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「嘘だろ!?」
少女の手の先にひずみのようなものが生じていた。空間が割れたという表現が一番的確な、理解不能な歪み。自身にとって信じられないようなことが起きたから、目をこする。このことだけじゃ何もおかしな点はない。けど、その行動が何の効果もあげてくれないのはおかしいと言える。なぜならそれは、俺の目が、俺自身が、少女の言う異世界の存在を肯定することになるからだ。
ひずみの範囲は次第に広がっていき、人間が一人通れるぐらいの大きな穴になった。
少女はその穴を慣れた風にひょいと飛び越え、
「よっと」
足を再び地面に着けたと同時にひずみは小さくなり、そのまま景色に吸い込まれるように消えた。
「どう? これで悪い夢から覚めたかな?」
少女は事もなげに言う。
「な、な、何したんだよ今!? 景色が割れたぞ!?」
話の流れから何を言いたいか予想はついた。だけど、それを信じられるかって言うとそうじゃない。心の底からは理解できていない。だから俺は聞き返して、少女の口から確信を得るしかない。
「異空間から基本空間に戻ってきたの。ね? これで理解できたでしょ?」
そして俺の予想通りの内容を明言した。2つの世界の存在を、それも当然のように。
言葉を俺の脳が噛み砕いて吸収した瞬間、俺の中の何かが音もなく崩れ去った。
頭の中で自問自答が行われる。
今日はただの入学式だぞ。普通の、高校の。全国いたるところで行われている学校行事が開催されるだけなんだ。当人たちにとっちゃ高校デビューを果たす大事な日かもしれんが、それ以外のその他大勢の人たちにとってはありきたりな日常の一つだ。別に今日が世界の終末だとテレビで放送されてはなかったし、本当に普通の日だ。なのに、なぜ俺はこんなに普通じゃない状況に直面してるんだ? 頭の中でぐるぐるぐるぐるそんな疑問がループする。
と、途中で何かひっかかり、今更だが、遅いなりとも声に出してみる。
「あ、えーっと、げどぐ……こほん。解毒剤ってのはもしやと思うんだが……」
「そうだよ。どうしても信じなさそうだったから、それなら実際に見せたほうが早いかなって」
「あぅ」
少女の笑いが羞恥心をえぐる。いたたたたっ。
「それじゃあ、あの話は全て……」
「本当だよ」
「うあぁぁ、俺が見たあの物体や剣で戦ってたのも……」
少女は天使のような柔らかな微笑みをつくって、
「それもぜーんぶっ」
「解毒剤関係ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー」




