

それは膨大な水の鏡。

透明なレンズが幾重にも重ねると、それは深い蒼を生み出す。

一望できる位置から、この水溜りを見れば、周りに生えた樹木が蒼い鏡に反射して映し出されているのを確認できるだろう。

夜気が目覚める時刻には、その圧倒的な面積の鏡は闇を映し、その一部で映し出された月は、幻想的で感嘆のため息すら浮かべてしまいそうになる。

だが、そんな幻想を打ち破り、巨大な自然鏡は霧の中に埋没した。

摩周湖。

霧のと代名詞が付く程に、霧が発生し易い湖。

晴れ渡り摩周湖の姿を見ると縁談が遠のく(行き後れ)という噂がある程に、この摩周湖には霧に覆われる事がある。

だが、この霧はどこか不自然だった。

余りに濃厚で視界が塞がれているとかいうレベルではなかった。

勢い良く吹き上がる水蒸気。

無数の粒子が光を遮り、月の姿が摩周湖の鏡に映ることはない。

霧と月明かりにスクリーンに影が奔る。

それはこの濃厚な霧の中で蠢く何かがいる証拠だった。

ジュワァァァ!!

熱したフライパンの上に水が滴ったような音がし、音源から霧が膨らむ。

その音が頻繁に起こり、更に霧は濃さを増していく。

地元の人が見れば、摩周湖の水位が著しく落ちていることに目を剥くことだろう。

水蒸気が地上近くで凝結し、その細かな水滴がけむりのようなに地上を覆う現象ではなく、人工的に生み出されたものだった。

又も摩周湖の一角で蒸発音がし、霧の濃度が膨れる。

今回はどこか霧に紅いものが混じり、純粋な白色が失われていた。

そこで一旦音が停止し、霧の中を跋扈していた影も水面で佇む。

影は二つあり、それらは向かい合いながら、波紋を漂わせながら水面(みなも)を立っていた。

「どうして戦いにならないのですか?」

長い棒状のもの携えた影が詰問してくる。

重厚な声音が、深みのある霧に負けず、響くように流れた。

まるで、水蒸気がその声を邪魔すること許されていないように。

対して、自分の片肩を抱くようにして膝が落ちかけているもう一つの影。

その声音は凛とし、此方も何者も邪魔すること許されていないような響きを秘めていた。

「わからぬからだ」

「……わからぬとは、どういう意味ですか?」

「それ以外に言い様などあるものか。

(われ)は承諾などしておらぬ。

そもそも、この戦いに意味がないという意味自体が可笑しな話ではないか」

「存分に振るえる場を与えられた、それではイケないのですか?」

「そもそも、その意見が気に食わぬ。

朕は人の世等に興味は無い」

その声には何の感傷もなく、本当にそうであると語っていた。

「それに奇妙ではないか。

影であるお主らは、相応しきものを振るう場を与えられた。

朕らには、永劫なる流れを与えられた。

それは誰に趣旨だ。

朕はお主の主だとばかり想っていたが、その様子ならば、この推論は破棄せねばならぬな」

棒の持った影が微かに揺れる。

それが、どこか想う処があったのだろう。

「ですが、もう火蓋は切って落とされているのです。

他の主達も、己が別名を顕現化させ、永劫なる流れを求め、他を排出していく。

ルールがある以上、消し合うしかない。

それでも闘わぬと申されるなら、物言わぬままに消えて貰います」

「くだらぬ」

相手の言い分を一蹴した。

それと同時に一陣の風が影から霧を剥ぎ取っていく。

霧が失せた棒は槍となり、人影は鎧と重圧感と凄みを纏いし者になる。

槍は穂先がシンプルな両刃型になっており、四十センチ程の刃渡りをしていた。

穂先と握り手を繋ぐ柄は一メートル半ぐらいあり、通常このタイプである大身槍よりも大きめな造りになっていた。

矛先から柄まで黄金に輝いており、矛先には細かな文様が刻まれていた。

煌びやかで、どこか実用めいて見えないが、所持している者との一体感から、それが紛れも無い実用的な武器であることを物語っていた。

そしてこの槍を携えている者は、武人と称するに値するような風格を持ち合わせていた。

厳格で彫りの深い顔立ち。

敵を射竦める様な眼光を宿していた。

全身が茶褐色で、短めの頭髪も、威厳に満ちた髭も茶褐色をしていた。

「くだらぬと申されるか、あくまで」

肩を抱えた人影も霧から姿を現す。

右半分が消えた黒い衣服。

大気に晒された右肩は炭化しており、その奥に赤い肉が脈打っていた。

だが、その傷口の炭化部分は剥げ落ち、見る見る内に肉が盛り上がって傷口を塞いでいく。

決して浅い傷ではなかった。

骨まで傷は達していて、神経は焼き切られていた程。

それを瞬きの内に消し去り、跡の欠片すら見当たらない。

再生。

余りにも途方もないが、これは新陳代謝能力による、只に再生だった。

「…なら、死して須弥山(しゅみせん)に戻られよ、月天(がってん)様」

槍を携えた男は、水面を蹴り大きな波紋を派生させる。

半瞬。

一瞬にも満たない間に、間合いをゼロにし、手にした黄金の槍を突き放つ。

月天と呼ばれし男は、これを半身になり、ギリギリに躱した。

だが、わき腹近くと通り過ぎた槍から、霹靂(へきれき)が迸る。

天から零れ落ちた雷の如く瞬き、その奔流が月天を叩く。

半壊していた衣服は消し炭になり、そして肉を焦がしていく。

これはあくまで帯電放熱。

槍から放たれた雷は月天の身体の隅々まで及び、獣のような咆哮を吐かせる。

「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!」

世界が光に包まれたように発光し、それが止むと、澄んだ水面に人影が沈んでいく。

全身が炭化し、墨と化した物体と成り果てものは、先程槍より発せられた熱量により干上がった底へと姿を消す。

「終わりです、月天様」

終焉を告げ、武人は水面を去ろうとする。

穴が空いた水面は、重力に引かれて水位を下げながらも戻っていく。

完全に決着がついたと想われた矢先、

「ナウ」

水の底から響く声。

水の壁すら、その声を邪魔することはなく、凛とした声が武人の耳に飛び込んでくる。

「マク サ マ ンダ ボ ダ ナン セン ダラ ヤ ソワ カ」

その真言が告げられると、水面は一面に淡い光に包まれる。

それは柔らか降り注ぐ月光のようだった。

「迷いがある内は、喩え朕の凌ぐ力は有っても、朕を殺す事は叶わぬ」

水が透過し、炭化する前と寸分も違わぬ姿で月天は水面に復帰してくる。

月光に似た淡いクリーム色の髪が水を滴らせていた。

「…酒神(ソーマ)

私とした事が、月天様の別称を忘れてしまっていました」

「インドラ、朕は干渉する事を嫌い、それ故に位にたった。

だが、それは押し上げられたもので、その場所に立つことこそが干渉しているのだと識ってしまった。

だから、朕を月天と呼ぶな。

朕はヴリトラ」

「わかりませぬ。

何故に位を貶め、自ら悪魔と名乗るのですか?」

「業故。

そして、逃れられぬように、これが朕であるからだ。

この名こそ、朕が不干渉を刻んだ証であり、本当の名だからだ」

止んだ霧が、夜風に舞い霧散していく。

静寂が、インドラと呼ばれし者に、ヴリトラと名乗った者の決意を沁み亘らせる。

「お主は英雄だが、優しすぎる。

手を引け、お前では朕は斃せぬ」

「世迷言を。

戦いに特化した私が、貴方様に負けると」

「勝てはせぬよ、お主では。

確かにお主が強い。

神影でありながら、十二天に並ぶだろう。

だが、戦いに最も大事なものを、お主は今持ってはおらぬ」

「私に何が足りぬと」

「一切の迷いを捨てた、無心。

逡巡しているお主は、戦いに向かぬ。

未だ朕の方が、戦いに向いておるわ」

侮辱。

それは戦いを旨とし、英雄とて武勇を重ねてきた者に対する最大の侮辱。

カラッと鎧の金具が音を立て、インドラが構えた事を伝える。

「その言葉、後悔しますよ、…ヴリトラ」

相手の主張を認め、敵として相手を肉薄する。

黄金の槍はバチバチっと放電し、舌なめずりする獣の如くに、今かと牙を剥き出しにしていた。

「イ!!」

そして槍を持つ反対の手を、親指と人差し指を立て、後を折り畳み半印とする。

その印に反応し、槍の放電が増し、黄金から光の槍に転化した。

(封界させたか。

あれこそ技巧神トラヴァシュトリが創り上げた、金剛杵ヴァジュラの本領か)

余りの熱量が、再び辺り一体を水蒸気の舞台へと変更させる。

持ち主には影響はないらしく、その槍は遺憾なく発揮されようとしていた。

「久方ぶり。

私とて、この解放はどうなるかわかりませぬ。

須弥山なら兎も角、このような脆弱なる地で振るうのは初めて」

それが意味する事に、流石に大口を叩いたヴリトラ内に芽生えるものを抑えきる事が出来ないでいた。

だが、それは芽生えただけに過ぎず、溢れるには足りはしない。

(だから、お主では役不足だろいうのだっ!)

足は水面を蹴り、その恐ろしき現象に歩んでいく。

それを堺にし、インドラは光の槍を振り下ろす。

一瞬、世界から音が消え去る。

あるのは光り輝く一つの球体。

摩周湖の中心で、小型の太陽が生まれた。

耐え切れずに、水はこの場から気体となり、逃げ遂していく。

「だ、から、甘いと、いうのだぁ!」

「莫迦なっ!」

インドラのヴァジュラは、ヴリトラの頭蓋骨を砕くべく、神速の速さで振り下ろされた。

ヴリトラの反応では、精々首を傾げて、その攻撃を頭から肩に移すぐらいにしか出来なかった。

先程肉体を炭化させた雷とは比較にならない、死滅を促す一撃は、確かにヴリトラの肩を斬りつけたていた。

だが、それだけだった。

光に包まれた刃は皮、肉、神経、骨を裂きながら埋没していく。

だが、その神速なる一撃は胸の部分で止まってしまっていた。

柄の部分に伸びたヴリトラの両腕が、凶悪な撃ち込みを胸部分で推し止めた。

だが、そこから放たれて雷がヴリトラの肉を襲う。

原子力発電と同格の電気が、全身を駆け巡る。

細胞は瞬間で壊死し、間も無く焼死する。

瞬きの間に二度もの死を与える、雅に必死を必至する一撃。

だが、その中でヴリトラなる者は息をしていた。

斬り裂かれ、そこから流し込まれる電流に意識を失わないようにしながら、簸たすら耐える。

細胞は確かに壊死し、焼死している。

だが、その同等の速度で細胞が生まれていた。

これは再生等といる生易しいものではなく、新生と言って良いだろう。

(私の必至に耐えるだと、そんな莫迦なっ!)

それはインドラが秘蔵。

見たものは必ず地上に残らない、必殺を受けるのに相応しい攻撃だった。

それは決して真っ向から受け止めるなど、事実上不可能だと自負していた。

この一撃はインドラのプライドそのもの。

「莫迦なっ!」

再び激昂する。

別名(ソーマ)に全てを注ぎ、耐え切るとでもいうのかっ!)

ヴリトラには勝算があった。

身体的能力、攻撃力共にこちらを上回る敵。

何よりも、戦闘系でない自分が、戦闘を生業としてきた者を迎撃する方法。

確かに単純な戦闘とすれば、どうやっても勝ち目がない。

だが、相手の攻撃先、そして攻撃手段がわかれば、それに対処できるだけの能力を持ち合わせていた。

ヴリトラの挑発は攻撃の矛先を一にし、そして手段を最大のものに設定させた。

これを破ることは、つまり武人である者のプライドそのものを破ると同義。

そして、自分の能力はその一撃を破るに適した能力だということを理解していた。

これを避けられたならば、相手の自尊心は保たれるだろうが、圧倒的な自信の元に放たれた攻撃を耐え切る事は、それだけで戦士としての戦意を奪い去る。

どんなに強大で一撃でも、それが消滅へと繋ぐのではなく、あくまで物理的な干渉を元の攻撃である以上、細胞を砕く段階を得なければならない。

一の細胞を砕かれる前に、一の細胞を生み出せれば、理論上耐え切れる。

(その甘さ、戦いにおいては不要っ!

それ故に、大切なものまで剥ぎ取られるのだ、インドラよ!)

槍の燐光が次第に失せていく。

それはインドラという武人のプライドのともし火だった。

動揺から、槍の篭っていた力が緩む。

耐え忍んでいた両腕を弾き返し、埋まっていた槍を引き抜かせる。

そこから素早く親指と薬指を輪にし、後の指を突き立てる印とする。

「マン!」

その叫び声に応えるように、左の掌底部分から尖った物体が肉を突き破り、ニョキニョキっと生えてくる。

それを右手で掴み、引き抜く。

それは先端が半月状の杖だった。

「っ!」

危険を察知したインドラは咄嗟に水面を蹴って、後退する。

「遅いっ!」

半月の杖を逆さにし、柄の底、ツンと呼ばれる部分をインドラの鎧の繋ぎ目を抜け、腹部に突き立っていた。

尖ったツンがインドラの肉にめり込む感覚が伝わってくる。

ほんの先端が内部に侵入を果たす。

それはヴリトラにとって、十分の勝機だった。

「ナウ マク サ マ ンダ ボ ダ ナン セン ダラ ヤ ソワ カ」

その真言が生み出す奔流が、杖を伝い、インドラへと流れ込む。

巨大なダイナモから発せられる神氣を只流し込むという単純明解な方法。

「グァァァァァッ!!!」

今度は、インドラからこの世のものとは想えぬ叫び声が木霊した。

インドラは寸でで杖の引き抜き、流れを止める。

「ウッ、ググゥゥゥ」

歯を食い縛り、槍を杖代わりにして何とか体制を保つ。

だが、これは強がりで最早戦う力など微塵もないとヴリトラは理解していた。

だからこそ、消し去る前の流れを塞き止め、一命を残したのだ。

口を開こうとして、そこからバケツ一杯ぐらいの吐血が溢れ出す。

あるのは腹部の小さな刺し傷だけだが、その内部は生命活動持続するにはあまりに無慚な程に破壊し尽くされていた。

「殺さぬのかという問いならば、初めにした。

朕は戦わぬとな。

これは只の正当防衛に過ぎん。

主の下に帰り、そう伝えよ」

今にも崩れ落ちそうなインドラに背を向ける。

「朕らの能力なら、その傷とて致命傷と呼ぶ程ではないだろう。

帰還する事だけに専念すれば、命は助かるだろう」

あれだけの猛攻を凌いだに係わらず、ヴリトラの肩の傷は跡形もなく消えていた。

第三者が見ても、勝負は決しているのは一目瞭然だった。

(まっ、…まてぇ!!)

声に出せぬ今、血走った眼光だけがその言葉を発していた。

だが、それを完全に無視し、ヴリトラは武人を侮辱した行為を残したまま、去っていく。

ヴリトラは、この勝負を強者の宴である闘いではなく、只の戦いと打ち捨てたのだ。

(まぁてぇぇ!!)

一歩前に進む為に、全身が引き裂かれそうな激痛が迸り、それでもインドラは屈辱に塗れた躰を突き動かす。

(追ってはならぬ)

(!!

……さま)

脳裡に主の声が響いてくる。

(これは貴様の失態だ。

月天に感謝するのだな。

屈辱で張り裂けそうでも、貴様に追う権限などない。

戻るがよい。

戦いの初戦にて貴様を失う訳にはいかぬ)

(しかし!!)

(恥を上塗りする気か?

それで野たれ死ぬしか能がなくなる。

それを望むか、愚か者が)

容赦のない叱咤が飛び、インドラを詰る。

(申…し訳ご…ざいま…せん)

帰還を承諾すると、脳裡を占めていた声が消え失せる。

(月天…、否、ヴリト…ラ、この次は)

憤怒で歪んだ形相でヴリトラが去った方向を睨むつけると、崩れ落ちそうな身を保ち、摩周湖の水面から姿を消していく。




波紋を幾つも発生させながら、岸辺を目指し歩くもの。

(誰が甘いか。

ほんの少しでも気を緩めていれば、間違いなくあの一撃は必至だった)

先を読み、展開したにも関わらず、あのような無様な策にしか及べなかった。

それが今の自分の限界だと知った上で、身を囮にした生存方を選んだのだ。

あれ以外の方法が無かった訳ではないが、それでは意味がない。

(誰が乗ってやるものか!!

朕は…)

波紋が乱れ、いつの間にか足の裏が水面を弾かなくなっていた。

そしてどんどんと沈んでいく自分にすら気が付かないでいた。

膝元まで沈み、バシャと叩いた水面下から雫が頬に付着するが、それすら蚊帳の外にあった。

憤っていなければ、今にも意識が闇に消え去ってしまいそうな程に、ヴリトラの肉は活動限界に達していた。

(くっ、脆弱が!!)

ゆり動くことが、意識レベルを落としていき、朦朧と無意識の領域へと進行していくのを抑えきれないでいた。

落ち込んだ水面から足を離し、岸辺に踏み入れた瞬間に、三日月の反射光がすら届かない闇が視界を覆い、意識は明滅した。

(こ・・ん・な、と・・ころで)

酷使した躰が、意識を断ち切る。

肉を持つということが、肉体との共有だということを思い知らされ、強靭な精神すら凌駕する断裂がヴリトラの意識を刈り取っていく。

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