表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/129

76ページ目

えたくない。よって、この話は一旦終了。生徒がちゃんと写しているか、先生がノートチェックを端から始めていることに気づく。

「全く写してない。どうすればいいと思う?」

英人にすがるような視線を送り、助けを求める。

「どうもこうも寝てました、って言うしかないだろ。俺はカモフラージュは出来ても二人分のノートを写すことは出来ない」

英人の冷たい対応に俺は嘆息する。

「お前はそんな奴だったんだな。やれやれだ。親友のピンチに正論を述べる、心の寂しい奴だったんだな。正直、がっかりだよ」

打開策の提示を期待した俺が馬鹿だった、なんて。自分が無茶を言っているのは分かっていたが、そうでもしないと自分を強く保てない。授業がもし現文や化学なら良かった。でも今は数学。先生は鬼の鉄拳だ。去年は高校三年生を担当していたようだが、体罰が問題になり、一年生の担当に下げられたという噂がもっぱらだ。本当じゃないにしろ、危ない先生というのは伝わる。

今更一からノートをとっても、とてもじゃないが写しきれない。死んだ。と、その時、

「すいません、トイレ行ってきます」

椅子がぞんざいな音をたて、その澄んだ声は耳の鼓膜を突き破った。まぁ、言うほど大きな声じゃなかったが、それでも俺の注目を向けるには十分だった。

「ううむ。そうか、行って来い」

先生の許可をもらい、小走りに教室を出る、俺の幼馴染。

恥ずかしくないのかなとか思ってしまう。そういうのに敏感なお年頃だ。

ヒカリの様子に瞬間びびっと閃きが疾った。

(俺もトイレに行く振りをしてやり過ごせば……!?)

善は急げ。考えを行動に移すことにする。先生が来るのを見計らって、トイレに行ってきますということ。そして、検査が終わった後に戻ってくること。これが今やるべき最善の方法だ。寝起きの割には冴えてるなと自分で自分を褒める。と、噂どおりの鉄拳が、同じくノートをのってない生徒に下った。これを見せしめとして他の生徒に恐怖が伝導したようだ。英人は動じることなくその様子を見つめている。英人のことだから、ノートを写さないで何を学びに来たんだ?とか言いそうだな。

「ノートを写さないで何を学びに来たんだ!」

鬼の鉄拳が生徒に向かって咆哮する。

「あひゃっ」

今食らったのは……鈴木。期待を裏切らない男として今胸に刻み付けられた。赤信号みんなで渡れば怖くない的心情。仲間がいれば、恐怖も少しは薄く削がれる。だが、目をつけられることに変わりはない。よって俺は、

「トイレ行ってきます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ