第8話 何回も繰り返し伝えて
司会者との会話が終わり、出番までステージ下のフロアにて各テーブルで食事をして待つため、僕とU-4の4人は指定されたテーブルに着席する。
なぜ世話係である僕の席も用意されているかというと、出演者が多種多様にわたっていることが理由がある。
「あーあー、届いてないですよ〜。もう少し長いハシゴを持ってきてもらってください〜」
先ほど僕の顔に体液をつけた緑色のトカゲが、巨大な椅子に腰掛け口をあんぐり開けながら、横にいるウサギのような人間のようなどっちともつかない形をしたものに話している。
そのウサギと人間のハーフのようなものは、グループのマネージャーなのだろうか、大きなトカゲの横に立てたハシゴのてっぺんに立ち、トカゲの口に、これまた大きなスプーンを向けている。が、高さが足りておらず、微妙に届いていない。
種族によっては、椅子に座った状態では腕の長さと体の大きさにより、僕ら人間のように食事を取ることが難しいからだ。そのため、食事のサポート役として、グループ以外のものが1人着席することを許されている。
「うまそう…」
アダムが目の前のお皿の上の料理を見て、唾を飲み込む。その様子を見た僕は、ふと尋ねる。
「あれ…そういえば、アダムさん、車の移動中に何も食べなかったんですか?」
「…食べてない」
「え——!僕は車内で食べていいですよ、って言ったじゃないですか」
「そうだったか…?」
「そうですよ!アダムさん、もう少しちゃんと話聞いてください!」
口調を荒げる僕の隣からユウヤが手を伸ばし、場を納める仕草をする。
「まあまあ、ここで食べればね、いいしね。ただ、食べ過ぎると歌やダンスに支障出るから、アダムほどほどにな」
アダムがコクンと頷いたのを見た後、ユウヤは僕の方に体を寄せる。
「ごめんな。アダムは色々忘れっぽくてさ。特に複雑な指示っていうの?一気に色々言われても、覚えられないっぽいんだよね」
「え、あ、そうなんですか。それって、覚えるのが苦手とかですか?」
「んーー…、いや、まあそういうのもあるかもしれないんだけど、苦手レベルじゃないって、いう風に俺は思うっていうか…。…まあ、とりあえず、アダムは色々忘れるからさ、他メンよりは何回も話したり伝えた方がいいと思う」
「わかりました…!」
「ごめんな、悪いけどよろしくな。俺、ハルトのこと頼りにしてるからさ。いつもありがとな」
そう言うと、ユウヤは僕の背中を優しくポンポンと叩いた後、ステージ上に視線を上げ他のグループのパフォーマンスを見つめる。
僕はアダムの方を見ると、アダムはお皿にのっている料理を、両頬を膨らませ満面の笑みで食べている。
(まあ、いっか…ここで満足してくれれば…)
僕は不安な気持ちがあったが、ユウヤの言葉を信じてその思いを頭から払う。
でも今思えば、その不安な思いはやっぱり的中するもので、僕はこの後またバタバタと忙しくなるのだった…。




