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俺がしたいのは世間話とか思い出話じゃなくて。
「……え? あ、うん。私の話せる範囲内でなら。もっとゆっくりして話しても良かったと思うけど」
神経の末端と中枢をつなぎ、脳という不完全な記録媒体からその断片的な記憶を搾り出す。
「あの怪物の名前はオウムと言って、基本空間って言うのは俺らの住んでるこの世界だ。合ってる?」
たぶん合っていると思うが、一応ヒカリに確認をとる。
「うん。続けて」
ヒカリはこくりと首を振る。
「で、人間は基本空間に感情分子ってものを放出する。オウムは基本空間で放出された感情分子が異空間に移動し、集合体を形成したもの。基本空間に現れて人間の生命を脅かす存在。ここまではどうだ?」
「おおまかに言うとそういうことだね」
「じゃあそこから先を聞きたいんだけど、まずヒカリの言っていた〝とうまし〟って何だ?」
「討魔師はオウムを倒すためだけに存在する古来からの部族の総称なの」
古来からの部族? そんなの聞いたことすらないぞ。公には知られていないものなのだろう。
「ヒカリはその討魔師ってやつなのか?」
「そうだよ」
ヒカリはあっさり首肯した。寝耳に水だ。断言されるとやっぱ衝撃は違うもんだな。
「俺といた時はそんな素振りさえなかったけどその時から知ってたのか?」
「そういう家系だって知らされたのは小学校を卒業してからだった。我々がしないと人々は危険に晒されるんだって、山奥にある討魔師育成学校に通うため引越したの」
「あれってそのための引越しだったのか。あれ、じゃあ帰ってきたってことはその学校を卒業したってことか?」
ヒカリの眉がぴくっと反応する。
「ううん、実は4年制なんだけど、3年でも一応討魔師として認められるの。ほとんどの人は4年まで進むんだけどね。3年までを大学とすると、4年目が大学院って感じかな。あ、こーちゃんちょっと勘違いしてるかもしれないから言うけど、一応討魔師育成学校にも普通教育はあるんだよ。違うのは昼すぎから夜にかけて訓練があるということだけ。休みの日は部活動が出来るし、普通の中学校生活に近づけるように配慮はされてたんだ」
「昼から夜って具体的に何時から何時までなんだ?」
「……13時から23時までかな」
えっ? と俺の表情筋がこわばる。全然普通の中学じゃない。スパルタにもほどがあるだろ。
その俺の様子の変化を見てヒカリはあわてて付け足す。
「あっ、でも今はその訓練のおかげで、この仕事に誇りを持ってるよ。自分にも持てるということを教えてくれたんだ。すごく感謝してる。守られてるって実感なんてないと思うけど人を守るってことは




