58 再会
俺が第三王子派に入ってから、数週間が経った。
ここ最近は、ほぼ毎日王城に通う日々が続いている。ジークディア殿下からの要求である、「日中の護衛」を行っていたからだ。
リナは他にやる事が色々あったらしく、ほとんどは俺が行っていた。そのせいで、ジークディア殿下には根掘り葉掘り質問をされたが、まあそれは置いておこう。
そして今日、ミラーノ市からアールとシロがやって来たらしい。
◇
王城から連絡を受け取った俺は、いつも通りジークディア殿下の護衛として、王城に入った。
気持ちとしては一番にアールとシロの所に行きたかったが、流石に護衛の仕事をしないとまずいので、一旦日中は護衛の仕事を完遂する事にした。
「良いのですか?」
「何がです?」
「お知り合いが来てるんでしょう?行かなくて大丈夫なんですか?」
そういう心積もりで来たのに、随分と揺さぶってくれるじゃないか、殿下。
「いえ、大丈夫ですよ。派閥に入る時の条件ですから、それを破る訳にはいきません」
「そうですか……。一応、一日ぐらいなら大丈夫ですけど?」
「殿下……そうやって一日ぐらいなら、と言っていると、次は二日になり、三日になり、最終的にどんどん延びていくんですよ……」
「なるほど……それもそうですね」
なんか実感あるな、とツッコまれなくてよかった。
納得したジークディア殿下は、いつも通り俺を連れて色々な所を回る事にした様だ。
ちなみに、ジークディア殿下の護衛は俺一人である。
普段は二人の護衛が居るのだが、ジークディア殿下が「上級悪魔を倒せる様なお方なのだから、他の護衛など必要無い!」と言って、普段の護衛には休みを出しているそうだ。一応、日中以外は護衛をさせているらしいが、日中は俺が居るので問題無いそうだ。
俺は本当にそれでいいのか……?と思ったが、ラムディーノ公爵辺りも頷いていたので、本当に大丈夫らしい。
殿下の独断でなくて良かった。
◇
それから数時間して、あっという間に夕方になり、ジークディア殿下の護衛の時間が終了した。
護衛が終了したと同時に、使用人の一人が俺の所にやって来た。
「陛下がお呼びです。こちらにどうぞ」
「あ、はい」
どうやら、国王直々にお呼びらしい。
まあ、タイミングから考えて、用件は一つだろうが。
使用人さんの後を付いて行くと、やっぱりいつも通りの部屋に連れていかれた。
使用人はノックをして「お連れしました」とだけ言うと、部屋から離れて行った。
と同時に「入れ」という声がしたので、俺は部屋の中に入る。
「あれっ、ハリー!?」
部屋の中には、国王とアール、シロ、メリーの四人が居た。
部屋に入って来た俺を見て、アールが驚きの声を上げている。
何故だ……。
「来たか、フェッルム卿。まあ座るがよい」
「はい」
何故か国王の隣に座る様促されたので、指示通り隣に座った。
居心地が悪い。
「さてだ……実はな、この三人はもう解放する事になった」
「あれ……メリーはともかく、アールとシロは拘留期間があるって話じゃ?」
聞いていた話と違う。
数週間の拘留期間を経て解放する……と聞いた筈だが。
「その筈だったのだが……まあ、捜査が進んで色々と事情が変わったのだ。詳しい事は言えぬがな」
「そ、そうですか」
まあ、面倒な物が無くなったのなら喜ばしい事だろう。
「それでだ。この二人は、フェッルム卿の家臣としてもらう事になった」
「は……はい?」
何故そういう話になるんだ。
ほら、向かいの二人を見てみろ。開いた口が塞がらないって顔してるぞ。
「それが嫌であれば、規定の拘留期間分拘留させてもらう。さあ、どうする?」
俺がその決定権を委ねられるんですか……?
何故部屋に入るなり頭の痛くなる様な話をされているんだ、俺は……。
はぁ……と溜め息を吐いて、向かいの二人を確認する。
驚いてはいるが、顔的には了承っていう感じだ。
しょうがない。
「分かりました。家臣にします」
「よかろう。もう少ししたら、フェッルム卿はヘキサゴンに行くのだったな?そこに連れて行くがよい」
「あ、はい」
何故それを知ってるんだ……?という言葉は飲み込んでおいた。
国王独自の情報網でもあるのだろう、きっと。
アールとシロは、ヘキサゴンと聞いて更に驚いている。
冒険者の中では、ヘキサゴンはそれなりに有名な国なのだろうか。俺は聞いたのはつい最近だと言うのに……。
話はそれだけだったらしく、国王は残っていた紅茶を飲み干すと、「自由に使ってくれて構わん」という言葉を残して、部屋を退室していった。
それと同時に、何故かメリーがこちら側のソファーに座ってきた。
「あー……えと、ハリーって貴族だったのか?」
「だった、ていうか最近なったんだけどな。……メリー、何故伝えてない?」
「え?いや、驚かせた方が楽しいかな~、みたいな?あはは」
あはは、じゃねえよ。
メリーの発言を聞いて、アールとシロが驚いている。
何故?
「メリー、随分楽しそうに話すね」
「え?そうかしら?」
「ああ、俺達と一緒にパーティー組んでた時より、よっぽど楽しそうだぞ」
「うーん……そんな事無いと思うのだけれど……」
……ああ、二人が驚いている理由が分かった。
コイツ、ミラーノ市に居た時はずっと敬語だった。居た時、というか、俺やリナ、リーニャに対して以外は、ずっと敬語だ。
アールとシロに対しても敬語だったから、二人は驚いているのだろう。多分。
「まあ、そんな事はいいさ。ハリー、ヘキサゴンに行くって本当なのか?」
「ん?本当だが?」
「よっしゃー!」
頷いてみせると、アールがガッツポーズして喜んだ。
「アールはずっと迷宮に行きたかったんだよね……」
シロが呆れた様子で解説してくれた。
まあ、迷宮に憧れる気持ちも分かるっちゃ分かる。俺も少しワクワクしているからな。
「あ、そういえば、二人ってもう付き合ってるのかしら?」
ガッツポーズをするアールを微笑ましく見ていたところで、メリーが前々から気になっていた質問をぶっこんだ。
前は付き合っていそうな雰囲気で付き合っていなかったが、今はどうなのだろうか……?
メリーの質問に、二人は顔を真っ赤にして、ゆっくりと頷いた。
「その、最近……」
「あ、ああ……」
丁度最近の出来事だったらしい。
素直に祝福しておくとしよう。
「おめでとう」
「おめでとう~!!」
「「あ、ありがとう……」」
恥ずかしそうにコクコク頷く二人。
前世では妬む側だったが、今世では何故か素直に祝福できた。
周りに美少女が居るからだろうか?
ともかく、いつまでもこの部屋を使っている訳にはいかないので、ひとまず二人を連れて、屋敷に帰る事にした。
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