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守護清廉 一話

[5 守護清廉(しゅごせいれん)


片腕が宙に舞う。

ブーメランのように旋回しながら、それは地に落ちた。

激痛が身を襲い、呼吸が血液と共に失せた酸素不足により、呼吸が荒くなってくる。

「どうした、もう仕舞いか?」

あざ笑うその声を意識の外に追いやり、肉体制御を行い止血だけはしておく。

腕の斬れ目が灼熱彩に染まり、異様に熱い。

上手く頭が廻らないが、この腕を切り落とした剣がナイルリチと同じ意味を持ち合わせていることだけは理解できた。

もしかしたら、この神具こそナイルリチの真の姿なのかもしれない。

再生が利かない。

そして消し去られていく存在。

後数秒もすれば、完全に躰と腕の付け根が無かった事にされてしまう。

ナイルリチが足を吹き飛ばした際には、咄嗟に侵食を塞ぎ、書き換えることに成功した。

それ故に脚をあるものとして回復できたが、無いものと完全に定義されてしまっては、書き換えるべき認識枠がなく、腕は二度と本来の位置に引っ付く事はない。

直ぐにでも神氣をフルに遣い、認識の書き換えをしなければならないのだが、破滅の侵食、敵の神氣を進行を押さえ込むだけの神氣も、それを行うだけの暇すら与えてもらえない。

侵犯されていく。

切り離された腕が、頭の中から無かったものにされてしまう。

言いようのない喪失感だけが残る。

いずれは何を失ったかも忘れてしまうだろう。

被害を腕一本に未だ収めているのは快挙だった。

全神経を活用し、避けことのみに集中していたのが正解だった。

でなければ今頃、真っ二つになって横たわっているだろう。

だが、この腕の付け根からする激痛が集中力を乱し、その作業に没頭できない。

ある意味ではこの激痛が残っている限り、失われたものを忘れる事はないだろう。

だが、今はその事を気にしている余裕はない。

羅刹天の動きはそれ程速くはない。

ナイルリチが肉体を持って攻撃をしていた速度と、大差はなかった。

だが、プレッシャーそのものが違い過ぎた。

羅刹天が軽くあしらうように振るう一撃にも、神経が大幅に磨り減っていく。

間違いなく相手は獅子だ。

兎である自分は、持てる全てで対処しなければならない。

羅刹天の不敵で、此方を全くの脅威としていない姿勢を見て、頭の隅でつくづく相手が獅子だと想った。

猫科が持っているプライド。

思考携えた獅子は遊び心を得、そのプライドに見合う行動を取る。

兎はいびり殺すものだと。

だからかもしれない。

圧倒的な不利と直面していながらも、冷静に自分を動かせていた。

インドラは戦いを闘いとして扱った為、必至に生きる者の策に陥った。

なら、羅刹天はどうだろうか?

(問題外だな)

獅子のプライドなど、戦場では無意味。

(あくた)だな」

腕を切り落とされ、ソーマという荷物を抱えた状態で、引き攣っていた口元を緩めて、微笑した。

その台詞に反応した羅刹天は攻撃の手を止めて、いぶかしむように凝視してくる。

「何がだ」

「いや、貴様は生まれながらに強者だったのだろうなと」

「そうだな。

我が神になったのは必然だった」

「だからこそ、芥だと言っているのだ」

「…意味を述べてみろ」

「兎相手にいつまでかける気だ。

悠長なことだな、うつけ者が」

どうしてこんな挑発を試みたのか、自分でも理解していない。

打算があったわけでもない。

「ほ~ぉ、そのような形相で何をほざくかと想えば、弱者の戯言か」

こちらを弱者の罵る羅刹天。

その中に含まれていた形相というものに、ピントが合い、自分がどんな顔をしているのか知りたくなった。

そして羅刹天が掲げているナイルリチの刃が曇りない鏡のように反射していた。

そこには憤怒の形相を称えた自分がいた。

不思議なもので、それが自分だと理解するまで時間が掛かった。

その理由は、自分が何に腹を立てているのか判別できなかったからだろう。

だが、貌だけは本音を吐くように憤怒を象っていたのだ。

「神になる者は、成るべくしてなるものだ。

喩え、弱者たる貴様でもな」

何故だろうか、本当に理由がわからない。

自分の心というものを理解しようとこれまで勤めた事が無かった罰だろうか?

「違うっ!」

只、一つだけわかる事があった。

「朕は神などになりたくは無かったっ!」

それだけ。

他の感情など量れない。

只、この事だけは鬱積してきた、今日(こんにち)の答えだった。

「…ラークシャサ。

こやつは本当に愚か者らしいぞ。

万能なる力を有せるチャンスを持ち、得ながらも、それを否定するとは」

羅刹天の独語。

それに対する明白な答えは定まっていなかった。

俯瞰なる配置から過ごした日々は、成長という過程を置き去りしにしてしまっていた。

だから、答えがだせない。

「傲慢だからだ」

血を吐くように、その一言を呟いていた。

「何?」

「認める訳にはいかないのだ。

エゴしか形作れない。

それでは流された群衆と変わらぬ。

所詮は欠片の寄せ集めの朕らは、エゴで傲慢さしか持ち合わせれない原始的な者でしかない。

神など、人の醜さの具現だと識るべきなのだ」

「…それが、貴様が位を捨てた理由か。

それが理由かっ!」

ナイルリチが閃となる。

これまでの手加減したものとはレベルが違う。

ガッ!!

火花が散り、ナイルリチは突き出した杖により阻まれ、その進行を止めざる獲なく成る。

躰が半ばめり込み、残った腕が悲鳴をあげながらも、完璧のその一撃を受け止めきっていた。

咄嗟に張った術で肉体を強化し、神の攻撃を人の身で耐えたのだった。

これで神氣は打ち止め。

最早、次の攻撃を躱す気力も、耐える体力もない。

一念だけが、この必至を成功させた。

残されたものは、現存している肉体だけだった。




「このっ!」

羅刹天は吼え、万象月杖ごと消し去ろうと、頭上に大型の剣を掲げた。

掲げる空を切る音は、ボオォという排気音に掻き消された。

隆起した地をものともせず、押し迫る巨大な奔る物があった。

羅刹天は其方に目を遣ると、その奔る物は身を高らかにあげて、跳んできた。

「人の造りし俗物がっ!」

ヴリトラから目標を変えた剣がチーズを切るように、その奔る物を易々と両断してしまった。

その直前に、その奔る物の後ろの部分から、何かが飛び出していくのが見えた。

「ブレイクっ!」

その声に反応して、切断された奔る物にスイッチが入る。

奔物に備え付けられている圧縮機関が、本来在り得ない圧縮を試み、そこへ火種を放り込んだ。

弾かれたピストンは、想定外の推進力を受けて、吹き飛ぶ。

そして道が出来、火種は燃料が蓄えられているタンクに達した。

奔る物、大型トレーラーが羅刹天の前で、巨大な破片と爆炎を撒き散らしながら爆発した。

その横を時速百八十はある物体が通り過ぎる。

そしてそれは爆炎という煙幕に踊らされている羅刹天の横を千切ると、ボロボロなヴリトラを掻っ攫っていく。

「アチッ!」

悲鳴の主は中までヴリトラとソーマを引き入れると、物体は少し開けたスペースで車輪で線を引きながら反転させ、全くスピードを落さないままに疾走してしまう。

それはどこにもありそうな軽自動車だった。

「駄目ね、無改造車は。

出力が全然でないわ。

あぁ、ガラスが溶解しちゃって前も見えないじゃない」

等と毒づきながら、隆起している地面を事も無げに高速で車を走行させていく。

とても前が見えていない者の運転ではない。

使用しているのはハンドルとアクセルだけ。

アクセルは只単に踏み抜いていた。

乱雑極まりない運転で、この最低な道を疾駆させる女がいた。

「誰だ」

朦朧とする意識で、ヴリトラが女を目視しようとして、視界が暗転する。

「暫く黙ってなさい、舌噛むわよ。

後、どっかしがみ付いてなさい、その子支えてね」

ヴリトラは、自分がどうなっているかわからなかった。

ただ、狭い空間で掻き回されているのだけは理解できた。

縦横無尽の揺れが襲い掛かってくる。

ジェットコースターなどのような滑らかさは微塵もない。

いきなり真上に上がったかと思うと、次に斜め下に重力が掛かる。

ヴリトラは咄嗟に何かにしがみ付き、そのまま訳に変わらない体感に耐える。

「そうそう、それでいい。

もう少ししたら、山は抜けるから」

この体感を味あわせている者は、気軽な調子でそう告げると、激しくハンドルを切る。

小刻みに、そして大振りに。

この放り込まれた箱が、恐ろしい速度で疾走しているのが感じる。

しかも尋常でない荒地をだ。

「心配しなでもいいわよ。

相手が誰でも、人の住まう地である以上、私のホームグランド。

逃げ切ってあげるわよ」

「っ!

なにぐっ!」

女は、まるでヴリトラの事情を把握してるかの物言いをした。

何者と問い質す言葉は、舌を噛むという形で沈黙を余儀なくされる。

「だから、黙ってろって言ったのに」

隣に嘆息が零れる。

ヴリトラは、そこでやっと自分が裏返っているのだと知った。

ソーマを抱えながら反転している自分が居て、目の前に人の脚らしきものがあった。

「観賞は後回しにして。

亀のように引っくり返ってないで、起きたら?

未だ逃げ切ってないから、邪魔しないでね」

脚の主の要求どおり、邪魔にならないように体を反転させた。

そこには女が丸い円軽のものを握りながら、横の窓ガラスを叩き割った。

「たっく、溶解してるから割り辛いわね。

面倒ね、ちょっと頭下げてて貰える」

女はしゃがめとジャスチャーする。

ヴリトラは次々に命令してくるのに反感を覚えつつも、救って貰った借りがあるので渋々頭を下げる。

女は上着を脱ぐと、それを被せるようにしてから頭を下げる。

覆われた瞬間、破砕音がし被された上着の上に何か降り注いでくる。

それが止むと、サッとそれを振り払い、女は上着を後部座席に放り投げる。

「怪我はない。

まぁ、あったら自分で手当てして」

無意味な問いと無責任な発言。

戻った視界には、開けた風景が飛び込んできた。

融解して前方を見渡せなくなっていたガラスが、全て取り払われていたのだ。

「さて、カーチェイス、…って言うのは特殊な構図だけど、追っかけっこの開始ね」

女は後方を親指で指す。

それに吊られてヴリトラは首を回すと、憤怒形相の者が駆けて追いかけてきていた。

その額には血痕が残っており、不意打ちとはいえ、人間に傷つけられた事を激怒していた。

「エンジン全開のこの車と同等の速度で走るかね、普通。

人の形をしたものに抜かれたら、きっと車の存在意義が失われるわね」

女はこの状況下で微笑を浮かべながら、この乗り物の意義を唱えた。

ヴリトラは返答をしなかったが、失われる事はないだろうとボンヤリと想った。

相手は、人の枠で推し量れるものではなく、地上では無類のものなのだから。

「何故助けた?」

「助けたのはついで。

本当の目的は二つ。

で、片方はあっち」

と後ろに顎をしゃくった。

「巫山戯た気配。

胸糞悪いったらありゃしないわ。

あの遺物(神)とは袂を分かち合えないのよ、私は。

怨敵ね」

気配だけで敵と決め付け、その敵対者だったヴリトラを助けた。

嫌がらせが発端だったらしい。

「もう片方は、情報が無い。

まさか何も知らないなんて言わさないわよ。

アンタも神氣とやらを纏ってるからには、この事件の当事者でしょう。

まぁ、あっちと豪い違いね」

女はおちゃらけて言いながらも、真剣は貌つきで後ろから迫る羅刹天を一瞥した。

「駄目だわ。

車の尊厳なんて、こんなものね。

このままじゃ、追いつかれるわ」

スピードメーターが軽自動車最大の百八十を廻っているというのに、それに疾走して追いつこうとしている羅刹天。

それを厭そうに見ながら、女は自分の足元に置いてあるカバンを引き出した。

「少しばかり荒っぽくいきますか。

どうやら、人の兵器でも傷つくようだし。

用は遣りようよね。

車がオーバーヒートする前に、ケリつけましょう」

起用に片手でカバンの紐を解くと、中からゴツゴツして小型のパイナップルみたいな物体を取り出す。

ミリタリーで着飾っているお洒落な物体を、女は気兼ねなく後方に放り投げる。

それは放物線を描きながら羅刹天目掛けて飛んでいく。

羅刹天はそれを斬り落とそうとナイルリチを振るった。

刃が物体に届く前に、女はスナップを利かせて指を鳴らした。

その瞬間、パイナップルこと手榴弾は弾けた。

ゴゴゴッ!!

走行している車の割れた窓から、爆風が吹いてくる。

それに構わず、女は手榴弾を次々にそこに投げ込んでいく。

狙いも付けず、ホイホイと。

因みに、手榴弾の起爆を発動させる安全ピンを抜かれていない。

ゴゴォォオオォゴォオイオオドドギ!!

鼓膜を破りそうな轟音が響き、爆風が僅かに後部車輪を浮かし、その所為で前輪が横に滑っていく。

「グリップが無くなってきたわね。

流石にこの速度と状況じゃ無理があったかしら」

等と呆けた発言をしながらも、女はハンドルをカウンターで切り、そこから微妙なハンドル操作で車の体制を立て直した。

そんな状況ながら、一向に速度が落ちない。

「さて、さて、気配が離れる感じはしないし、どうしたものか?」

爆炎を断ち斬り、羅刹天が咆哮した。

手榴弾のお蔭で距離は開いたが、たかが知れている。

「…あれの汚染って、どれぐらいヤバイかしら?」

女は不気味に呟いた。

ヴリトラはその横顔を見て、どうにも厭な予感がした。

その予感を肯定するように、引き止める声が制止を呼びかけていた。

(拙かろう、それは)

女が手にしている筒状の物体。

それを嗜めるように脳に直接飛び込んでくる声。

術者が術を行使する時に使う言霊(ことだま)の上級系、神が言葉に乗せる力、術唄(すべうた)と同じ効力を持つ声だった。

「そうよね。

放射能汚染なんてバレたら、国際問題だもんね」

女はその声に答えるように渋々その筒を仕舞い、どうしたものかと思案していた。

真剣な表情はしていたが、焦りは微塵もない。

淡々とあらゆる状況を読み取り、実行するだけの胆力がこの女にはあった。

「狭間の者か」

「あら、コイツの声が聞こえるの?

まぁ、そんな事どうでもいいわ。

…そうね、奮発してみようかしら。

それでも時間稼ぎになるかわからないし、出し惜しみして終わったら笑い話にしかならないし」

先程の筒だけ避けるように脇に置くと、ゴソゴソと大型のナイフを取り出した。

柄の部分にJの文字が刻まれたものだった。

ナイフのカバーを口で外してから、柄を口で挟むと運転していない片手に刃をあて軽く切る。

それを確認後、血の滴る手でナイフを掴み直すと、薄っすらと愉悦した表情を浮かべる。

「マッドリッパー」

それがこのナイフの名称らしい。

女は手榴弾の同じく、羅刹天の迫る方角に放る。

大型のナイフから影が溢れて、そして人の形態を取る。

そしてそのナイフを影は掴み、凶悪な像を露にする。

(宿った思念の具現化だと!?)

「楽しんでらっしゃい、ジャック ザ リッパー」

イギリスに突如あらわれた殺人鬼、切り裂きジャック。

このナイフを使い、大量殺人をした犯罪者を模した像がそこにあった。

人の形をとったジャックは、凶悪な速度で走る車から跳び下り、その勢いで羅刹天に襲い掛かった。

「あら」

間の抜けた女の声。

ナイルリチが一閃がジャックの影をアッサリと切り裂き、霧散してしまう。

ナイフは半分以上消滅し、ガラクタとなって地面を転がっていく。

「…殺人鬼なんてものは、所詮弱い者しか殺してないのよね。

時間稼ぎにもならない弱さだわ」

等とぼやきながらも、次々にナイフを取り出していく。

やはり柄にはJの文字が刻まれており、計十二本あった。

十三に及ぶ、殺人を嗜好したナイフ。

その全てが、此処にあった。

「物量戦かしら。

嗜好の赴くままに、切り裂きなさい」

女は、さっきと同じ要領でナイフを後方に放り投げていく。

ナイフはJの文字に従い、ジャックを生み出していく。

獰猛で、どこか飛んでしまっている目をした殺人鬼、十二体が攻勢に出るのだった。

放物線を描き走行中の車から放り出されると、ジャックズは四方に散りながら羅刹天に攻撃をかけていく。

どのジャックも、イギリスの貴婦人達の滑らかな肌を切り裂いたナイフを携えて、肉を裂きにいく。

それを千切るように、羅刹天はナイルリチを振るう。

一振りで三体のジャックが掻き消され、存在が抹消される。

その隙間を縫うように、急所を的確に貫くように迫る刃。

それを躱さずに、真っ向から受けて立つ羅刹天。

格上の者の余裕がそうさせたのか、それを端でみていた女が

「馬~鹿」

と罵り呟いた。

ヴリトラは後部座席に乗り出す形で、目を剥いた。

ジャックのナイフは、羅刹天、神の眉間を貫き、両手足の腱を切り裂いたのだ。

あんなチンケなナイフでは、羅刹天を切り傷すら与えることは出来ないとヴリトラは思っていた。

その肉は鋼鉄、いやダイヤモンドを上回る。

それをアッサリと覆し、ジャック達は羅刹天に刃を走らせたのだ。

「侮るなかれ、人の業ってね」

それをバックミラーで確認しながら、女はこの結果を当然のように受け止めて車を疾走させた。

「侮るから、こうなる。

全く、戦いってものを知らないわね」

ヴリトラは、その意見に同感だった。

だが、まさか人なる者がしでかした事象が、こうも簡単に神の肉を裂くとは想わなかった。

「切ることのみに特化した思念。

その集合体であるマッドリッパー。

そしてそれを事象にしたんだから、切れない筈がないわ」

その説明台詞を聞いて、ヴリトラは女が仕出かしたことを理解した。

女がどうやって思念を具現化したかはわからないが、その思念に詰った欲求、切りたいを切るに変えたのだ。

切ることを前提とされた思念に、切れないものはない。

何故なら切ったと前提されてから切っているのだから。

それが喩え鋼鉄でも、神の肉でも。

「さて、本当なら此処で決着つけたいけど、戦力差が大き過ぎて勝てないのよね。

さっさと逃げるましょうか」

時速百八十キロのボックスが疾走して、この場から去っていく。

腱を切り裂かれ、瞬間的にも身動きをとれなくなった羅刹天を置き去りにするには十分の速度だった。

身震いするような咆哮が後ろからしてくるが、それを心地よいBGMのように流しながら、女はドリフトさせながらカーブを曲がると、そのまま南下させていく。

数分もしない内に、羅刹天の気配が察知できない位置まで逃げ果せ、そして危機を脱したのだった。

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