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ああ、やっちまった。気づいたのは開始予定時刻のおよそ三十分後。

明日テストがあるから早起きして勉強しようと意気込んで寝るが、目を覚ましたときにはすでに朝の七時を指していた、のと同じような感覚だ。初日から遅刻するなんてまさに愚の骨頂。

何か理由があるなら先生たちも考えてくれるだろうが、ずっと話してて時間になっても気づきませんでしたと言ったところで、仕方がないなという展開は一分たりとも望めない。

しかも式の最中に一組の男女が同じ足取りで入ってきたとなると、お前ら朝から何をしていたということであり、バカップル振りをアピールしているように見える。

だから俺らは式が終わるまで扉の外で待つことにして、扉の隙間から進行状況をのぞき始めて一時間が経過。式が終わるのを見計らって、教室に戻るよう生徒に促す先生のところに駆け足で向かう。真実味が増すよう、息を切らしたり服が乱れているというオプションを添えて。

「ん? お前らどうしたんだ? 入学式は今終わったところだぞ」

これが初顔合わせなので、先生のほうも怒りを少し抑え気味にするという地の利を生かす。

「すみません。だけど……苦しんで助けを求める人を見なかったことにするなんて出来ませんでした」

予定通りここで先生の顔色が変わる。やっぱそうこなくちゃ。

「どういうことだ? 詳しく話してみろ」

「はい、実は~」

ここからは俺が一時間考えた、超がつくほどべたでどこにでもありそうな、それでいて感動は外さない話を披露した。途中、気分が乗ってきてどこの携帯小説だと突っ込まれそうなくらいに話が脱線してしまった。が、そこは俺の腕の見せ所。ぐだぐだになりながらもなんとか最後は締めて、そして、

「そういうことがあったのか。よし、わかった。行っていいぞ」

見知らぬ角刈りの先生は目頭をハンカチで押さえながら、承諾した。

先生には悪いと思いながらも、この話はフィクションです。実在の人物、団体、事件などには一切関係ありませんというテロップが脳内を心地よいしゃべり方で流れてくる。まぁ、世界は広いからどっかであったことかもしれないけど。

ヒカリが俺の服の袖をつかんで、行こうと促すので教室に向かう生徒の列の中に一緒に並んだ。

「よく考えついたね、あんなすごい話」

かすかにうるうるきてるヒカリ。ハンカチを俺にも差し出してきたが、いらないからと押し返す。

「人間追い詰められるとすごい力を発揮するもんさ」

大ボラを吹いただけなのだが、人間の内に秘められた潜在的ポシビリティーをそれとなく臭わせてみる。

「へー、いつかそういうことが現実にあるといいね。私、感動しちゃった」


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