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それ以外は必要のないことなの」
その言葉に素直に頷くことは出来なかったが、これで話が終わりそうな予感がしたので、最後に一つ聞いてみることにした。これこそ拒まれる質問かもしれないが。
「……じゃあ、せめて名前を教えてくれよ。君はいったい何者なんだ?」
「分からない……かな?」
どこか懇願するような表情で見つめてくる少女。寂しげに青い瞳が揺れる。
「は? 初対面の人の名前を俺が知るわけないだろ? 俺は死神の目なんて高尚なもの持ってないぞ」
俺の言葉に少女は残念そうな顔をする。俺が知らないってだけでなんでそんな顔をするんだ?
「うーん。こーちゃんなら気づいてくれると思ったんだけどな。仕方なし」
「ん? こーちゃん?」
いつからそんな間柄になったんだ? というか名前はまだ名乗ってすらいないのに何で知ってるんだ? こーちゃんと呼ぶ奴に少しばかり心当たりがあったが、目の色も髪の色も声さえも違う。
だから、今俺が思い浮かべた人物では決してない。あいつは田舎の学校に通っているはずだから。
じゃあ、こいつは誰だ? 必死に浮かんだ疑問を自分で否定していると、少女の長い髪が風でぶわっと舞い上がった。呼吸を静かに整えるように少女は目をつむる。
すると、すぅーっと肩の力が抜け、長い髪はふわふわと浮きながらも、徐々に金から黒へ色を変えてやがて収まった。収まると同時に少女は静かに目を開く。
現れたのは黒い瞳。俺の知っている顔だった。
「お前もしかしてヒカリか!?」
「もしかしなくてもそーだよ。力解かなくてもこーちゃんなら気づいてくれるって思ってたのに。鈍感なところは昔から変わってないね」
うんうんとどこか得意げな表情の幼馴染とは逆に、俺の脳は魚の切り身と牛乳をミキサーでかき混ぜたくらい、ぐちゃぐちゃになっていた。
なぜヒカリがここにいるのか。なぜヒカリが剣を手に戦っていたのか、それについてさも当然のようにしていられるのか。いろいろと疑問点を挙げればきりがない。
「あれれ? どーしたの? 嬉しくないの? 長年連れ添った幼馴染と感動の再会だよ? 小学校以来だよ?」
ヒカリはどうしたの?と俺の顔をぐいぐい覗き込んでくる。
……近い。凄く近いです。いくら幼馴染とはいえ、お互い年頃の男女だし、体つきもよくなって目立つところが物凄く魅力的になってるし、いい匂いがするし、薄ピンクの唇を見ると、ヒカリが女の子だということを俺にどうしようもなく認識させる。こんなに近いと思わずキスしてしまいそうだ。……っていかん。他に聞くべきことがあるだろ、俺。
「何でお前がここにいるんだ?」
冷静になって考えてみろ。確かヒカリはお父さんの都合で近衛村っていうところに引っ越してたんじゃ。




