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女神「お前死んだから異世界転生ね、希望は?」俺「じゃあスローライフで」女神「はいアホ。下等生物の望みとか聞くワケないじゃん♡ お前なんかクイックライフで十分だバ~カ☆」←その後、号泣土下座

作者: 多蠣パアニ
掲載日:2025/12/20

「お前のこと殺しちったわ☆ マジめんご♡

 まあチート付きで良い感じに異世界転生させてやるから? 元の底辺カス人生が続いてた場合と比べてむしろプラスだし?

 歓喜を以って許せよな~」


「ちょっと待てよ!」


 この世のどことも思われない、黄金色の光と雲のただよう不思議な世界。


 通勤途中、不意に炎に包まれて意識を失うと、いつの間にかここにいた。


 そして目の前には、銀髪爆乳褐色ギャル。

 彼女は現れて女神アパラ=パリアと名乗るなり、とんでもないことを宣った。


「そーいうツッコミとかいいから~。

 異世界だよ?

 ほら、俺tueeeしたいとか、ハーレムとか、色々希望があんべ? 下等生物らしい欲に基づいた奴がさァ。

 何でも叶えてやるから、とりま好きに頼めし~」


「……めちゃくちゃだな、お前……。

 そう言われても、そうそう希望なんて思いつかないな……別に、普通に穏やかに暮らせればそれでいいって思って、これまで生きて来たし……」


「穏やかに暮らしてーの? じゃあスローライフってことでいいよね?

 ハイじゃあ転生~☆」


「えっ、ちょっ待って、もう少し考えさせ――」


「待たねぇ♡

 スキルは『ステータスオープン』で確認できっからヨロ~♪」


     §


 ……そうして。


 いつの間にか、俺は見知らぬ草原に立っていた。


「……くそ、なんてこった……」


 殺すのも転生させるのも待ったなしとは。

 なんなんだあの女神は……


 などと思いつつ、周囲を見渡す。

 四方にどこまでも草原が続いていて、どの方角を向いても地平線が見える。


 草原だ。

 草原といえる風景の他、まったく何もない。


「……とりあえず、今日のご飯と寝床くらいはどうにかしたいな。

 ステータスオープン」


 そう唱えると、目の前に四角い光の枠がふわっと浮かぶ。

 半透明の板のようなその枠には、次のような内容が書かれていた。



――――――――――――――――――――

名前:サトウ・レン


種族:人間 年齢:23歳 性別:♂ Lv.1

攻撃力:7 防御力:5

魔攻力:1 魔防力:1

知力:3  幸運:4


HP :5/5

MP :3/3


【スキル】

〈ユニークスキル:SSR...〉+


Tips:詳細を見るには+を押してね♡

――――――――――――――――――――



 ……「♡」が絶妙にイラっとくるUIだ。


 ひとまず、俺は+を押してみる。



――――――――――――――――――――

〈ユニークスキル:SSR加速〉


スローライフさせて貰えるとでも思った?

ンなワケないじゃん♡

バ~カ☆ プーッ! クスクス♪

お前なんかクイックライフで十分なんだよ!

形式上でも私に謝罪させたカスは死ね☆


from:至高の女神、アパラ=パリアさま♡

――――――――――――――――――――



「…………」


 ……ここまでくると、逆に冷静になってしまう。


 怒りはもちろんあるのだが、それはそれとして、呆れとか困惑の方が強い。


 ……クイックライフって何だよ……スローライフの逆を行ったつもりなんだろうけれど、そんな言葉ないぞ……ていうか石川啄木の短歌みたいなキレ方だな……


「……はぁ」


 溜息が出る。


「……すー、はー……」


 溜息のついでに深呼吸をする。


「……よし」


 とりあえず、貰ったものは使ってみよう。


「〈加速〉」 


 !?


 唱えてから走り出したところ、信じられないほどの速さが出た。


 ……これは自動車、いや、新幹線レベル……?

 何が正確な例えなのかはわからないが、とにかく滅茶苦茶早いんじゃないか?


 驚愕しながら走り続けていると、草原の中に何か変わった物があるのに気づく。


 赤煉瓦の外壁で囲われた街だ。


 そうと判った瞬間、俺は門の前で急停止した。


     §


「!? うおおおお!? なっ、なんなんだ一体!?」


 門衛と思しき槍を持った鎖帷子の人物は、俺を見るなり目を白黒させた。


「あっ、すみません。

 そのですね、街に入りたいのですが。よろしいでしょうか?」


「あっ、ああ……辺境都市へようこそ……

 わしはモンスターが入り込まないよう見張っとるだけだからね、人間ならどなたも大歓迎だよ」


「ありがとうございます」


「腕に覚えがあるなら、兄ちゃんも冒険者になってくれよ。

 最近はダンジョンのモンスターの活発で、猫の手も借りたいくらいなんだ。

 冒険者ギルドは、この道をまっすぐ行ったところの大きな建物だよ」


「はい、ご教授ありがとうございます……」


 会釈をして去り、俺は辺境都市に入り、路を進む。


 門衛のおじさんが言った通り、『冒険者ギルド』と書かれた建物が見つかった。


 中に入り、受付らしきカウンターの方へ進む。


「あの、すみません。冒険者になりたいのですが」


 俺は、黒髪ボブカットの受付嬢(名札にローエと書かれてある)に話しかける。


「新規の方ですね。

 では、こちらの書類に必須事項をお書きくださいな」


 黒髪ボブの受付嬢ローエはそう答え、両面に枠線の書かれた紙を差し出した。


「わかりました……」


 備え付けの羽ペンで、俺は書き込みを開始。


 名前、年齢、性別、出身地、種族、志望動機、保有スキル、特技、希望職業……

 書くことがあまりにも色々あって、ちょっとめんどくさいな。


「――〈書類書き込み加速〉!」


 ダメ元で唱えてみたところ、ペンを握る手の動きが加速!

 書く内容を微妙に悩むような項目も、スパっと決断して、さらりと書き込める。


 あっという間に、俺は書類を書き終えた。


「こちらでお願いします」


「えっ、早……! 代筆を頼んでくる人もいるのに……。

 お兄さん、書類仕事得意なんですね……!」


「いえ、そういうわけでも……」


「ふふ、謙虚なところも素敵ですね。

 それでは係の者と審査して参りますので、お掛けになってお待ちください」


「はい。

 ――〈待ち時間加速〉!」


「審議完了致しました~! こちら、ギルドカードになります。

 まずは、最下位のFランクからです。

 そしてこちら、初心者用装備一式です。

 〈ビギナーショートソード〉、〈ビギナーレザーアーマー〉、〈ビギナーシールド〉の3点、合計1800ゴールドです。

 こちら、冒険者ギルドへの加入と同時に、年利29.2%複利の新規冒険者義務ローンでご購入いただいております。返済日は毎月……」


「〈説明加速〉!」


「……というわけです!

 クエストたくさんこなして、ランクアップとレベルアップと返済!

 頑張ってくださいねっ♡」


 こうして、俺は冒険者になった。


     §


 強制購入の装備を身に着けたあと、俺はダンジョンに入った。


 年利29.2%のアコギな借金を背負ってしまった以上、急いで稼がなくては。


 辺境都市ダンジョン第1階層の、うす暗い洞窟の中を、俺は歩き回る。


「! グォオオ!」


 すると、緑肌の小鬼と目が合った。

 そいつは、吠えながらこちらへ襲い掛かってくる。


「〈加速〉!」


 俺は自分の行動速度を上げる。

 緑肌の小鬼の手の爪が届く前に、相手の頭に〈ビギナーショートソード〉の刃を叩き込む。


「ゴギャ……!?」


 緑肌の小鬼は頭頂から股下まで一直線に両断。

 左右に別れて倒れた。


 死んだ緑肌の小鬼は、みるみる黒い霧になって消えていく。


 直後、頭の中で声が響く。


――グリーンゴブリンを殺害しました。

  経験値を3獲得しました。

  Lvが2に上昇しました。ステータスが上昇しました。


「〈レベルアップ加速〉!」


――レベルアップが加速しました。

  レベルが27に上昇しました。ステータスが上昇しました。

  スキル〈下級火魔術〉〈下級治癒術〉〈下級水魔術〉〈下級浄化術〉〈下級風魔術〉〈既訪街村転移ファストトラベル〉〈下級地魔術〉〈中級火魔術〉〈下級防護陣〉〈常若〉〈下級催眠術〉〈下級魔封術〉〈中級火魔術〉〈中級治癒術〉〈聖雷〉を習得しました。


 おおお! これはわりとすごいんじゃないか!?


 毎度ダメ元で唱えてはいるけれど、まさかレベルアップまで加速できるなんて!


 〈聖雷〉ってのも強そうだし、当面は有利に戦えそうだ。

 このまま、進めるだけ進んでみよう!


 緑肌の小鬼グリーンゴブリンの死体から取れた小さな光る石(加速した説明の中で、受付嬢ローエが魔石と呼んでいたもの)を回収して、俺は歩みを再開する。


     §


「……ふぅ……」


 辺境都市ダンジョンの、5階層までやってきた。


 これまでのところ、危険らしい危険を感じることはなかった。


 無論、レベル下の相手であっても、不意を突かれれば危険だろう。


 しかし、俺には〈加速〉がある。


 どんな場合でも、まず、敵の動きが静止して見えるくらいまで加速。

 その状態で深呼吸などして落ち着き、気が済むまで冷静に相手を観察。


 弱点部位を精確に狙って加速した刃を叩き込み、常に一撃で相手を殺害。

 魔術を使ってMPを消費することさえなく、勝利することが出来ていた。


 歩き続けた疲労感があるにはあったが……

 これも、座って〈体力回復加速〉と唱えれば、それですんなり癒えてしまった。


「ガッギャゴォ! グゲー!」

「「「「「ガギャギャギャギャギャァア!!!」」」」」


 そんな折、大型のゴブリンの指揮の元、四方からゴブリンの群れがやってきた。


「〈加速〉!」


 でも、これも同じだ。


 十分に加速してしまえば、動かない的が大量にあるばかりのこと。


 生きたゴブリンがいなくなるまで、俺は刃を振るい続けた。


「よし、一丁あがり!」


――ハイゴブリンを始めとする複数のモンスターを殺害しました。

  経験値を15324獲得しました。

  Lvが28に上昇しました。ステータスが上昇しました。


「〈レベルアップ加速〉!」


――レベルアップが加速しました。

  Lvが83に上昇しました。ステータスが上昇しました。

  スキル〈中級防護陣〉〈上級火魔術〉〈上級水魔術〉〈上級治癒術〉〈上級風魔術〉〈無限活力〉〈上級防護陣〉〈上級地魔術〉〈爆炎葬〉〈凍氷封〉〈翠嵐殺〉〈地龍獄〉〈魔討斬〉〈神聖皇雷〉を習得しました。


 よし! また滅茶苦茶強くなれたんじゃないか!?


 この先に進めば強い敵がいるだろうし、どこまでやれるのか試すのが楽しみだ!


     §


「!?

 ……何という気配を漂わせているのだ、貴公は……!?

 よもや定命のヒトの身で、それほどの力を得る者が存在しようとはな……!」


 辺境都市ダンジョン、第10階層。


 大部屋に入ると、ダンジョンボスと思しき緑肌の人物が、驚きに目を見張った。


「……敵わぬとても、討ち死にの誉れを得らるるは僥倖なり。

 魔王軍四天王〈鮮血のヴァジャーヤ〉さまの配下、ピアブレム、参る!」


「ご丁寧にどうもありがとうございます。俺はサトウ・レンと申します。

 ――〈加速〉!」


 俺は加速して、緑肌の人物ピアブレムに一瞬で肉薄。

 正面から、一撃で首を斬り飛ばした。


――ゴブリンバロンを殺害しました。

  経験値を32000獲得しました。


「〈経験値蓄積加速〉!」


――経験値を9999999獲得しました。

  Lvが89に上昇しました。ステータスが上昇しました。


「〈レベルアップ加速〉!」


――Lvが100に到達しました。ステータスが上昇しました。

  存在格の進化が可能になりました。

  種族:人間から、種族:超人に進化しますか?


「します」


――種族:超人に進化しました。


「〈存在格進化加速〉!」


――その操作は実行できません。


 お? 初めて聞くフレーズだ。


 万能と思えた〈SSR加速〉スキルにも、どうやら限界はあったらしい。


――神への進化には、人魔全ての服従が必要です。

  条件を充足するまで、神への進化はできません。


 ……逆に言えば、条件を満たせば神になれちゃうのか。

 すごいな。


 ……〝人魔全ての服従〟か。

 よし、新しい目標が見つかったぞ!


     §


 ダンジョンボスの死によって、辺境都市ダンジョンは消滅。

 俺はいつの間にか、草原に移動していた。


 そこから短い距離を普通に歩いて辺境都市へ戻り、冒険者ギルドにやってきた。


「あの、すみません」


 見覚えのある黒髪ボブの受付嬢ローエがいたので、さっそく声を掛ける。


「あ、書類仕事の得意なサトウさん!

 ……何のご用ですか? 今は唐突にダンジョンが消滅した件で忙しいので、出来る限り手短にお願いしたいのですが……」


「魔石の買い取りと、冒険者ランクの昇級手続きをお願いします。

 こちら、ダンジョンボスだったゴブリンバロンの魔石でして、他にもたくさん細かい魔石が取れました。そしてダンジョンボスを討伐したワケですから、Fランクからの昇級には十分な実績かと。

 ダンジョンの消滅も、つまりは俺の功績です」


「は? サトウさんが?

 ンなワケないじゃないですか♡ おバカさ~ん☆ プーッ! クスクス♪」


 証拠の大型の魔石を見せて言ったにも関わらず、鼻で笑われてしまった……


「いいですか? サトウ・レンさん?

 ダンジョンボスの討伐も、ランクアップもですね。書類仕事みたいにサラサラっと済むものじゃないんです。世の中、そんな簡単じゃな――」


「〈説教加速〉!

 ……とりあえず、この魔石を調べてもらってください。

 そうすれば、俺が嘘は言ってないって、わかってもらえるはずですから」


「はいはーい……しょうがないですね……

 そんなはずはありませんけれど、一応、鑑定部に回してあげます。

 もしホントにサトウさんの功績なら、私、目でピーナッツ噛んであげますよ」


「よろしくお願いします。

 ――〈鑑定加速〉!」


     §


「「た、大変申し訳ございませんでした!!!」」


 魔石の鑑定終了後。


 俺は黒髪ボブの受付嬢ローエとギルド長の二人に、ダイナミック土下座されていた。


「確かに、こちらはダンジョンボスの魔石です……!

 魔力波長も、ゴブリンバロン・個体名ピアブレムの物に相違ありません!

 彼奴の単身討伐は、Lv.100の超人であるサトウさま以外不可能でしょう!

 部下が不敬の口を利きまして、誠に申し訳ございません……!」


「……うっぐ、えぐ、ほ、本当に申し訳ございません、サトウさまぁ……」


 それだけ言うと、二人は再び地に頭を擦り付けた。


「……あぁ、いえ……とりあえず、わかって貰えて良かったです……」


「……謝罪の証として、次の3つの措置を取らせていただきます。

 報奨金と魔石の買取金額を、300%割り増し。現状の最高であるAランクの上に相当するSランクを創設し、サトウさまのギルドカードを書き換え。

 そして不敬を働きましたこの者の、この場での切腹。

 当ギルドの総戦力を遥かに上回る強さのサトウさまへの失礼に対し、この程度の些事でつぐなえるはずもありませんが……

 どうか、残りのギルド構成員の生存についてはご容赦くださいませ……」


「……は、はいぃ……

 私、お詫びとして、目でピーナッツを噛んだ後、切腹いたしますぅ……」


 えっ、なにそれこわい。


「そんなヤバいことしないでください。

 わかって貰えれば、目でピーナッツも切腹も必要ないですって」


「ははーっ! 何たるありがたきお言葉でしょう!」

「……ぁ゛、あ゛りがとうございましゅ、サトウさま……」


 二人から4度目の土下座を受けたところで、俺は閃く。


「あ、ところで話は変わるんですけど。

 俺、社会的地位上げたいんですよ。なんで、爵位とか欲しくてですね。

 もし、御ギルドの方にコネとかあったらでいいんですが……偉い方に口利いてもらうことって、できますかね?」


「! お安い御用でございます!」


     §


 というわけで、俺は准男爵バロネットに叙されることになった。


 今は辺境都市にある館の広間で、主君となる辺境伯の前に膝を着いている。


「冒険者、サトウ・レン。

 ダンジョンボスを単身討伐せるそなたの武勇を讃え、准男爵バロネットの位を授ける」


「はっ、ありがたき幸せにございます!

 ――〈叙爵加速〉!」


 そう唱えた瞬間、居場所と目の前の人物とが変わる。


 俺は王宮の広間で、主君となる国王の前に膝を着いている。


「超人冒険者、サトウ・レン。

 ダンジョンボスを単身討伐せるそなたの武勇を讃え、スペリオルグランド公爵デュークの位を授ける」


「はっ、ありがたき幸せにございます!

 ――〈儀式加速〉!」


 こうして叙任式を終え、俺はスペリオルグランド公爵デュークという肩書の大貴族になった。


 いや、スペリオルグランド公爵デュークって何だよ!?


     §


「――というわけで王陛下。

 畏れながら、国一番の大貴族である俺に、王位をお譲りいただきたい」


「は? ……そなた今、なんと……」


「〈譲位加速〉!」


「新国王サトウ・レン! 万歳! 神よ祝福あれ!」


 こうして、俺は国王になった。


 王として、俺は世界各国に書状を送る。

 内容としては「貴国は我が国の属国となるべきなのでなれ」というものだ。


 常識で考えて、こんな命令を受け容れる国はない。

 しかしこの王国よりも小さな国にとっては、拒絶はなかなかの難事だろう。


 わずかなりとも国家統合の流れが生じる以上、これも〈加速〉が可能なのだ。


「〈国家統合加速〉!」


「万歳!

 サトウ・レン! 全人類の盟主! 偉大にして至高なる真善美の体現者!」


 こうして、俺は全人類を服従させた。


     §


 残るは魔族だ。

 魔族全員を服従させれば、俺は神に進化できることだろう。


 まずは魔王軍四天王〈鮮血のヴァジャーヤ〉に、臣従を勧める書状を送る。


「クハハハッ! 面白き血袋が在ったものよ!

 その増上慢、矮小なるヒトの身で贖い得るものや如何!?」


 ……ところが、魔族との全面戦争になってしまった。


 考えてみれば当然か。

 相手は異種族の、おそらく相当に偉い人なのだ。


 一国の王として諸国に臣従を求めることと比較しても、妥当性がなさ過ぎる。


 とはいえ、戦争になったのなら、戦って勝てばいいだけだ。


「〈既訪街村転移ファストトラベル〉!」


 俺は辺境都市へ帰還し、装備を整えて、まつろわぬ魔族討伐の旅に出る。


「〈旅程加速〉!」


 そして、〈鮮血のヴァジャーヤ〉の居城、その玉座の間にやってきた。


「クハハッ! 愚かなりヒトの王! 単騎突貫など、将たるものの業に非ず!

 汝の鮮血なる真紅の花を以って、我が忠節の臣への手向けとしようぞ!」


「そうはならないと思いますよ。

 〈加速〉! 〈魔討斬〉! 〈聖雷〉!」


 俺は加速して、ヴァジャーヤの首を刎ねる。

 全身を斬り刻み、肉片を〈聖雷〉で一片残さず焼き浄めた。


――魔族四天王〈鮮血のヴァジャーヤ〉を殺害しました。


「〈四天王討伐加速〉!」


――魔族四天王〈業苦のナルバニオン〉を殺害しました。

  魔族四天王〈慈愛のマリアスイート〉を殺害しました。

  魔族四天王〈慟哭のメルフェスエレス〉を殺害しました。


――魔族四天王を全滅させました。


「〈旅程加速〉!」


 ヴァジャーヤの血に濡れた剣を持ったまま、俺は魔王城の玉座の間に至った。


「初めまして、魔王エアル=コニヒ陛下。

 人間のサトウ・レンです。

 こちらが、ご臣下4人の首級だった魔石になります。

 服従していただけるなら、陛下とは戦わずに済むのですが……」


「………………致し方なし。

 恥を捨て、智を巡らし、力の限り全身全霊尽くせども、御身に抗うすべはなし。

 魔の種族全ての生存をご寛恕願わんため、平に額づき奉る」


 エアル=コニヒはそう言って玉座から降りて歩き、俺の前で土下座した。


「どうもです」


――人魔全ての種族を服従させました。

  神への進化条件を充足しました。

  種族:超人から、種族:神に進化しますか?


「します」


――種族:神に進化しました。


 !?


 そう頭の中で声がした直後、例えようもない圧倒的な感覚が全身を走る。


 ……確かに、俺は神になったのだ。


 人間時代は元より、超人になってからも想像さえ出来なかったほどの視座が、自明のものとして感じられる。


 このような感覚の元にあったなら、女神アパラ=パリアが俺を下等生物と見下したのも、無理からぬことだろう。


 ……とはいえ、ちょっと思いやりに欠けているんじゃないか、とも思う。

 これだけの余裕があったなら、いくらでも人に優しく出来るはずだ。


「……よし」


 最後の決着をつけるべく、俺は移動を開始。


 神ならざる身にはどうあっても届かない場所へ、呼吸するように自然に進む。


     §


 この世のどことも思われない、黄金色の光と雲のただよう不思議な世界。


「!

 ……ついに来やがったな、スローライフ希望のサトウ・レン……!」


 銀髪爆乳褐色ギャルのアパラ=パリアは、俺を見るなり眉根を寄せた。


「おかげさまで。

 〈ユニークスキル:SSR加速〉、滅茶苦茶役に立ったよ」


「てか、なんで生きてんだよ、お前……!?

 普通のヒトなら、超人になる前に寿命で死んでるはず……!

 早く生きて、早く死ぬ、クイックライフになるはずだったのに……!

 なんで……!?

 なんで〈常若〉なんてスキルに目覚めた……!?」


「俺もわからん。

 ……でも、前世の俺は、女神であるお前の炎で死んだわけだろ。

 そのせいで、なんかこう、神属性っぽいものが付いちゃったんじゃないか?

 エビチリを食べた箸でご飯を食べたら、白米に赤いのが付いちゃった。

 みたいな、そんなノリでさ」


 俺は推論を述べる。


「!?

 ん゛があ゛あ゛ぁ゛! ぐっぞぉ゛お゛お゛お゛!!!」


 するとアパラ=パリアは一瞬、驚きに息を呑み、汚い声で叫んでくやしがった。


「……クソ、あークソ、畜生……運のいいカスがいたもんだな……

 ――けど。

 いい気になるなよ、元・下等生物……お前は私と対等の存在になっただけ……。

 神としての年季は、私の方がずっっっと上!

 スキル頼みで雑魚狩りしかしたことのないカスが、私に勝てるワケねーから!

 バ~カ☆ プーッ!」


「言われてみると確かにそうかも……?

 ちょっと怖いな……お前に殺されるのは、もう経験済みのはずなのにな……」


「…………」


 アパラ=パリアは顔を伏せ、しばし沈黙。


「チッ」


 それから、大きめの舌打ちをした。


「あ゛あ゛ぁ゛! カスが! ホントは怖いなんてまるで思ってねえくせに適当コキやがってよぉ゛お゛! あ゛あ゛煽り゛やがってぇ゛え゛え゛え゛!

 クソボケあほカスダボゲロゴミうんこバカァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーー!!!」


 濁った声で罵詈雑言を叫びながら、アパラ=パリアは力を放射。

 地上の尺度で魔術や呪詛と称するものを、世界の重さほど吹き荒ばせる。


 俺も神としての権能を用いて、これに対抗。


 世界の総量にも等しい破壊と再生とが絶え間なく繰り広げられ、拮抗する。


 ヒトの一生、その数乗にも優る永き時が過ぎ行き――


「!」

「!?」


 とある力が、拮抗をすり抜けて俺に到達。

 その権能を具現した。


「! や、やった! 通ったッ! 〈存在格矮小化〉!

 ざまぁ見ろうんこカス! これでお前は、元の下等生物に逆戻――!?」


 快哉を叫ぶアパラ=パリアが、急に黙り込む。


 きっと、自らの敗北を悟ったのだ。


「ぁ、ああああ……! なんで……!? なんで私が下等生物ヒトに……!?

 ヤダぁ……あぁ……」


「そうなるように仕組んだからな。一瞬前のお前と、同格の神である俺が」


 女神アパラ=パリアと俺は同格の神。

 同格ゆえ、戦った場合の勝敗は、じゃんけんのように相性で決まる。


 じゃんけんならば、運か読み合いで上回った方が勝つ。


「格下狩りの経験しかないのは、神として祀られていたお前も同じ。

 俺が同格の神であることが、お前は何より怖かったはずだ、アパラ=パリア。

 だから本命として当てに来る攻撃は、〈存在格矮小化〉だと予測できた。

 俺が神でさえなくなれば、何だってどうとでも出来るからな。合理的な判断だ」


「……あ! ああぁ……!」


 ヒトの少女アパラ=パリアは、目を見開き、口をパクパクさせて呻く。


 全身の細胞の挙動から、図星を突かれた驚きに打ちのめされているのがわかる。


「そして、神としてのキャリアは俺の方が下。

 競り合いになった後、一手先んじるのは、十中八九、経験豊かなお前だろう。

 だから仕組んでおいたんだ。

 〈存在格矮小化〉だけは完全に無効化し、術者に効果をそのまま返す機構をな」


「……ぅ、あぁ、そんな……」


「代わりに、直接的な攻撃には超人の万倍程度しか耐性が無かったんだが……。

 お前が本命にはしなかったし、牽制分はなんとか捌き切れた。

 てなわけで、また焼き殺されるのは避けられたんだ」


「…………」


 口をパクパクさせるアパラ=パリアの意識レベルが、急速に低下し、気絶した。


「おい起きろ」


 俺はアパラ=パリアの肉体を操作し、すっきりと健康体で目覚めさせた。


「!? わぁっ! あっ、あぅ……」


「それで、こうなったからにはさ。

 アパラ=パリアお前、なんか俺に言うことがあるんじゃないかな?」


「……あああぁっ、あ、ああぁ……

 ご、ごめんなさいぃ! 本当に、申し訳ありません! 重ね重ねの非礼、謝りようもございません! 何億年でも、お気の済むまでご拷問くださって結構ですから、どうか!

 神の憎しみに晒される劫年に、いつか終わりをお恵みくださいぃ!」


「……わかってくれたならいいよ」


 俺は権能を行使。


 アパラ=パリアの存在格を、元の女神に戻した。


 ……今の俺は、こいつをどうとでも出来る、圧倒的に優位な立場にある。

 であれば、慈悲を垂れてやって優越感に浸るのが、俺好みの選択だ。


「………………? ! ?……いいの?」


「何が」


「……私、別に反省とかしてないよ。

 さっきは下等生物にされてたから、身体が勝手に怖がっちゃって、あることないこと言ったけど。

 女神としての私は、前世のレンを燃やしちゃった時と何も変わってないから。

 なのに、いきなり全部元通りの私にしちゃって良かったの……?

 ちょっとずつ権能を返すとか、そういう風にした方がいいんじゃ……」


「……その反応は、滅茶苦茶反省してないと出てこないんじゃないか?」


「うーん……? そう、なのかな……?」


「何であれ、好きにしてくれ。

 俺としてはもう、やるだけやって、お前に対しての気持ちは晴れたから」


「レンはこれからどーするの?」


「わかんねえ。

 ……ていうか、神って、何して過ごしたらいいんだ……?」


「? どゆこと?」


「目的が見つからん。

 金はもう十分持ってるし、買い物なんかしなくたって何でも自分で創れるし。

 神にまでなっちまったら、出世のしようもないし。

 そもそも、知覚できる情報量が巨大過ぎる。

 毎秒、数十億人分の一生を、同時に過ごしてるような濃厚さだ。

 そんなだから、ヒトの尺度で趣味にし得るどんなものを追求したところで、退屈しのぎにも満たないし。

 困った」


「下等生物いじめて過ごせばイイじゃん」


「その趣味は危険だって、実体験で知ってるもので」


「うぐ。

 ……じゃあ。

 記憶を消してヒトに転生して、今度こそスローライフする、ってのは……?」


「そのあたりが身の丈相応かな……? よし、じゃあそれで」


「…………私も、着いてったら、怒る……?」


「好きにしろって言っただろ」






本作を御覧くださりありがとうございます。

御身に善きことのございますように。

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