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ドアの向こうは森の中!?〜異世界転移した私がイケメン魔法使いと魔龍退治の旅に出るそうです?!?〜  作者: 永月るか
本編

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第33話 エピローグは森の家で

目が覚めると、そこは土色の壁で囲まれた部屋だった。

同じ色の天井をまじまじと見て、私はゆっくりと体を起こす。

素朴なサイドテーブルとイス、タンスが目に入った。

曇りガラスからは柔らかな日差しが差し込んでいる。


それは見覚えのある、クライスさんの家の1室……私がしばらく使わせてもらっていた部屋だった。


体はどこも痛くない。

強いてあげるなら、清潔に保たれた真っ白なシーツが少し目に痛いくらいだ。

ふんわりと香る石鹸のような匂いが、妙に懐かしく感じた。


あぁ、もうすぐ彼が来る。

妙な確信に笑みがこぼれると同時に木で出来た扉が開かれた。

相変わらず黒いローブを身につけたクライスさんが部屋に入ってくる。

アイスブルーの瞳に優しさをたたえながら。


「具合はどうだ?」


手にはふわりと柔らかな香りを放つ料理がのったお盆を持っている。

その瞬間、グルルル……と私のお腹は空腹を主張した。

……あぁ、うん、少しだけ空気を読もうか、私のお腹よ。

羞恥に顔が熱を持つのがわかった。

そんな私にクライスさんがクスリと笑ってお盆をサイドテーブルに置いてくれる。

その微笑みに、あぁ無事に帰ってきたんだ、とそう思った。


「食べられそうか?」


少し意地悪な輝きを瞳にのせて、クライスさんが聞く。

声にもからかう響きが混ざっていた。

私は少しクライスさんを睨んで……そんな顔も似合うなぁとしみじみと思ってしまった。

顔がさらに熱を持ったのがわかった。


「いただきますっ」


私はそんな羞恥を乱暴に返事することで誤魔化そうとした。

するとまた柔らかく微笑んで、クライスさんが私の頭を優しく一撫でした。


「どうぞ」


絶対わざとですよね?

そう聞くのも墓穴を掘るだけのような気がして、私はお盆の上の料理を手にする。


それはミルクを使ったオートミールだった。

優しくて素朴なその味は、いつか宿屋で食べたものと、とてもよく似ていた。

あっという間にそれを平らげる。


「あの時も、それなら食べれたと聞いてな」


あの時のオートミールも実はクライスさんのお手製だったらしい。

クライスさんはいいお嫁さんになるだろうなぁ、などとぼんやりと思う。

好きな人に対しての褒め言葉にはならない気はするけど……褒めてますよ、うん。


そんな事を思っていると、クライスさんの瞳が少しだけ険しくなって私を見た。

あぁ、バレてしまいましたか、ですよねー?


私はクライスさんの視線から逃げるようにオートミールに集中する。

あぁ、美味しい……ミルクが優しく胃に沁みていく。

オートミールは刻々と減り、やがて全て胃の中におさまった。


ふぅっと私が息をつくのと、扉がノックされるのは、ほぼ同時だった。


「起きたのかい?」


まず顔を出したのはメグさんだった。

心配そうな顔で部屋を覗いて、私の顔を見てふわりと笑う。

あぁ、相変わらず綺麗だなぁとつられるように笑うと、メグさんがさらに笑みを深めた。

ゆっくりと部屋へ入ってくる。


「どこも、辛くないかい?」


優しい声でメグさんに問われて、私は笑いながら頷いた。

そして、心配かけてしまったなぁと少し申し訳なく思った。

その心は表情に出てしまったんだろう……メグさんが一つ苦笑して、私の頭をくしゃりと撫でる。


「病人は、そんなこと考えなくていいんだよ?」


そんな遣り取りをしていると、今度はフレッド君が顔を出した。

爽やかな微笑みが、あの北龍の山での微笑みを思い出させて、胸が痛くなる。

そんな感情も顔に出ていたんだろう。

フレッド君はわざとらしい怒り顔をつくったまま、私のそばに来て、ぽんっと頭を撫でる。


ーー気にしなくていいんだよ。


その仕草が優しくそう伝えていて、私は泣き笑いのような顔になった。


「ごめんね、フレッド君」


それでも、やっぱり疑ってしまったことを謝りたくて、私はその言葉を口にした。

……彼は許してくれるだろうと分かっていながら口にする自分を、ズルイと思いながらも……私は謝らずにはいられなかった。

案の定爽やかにフレッド君は笑った。


「気にしなくていいんだよ」


ーー俺がそうしたかったんだから。

そう優しくフレッド君が言ってくれる。

それに少し泣きそうになりながらも、私は笑顔を浮かべた。


「メグさん、フレッド君、クライスさん……迷惑かけて、すみませんでした」


それから私は笑みを消して、もう一度頭を下げる。

今度はフレッド君だけではなく、メグさんとクライスさんにも向けて。


私は足手まといだった。

そんな私を連れて行ったから、あんな風に迷惑をかけてしまったんだ。

そう、自分でも分かっていた。


暗く沈む私の頭を、ぽんっと大きな手が優しく撫でた。

顔を上げなくても、それがクライスさんの手だと私には分かって……少し、泣きそうになる。


「気にしなくていい」

「俺たちは仲間だろ?」

「むしろ、功労賞はエリーのモンだよ?」


口々に慰めてくれる、私の仲間を顔を上げて見た。

メグさんが綺麗に笑っていた。

フレッド君が爽やかに笑っていた。

クライスさんが……優しく笑っていた。


心がじんわりと暖かくなって、私も自然に笑みを返した。


こうして。

私の魔龍退治の旅は穏やかに終わりを告げた。

ここまで読んで下さって、本当にありがとうございましたm(_ _)m

(後書き的なものは2014年3月15日の活動報告に載せております)

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