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「じゃあ分かった。あんまり近づかないでね。天命を下せし君に誓う。我のために扉を開かれよ」
ヒカリの手のひらから強い風が吹く。バチバチバチッと空間にひびが入る。ヒカリがその輪をくぐった途端、俺の視界がノイズで揺れた。今まではあまり意識してなかったけど、扉を開いた時だけ異次元空間にいるヒカリの姿が見える俺は一瞬だけだがそういうことがあるらしい。眩暈はすぐに治った。まず確認したいこと。それは俺はその、見える範囲がどこまでなのかということだ。
「ヒカリはちょっとそこに立っていてくれ」
ヒカリから少しずつ離れていく。4m、5m、7m、10m。目測だが、まだ10mじゃヒカリの姿は見える。俺はさらに下がっていく。12m、20m、30m。まだ全然見える。40m、50m、60m、埒があかないため思いっきり下がってみる。これで大体150mくらいか? ん? 視界にノイズが入る。どうやらここらが見える見えないの境界線らしい。それ以上下がっても見えない。俺はヒカリのいるところへ戻った。
「今、ヒカリと俺が違う空間にいる状態の時、どこまで見えるのかを測ってた」
「へえ、何してるかと思ったらそういうことね」
ヒカリの姿も見えるし、声もお互いに聞こえる。しかし、俺からヒカリに触れることは出来ない。ヒカリから俺に触れるときは、接触用の操力を使えばいい。それももう一度確認。
「ふれられない……よな」
と言いながらヒカリにふれようとするが、手は空をきる。やっぱり不可能。
「ちょっとこーちゃん、今どこ触ろうとしてた!?」
「別に変なとこ触ってないだろ!」
「胸……とか?」
「ないから!」
「えぇ? 私だって少しは成長したんだから、あるよぉ。ほら、少し見てみる?」
「からかうな!」
「あははっ。やっぱこーちゃん面白い」
くすくすくす。まったく何が面白いんだか。こっちはまじめに知ろうとしてるのに。
「それで、こーちゃんは私のいる世界を知りたいんだよね。いいよ少しだけなら。来て」
ヒカリはもう一度呪文を唱え、空間に歪みを生じさせた。人間が通れるくらいになるのを待って、中に入る。俺はその瞬間、もう一つの世界に足を踏み入れたことになる。そして世界が変わった。とまではいかないが、俺の目に飛び込んできたものは。
「な、な、なんだこれ」
薄紫色のものがぼんやりとだが、ところどころ点々としている。
「これはね、オウムのもととなるものなの。まだ密度が濃ゆくなくて原型を留めてないから、これにはふれられない。この状態からオウムが出来るには早くて数時間、遅くなる時はいつまでも出来ない。だから私たちはオウムが形成された時にしかそれを発見できないし、前もって元を断つことは出来ないの。だから討魔師はこれをいつも持ち歩いてる」




