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や背負ったかばんの軽さもあり、目的地にたどり着くのは二十分もかからなかった。
「ここか」
足を止めた先にはこれから三年間を過ごすことになる高校が、大きい口を開けてそびえたっていた。私立鏑木高校。
築120年の相当気合の入った由緒ある高校で、年数の割に見た感じはそう古くない。学校のど真ん中にそびえたつ巨大な支柱は、一階から屋上まで悠然と伸びていて、その姿はただ漠然と龍みたいだなと思った。この高校の大学進学率はそれなりに高く、毎年の志望者が増加するくらいには有名なのだが、俺はその難関をくぐりぬけ、見事合格を果たした。とは言っても別に何かのためという明確な理由があるわけじゃなく、とりあえず行っとけば後々後悔しなくて済むという周りの意見に乗じた結果だ。
「……うぅ……寒い」
その、だ。
確かに気分はすがすがしいのだが、心と体はそれぞれ別の意見を主張している。
さっきから身体の震えが止まらない。首筋がやたらとゾクゾクして悪寒がする。
腕時計を見ると、針は7時半を指していた。
式の開始は9時からだから、かなり早めに来てしまったみたいだ。ちっとばかししくじった感が否めない。あの時は母さんのお小言から早く逃れようと急いで家を出たもんだから、時間の調節を考えてなかった。そういえば中学の通信簿に〝康介君は後先考えずに行動することがあるので、事前に計画を立ててみよう〟と書かれてたのを思い出した。その忠言は現状況を見る限り、活かされてるとは言い難い。
俺は今、正門から入ってすぐにある、無駄に広がる広大なグラウンドの真ん中にいる。
いやまぁ、だからといって何だと言うことはないのだが、今の心の叫びを声にするなら、
「……暇だ」
めちゃくちゃ暇だ。最低でもあと三十分近く待っておかないと校舎に入れないため、それまでここで一人ぼっち。しかも、
「はぁ~」
この白い吐息だ。春という季節をまったく感じさせない今日の寒さ。神様による俺への一方通行ないじめかと疑ってしまうくらいだ。
「くそぉ! ……お、おらに体温をわけてくれー!」
大きな円を作るようにして両手を天に向ける。元気玉なんて作れなくてもいい。
もし温めてくれるならかわいい女の子の体温で温まりたいです、と前後のつながりがまったくない言葉を神様に願いが届くように、大きな声で伝えた。神様にはこの気温をなんとかしてもらわなきゃならん。入学式が始まる前には凍死体として発見されるかもしれないからだ。
「はぁ……何やってんだかな」




