第7話 多種多様なグループ
「いいか、今日の音楽の祭典では、1番良かった人やグループに大賞が授与される。いいな、歌やダンス、失敗するなよ」
ステージ裏で円陣を組んだU-4の4人は、ユウヤの真剣な言葉にしっかりと耳を傾けている。
「っしゃー!やったるでー!」
気合いを入れるリュウは、両隣と肩を組んでると見せかけて、薄っすらと手を浮かせている。
「まあ、ずっと曲をヒットさせてる俺らなら、楽勝でしょ、ね、アダム!」
ナオトは、アダムの背中を力強く叩く。メンバー以外の人がいる場所では、あの例の口調は全く出さないプロ意識だ。
「ああ。今までの練習の成果を、見せればいいだけだ。やれる」
なんとか、ギリギリ準備が間に合ったアダム。
ユウヤの掛け声で最後の気合を入れると、4人は円陣を解く。
(始まる…とうとう、あの音楽の祭典が…!)
僕は昂る気持ちを抑えながら、4人の身だしなみチェックを始める。
なぜ昂るのか、それは、この音楽の祭典で大賞を取るのはU-4だからだ。
ゲームでは、この音楽の祭典で大賞を取ったことで、この後一気に人気が加速し、あっという間に人気グループの仲間入りを果たしたのだ。
「なんやハルト。そんなニヤニヤして。俺らの緊張してる姿、そんなおもろいんか?」
リュウから突っ込みを入れられても、止められないニヤニヤする僕。
「いえっ!別に、なんでもないですっ!」
バレないよう、必死に真顔を作るも、結果を知ってるが故にまた顔がニヤけてしまう。
(よし!ここで頑張れば、あとは道が勝手に開ける!)
U-4の4人がステージ上に向かって歩いていくのを、僕はそっと後ろから見守る。
今日の出演者全員がステージに立った後、順番に司会者と会話をしていく。
僕は舞台の袖で隠れてステージを見ると、目の前にはトゲトゲした大きな緑色の何か。
そして、目の前のそれが動くと僕の顔を、ぬるっと拭う。
「うえっ!!」
僕は思わず床に跪き、引き攣って嗚咽すると、目の前の緑色の巨大な物体がこちらを振り向く。
「ああ、ごめんなさいね。あまり、私に近付かない方がいいですよ。体液がついてしまいますから」
そう優しく声をかけてきたのは、巨大な二足歩行をする、まるでトカゲみたいな喋る生き物だった。
(あ、そうだった…。このゲームの世界の中でアイドルグループしてるのは、人間だけじゃなかったんだ…)
このゲームの世界には、多種多様な種族から選抜されたアイドルグループが入り乱れているのだった。
(U-4のグループ以外の場面は、全部スキップしてたから忘れてた…)
僕はヨロヨロと立ち上がると、ポケットから取り出したハンカチで、顔についた体液を拭き取る。
「はい…僕こそ、近づき過ぎてすみませんでした」
苦笑いで返しながら、改めてステージ上を見ると、U-4の皆んなが埋もれてしまうくらいに、他のグループは個性的だった。
悪魔、動物、魔獣、異星人…どれもこれも、選抜された優れたもの達だ。
もちろん、人間のグループもU-4以外にいる。その中でも頭1つ抜きん出ているのは、AAZというグループで、U-4と同じ男4人のグループだ。
「おや、君はU-4の世話係のハルトくんじゃないかい?」
(この鼻につく話し方は…噂をすれば…)
後ろを振り返ると、やはりAAZのグループが立っていた。僕に話しかけてきたのは、グループの中でもボーカル、ダンス共にメインをはっている、ルカだった。
気取った話し方をする、キザな奴だ。
「ルカさん、お疲れ様です。今日は、どうぞよろしくお願いいたします」
僕が頭を下げると、AAZはそのまま僕の前を素通りしていく。
「はいは〜い。まあ、今日の大賞を取るのは俺たちだから、よろしく〜う。せっかく来てるけど、時間の無駄だよね〜」
はははっ!と笑いながらステージへ向かう4人に、僕は床を見つめながら歯を食いしばる。
(耐えろ自分…U-4が大賞を取って、あいつらが悔しい顔をするのを後で見られるんだから…)
「はーーい!生放送始まります!ごー、よーーん、さーん、にー……!」
ワーーーッ!という歓声と共に、音楽祭が始まった。




