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「……よし、帰るか。さすがにそろそろ帰らねぇと遅すぎだな。許可されたとはいえ、こんな時間にぶらついてたら補導される」
時間は現在夜の十一時。腕時計の針が休まずに動いて、そう伝えてくれている。
今から帰って明日の準備をして、汗もかいたからシャワーを浴びたりすると随分遅くなる。しっかり睡眠をとらないと、生活に支障が出たりして後悔することになるだろう。朝は特に弱いしな。
「練習に付き合ってくれてまじでありがとな。この練習これからもずっとお願いしていいか?」
「えっ……あ……うん、いいよ。一緒に頑張ろう」
ヒカリは最後に笑顔を添えてくれたが、時間は言ってないことまでも語ってしまう。
『いいよ』と言う前に、妙な間が空いてしまった。今ので分かった。ヒカリは俺を戦力とは見てくれていない。出来れば今日あたりにでも諦めて欲しかったんだろう。俺がまぐれでも当ててしまったから、そういうことは自分から言いにくいんだろう。
でも、そう思われるのは仕方のないことだ。ヒカリは三年間オウム退治の訓練を受けてきた。厳しい訓練も多々あったはずだ。それを、何も知らない部外者に手伝うなんて言われても、首を縦に振ることはまず有り得ない。本人たちにしてみれば命をかけたぎりぎりの戦いなのだから。
そのことが分かっていても引き下がらないのはエゴのためだ。
俺としても諦めることはどうしても出来ない。俺の目的が終えるまでは。
家に帰り着くと母さんが玄関に立っていた。玄関の電気は点いていたからもしやと思ったが、まさかドアを開けた瞬間そこにいるとは。壁にかかった時計を見ると、11時半。さすがにちょっと遅すぎたかもしれない。こんな時間まで外に出てたのを咎められるのかと思ったが、
「お風呂を湧かし直したわ。早く入りなさい。汗かいてるでしょ。洗濯するものはちゃんと洗濯機に入れといて。じゃ、私は寝るから。おやすみ」
そう言って、母さんは一階の寝室に向かおうとする。
「え、それだけ? 何してたのとか聞かないの?」
予想が外れてびっくりする。こんな時間まで待って、言うことはそれだけ? 怒ってほしいとか怒られたいとかそういうものじゃ決してない。怒られなかったというのが逆に不思議なのだ。
「別に興味ないわ。それに約束してたじゃない。もう子供扱いしないって。自分で言ってたでしょ、もう忘れたの? じゃ、おやすみ」
おやすみなさいお母様とヒカリが挨拶する。
「じゃ、お言葉に甘えてお風呂入ろ!」
「……お、おぉ分かった。そうだな、俺は後でいい。ヒカリが先に入っていいから」
なんかすごい拍子抜け。中学の時は結構厳しくて、何か悪いことしたらすぐ飯抜きとかあったのに。まあ飯抜きと言ってもそこはやっぱ母さんで、反省してる様子を見せれば食わせてくれたんだけど。




