56 派閥入り
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数日後。
約束通り、ラムディーノ公爵から書簡でリーニャ用の過去問集が送られてきた。
そして、派閥関係の話がしたいから来てくれ、という旨の手紙も同封されていた。
いよいよ来たか、という感じだ。
一体ラムディーノ公爵がどのような条件を出してくるのか、少し興味がある。
それを早く知る為にも、昼食を済ませてすぐに公爵邸に向かう事にした。
◇
「おお、来てくれたか」
毎度思うが、この人は公爵なのに門の所で俺を出迎えていいのだろうか?
……まあ、本人がやっている事だし、俺には関係無いか。
「こちらのメリットがなんなのか、興味津々なもので」
「そうか。まあ、立ち話もなんだ。早く上がってくれ」
それもその通りなので、素直に従っていつもの部屋に向かう。
ちなみに、向かっている途中に教えてもらったのだが、あの部屋は歓迎室という名前らしい。
意味は文字通り、心の底から歓迎したい相手のみを入れる部屋、だそうだ。
なんというか、「お前は歓迎したい相手だ」って言われている感じがして、ちょっとこそばゆい。
まあ、素直に嬉しがっておこう。
歓迎室に入ると、今回は既に紅茶が用意されていた。
俺がすぐに来る事を見越して予め淹れていたようだ。湯気が立ち上っている事から、淹れたばかりな事が窺える。
「さあ、座ってくれ。君が来ると思って淹れておいたんだ」
「失礼します」
ラムディーノ公爵に促されるまま座り、公爵が紅茶を啜ったので、俺も合わせて啜る。
しばし紅茶を楽しんだ後、先に俺が口を開く。
「過去問集、送って下さってありがとうございました」
感謝は大事。
夫婦仲の悪化の原因だって、感謝が少なくなる事から始まるのだ。
それは友人関係などにおいても言える事だと、俺は思う。
「礼には及ばぬよ。有効活用できそうかな?」
「ええ。今朝渡しておいたら、早速取り掛かってましたよ」
そう、過去問集が届いてすぐにルーアに渡したら、家事魔法で他の紙に複製して、複製品をリーニャに解かせていたのだ。
ちなみに、本や問題集みたいな物を複製するのはよろしくないらしく、ルーアに「大丈夫なの……?」と訊くと、「内緒ですよ……?てへっ」と大変ふざけた答えが返ってきた。
あの侍女、リーニャに悪影響を与えないか心配である。
それはさておき。
俺の答えにうんうんと頷いて上機嫌になったラムディーノ公爵は、早速話題を派閥関係に転換する。
「さて。では、派閥勧誘の話を始めようではないか」
「……お手柔らかにお願いします」
ラムディーノ公爵の言葉に、俺も公爵もカップをソーサーに置く。
カチャ、という音が今だけは戦闘開始を報せるゴングのようだ。
「派閥に関する基礎知識、そして貴公を我らの派閥に引き入れた際のこちらの利は、既に話したと思うが、覚えておるかね?」
「ええ、覚えています」
王を目指す王族が、自分に忠誠を誓う臣下――貴族を集めてるのが、派閥。
まあ、正しくは王を目指す者以外も派閥を作っているらしいのだが、それは置いておこう。
そして、今現在主力な派閥が、第一王子派、第一王女派、そしてラムディーノ公爵が属する第三王子派。
第二王子は性格に難があるとかも言ってたか。
俺達を引き入れた際のメリットが、他派閥への威嚇、そして武力行使を防ぐ事ができる。
法だなんだと言っても、結局のところ力は問題を解決する万能の手段だからな。それを防げるというのはかなり大きいだろう。
「そして、君が望んだ報酬は、仲間の安全、そして効率的なレベル上げの手段……で、間違い無かったか?」
「はい、間違いありません」
次点で友人達の安全もあるが、まあそこまで報酬に織り込むのはやり過ぎだろう。
もう少しでレベルが80に到達する身としては、レベリング手段はあればあるだけ良い。
メリー達のレベルも上げて安全性を高めておきたいし。
「一つ目、これに関しては……まあ、我々にできる事は少ない。何せ、貴公らよりも強力な生物なぞ、悪魔や魔王ぐらいしか心当たりが無いからな」
「……まあ、それはそうですね。レベルを上げるのが一番安全になりそうですし」
「とはいえ、何もしない訳では無い。貴族絡みの権力争いや、法律関係に関しては全力で守ろう。今の状況ではあまりできる事は多くないが、我らが覇権を握ればそれらはより容易く行えるだろう」
「なるほど……」
俺達は権力争いなどに慣れていないので、それはありがたい。
変に会話から言質を取られたりして、面倒な事に発展したりするのは嫌だからね。
となると、やはり期待できるのは二番目、レベル上げ方法か。
「そして二つ目、効率的なレベル上げ方法だが……これに関しては、色よい返事ができそうだ」
「ほう……」
変にもったいぶらずに、すぐに教えて欲しいものだ。
ラムディーノ公爵は紅茶を一口啜って喉の渇きを潤した後、言葉を続ける。
「フェッルム卿は、迷宮について知っているか?」
「迷宮……まあ、言葉ぐらいは知ってますね」
なるほど、迷宮がレベル上げに繋がる訳か。
「まあ、簡単に言えば魔物の養殖場だな。とはいえ、人為的な物ではないが……。ともかく、迷宮は資源の宝庫であり、修練の場でもある事から、国単位で管理している。我らがルネキア王国も、一つだけ迷宮を保有している」
「それを使わせてくれると?」
「いや、これに関しては難易度が高くないので、フェッルム卿には合わんだろう。それに、この国の迷宮は一般公開されているからな」
一般公開されているなら、冒険者が集まりそうだ。
「まあ、そんな迷宮を多数保有している国がある。それが、迷宮国家ヘキサゴン。ヘキサゴンの保有する迷宮は三桁に届くとも言われており、大部分は一般公開されているのだが……少数、国が許可した者以外入る事のできない、高難度の迷宮が存在する。その中には、勇者といえど簡単には許可を取り付けられない物もある」
「なるほど……それの使用権をもぎ取ってくれるという事ですね?」
「そういう事になる。ただし、時間は貰うがな……」
まあ、それはしょうがない事だろう。
勇者でも容易にはできない事をすぐさまやれ、というのは無理があるからな。
とはいえ、難易度がどれくらいか知っておきたい。
「それはどれくらいの難度なんですか?」
「ふむ……。過去に、勇者の従者となった王族が居てな。その方が残した記録では、最高到達記録は五階層だが、三階層に到達してすぐに撤退したそうだ。一階層のボスは、レベル50近かったとの事だ」
「ほう……それは確かに、かなりの難度ですね」
勇者ですら三階層が限界と。
逆に五階層に到達した奴が誰なのか気になるな、それ。
まあともかく、一階層で50レベルなら、深くまで潜ればもっと高いレベルの奴が居るだろう。
アリだな。
迷宮ともなれば、何度も戦闘できるだろうし。
「なるほど……かなり良いですね」
「そう言ってもらえて何よりだ。……では、返事は期待しても?」
「そうですね……」
政治方面での安全が確保できるのはありがたい。
メリーとかリナに手を出す奴が居たら困るし、獣人という事でリーニャに不満を抱く奴が居てもおかしくない。
そんな奴らから守ってくれるというのは、かなりありがたい話だ。
そして、迷宮。
迷宮があれば、レベリングというナスターニャ神からのオーダーも達成できる筈だ。
「分かりました。俺は、第三王子派に入ります」
「そうか……よかった。……そうだな、まだ時間はあるし、王城に向かおう」
「王城へ?何故?」
「もちろん、我らが主に会う為だ。貴公が味方になった事も、報告しておかねばならない」
「分かりました」
なるほど。
ていうか、言われてみたら俺、第三王子の顔どころか名前も知らないな。
そりゃ、会っておかねばならない訳だ。
紅茶のカップを片付けた俺達は、早速ラムディーノ公爵の馬車で王城に向かう事になった。
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