53 突撃訪問
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ラムディーノ公爵の好意によって、公爵邸から王城に向けた馬車が出された。
今現在、俺とラムディーノ公爵はその馬車に乗っている。
ラムディーノ公爵としては一緒に来る理由は無い筈だが……まあ、俺がどう行動するかを知っておきたいという事だろうか。
俺の心が若干ささくれ立っているのを知ってか知らずか、ラムディーノ公爵は馬車に乗ってから無言を貫いている。
俺としても今はあまり頭を使った会話はしたくない気分なので、丁度良い。
この機会に、一応装備の確認だ。
いざとなったら「格闘」スキルで王城の衛兵ぐらいなら相手取れる自信はある。徒手空拳の実戦経験は無いに等しいが、レベル差と剣での戦闘勘からある程度は戦える筈だ。
仮に強者が居ても、「万物創造」で聖剣なり魔剣なりを作り出せばいい。ハリーの正体がバレる可能性もあるが、メリーがもし危険ならばそんな事を言っていられる場合では無い。
……こんな遅い乗り物に頼らねばならないこの状況がもどかしい。
いっその事アイギスを生成して、空中走行で王城に急行したいくらいだ。
まあ、できない事は分かっているが。
◇
馬車が王城に止まるなり、俺は扉を全力で開けて飛び出す。
「フェッ――」
ラムディーノ公爵が何か言っているような気がしなくも無いが、無視していいだろう。恐らく、俺が全速力を出したせいで追い付けない事への不満を述べたいだけだろう。今はそんな事を聞いている場合では無いのだ。
……というか、メリーの居場所を知らないな。どうしようか?
走りながら考える。
王城の入り口の前に門衛が居るな。
身分証の指輪を見せるついでに彼らに訊くとしよう。
「「ぎゃっ――!」」
「はいこれ、指輪。後シビル子爵がどこに居るか知ってる?」
俺が高速で近付いてきて目の前で急停止したからか、門衛が悲鳴を上げているが関係無い。
端的に知りたい事を尋ねると、門衛は少々驚きつつも答えてくれた。
「あ、ああ、えっと……さっき陛下が直々にどこかに連れて行ってましたね。どこかまでは――」
「そう、ありがとう」
知りたい情報が知れたので興味は無い。
門衛の脇をすり抜けて王城の中に入る。
国王直々に連れて行ったとなれば、場所は恐らくいつものあそこだろう。
あそこ以外のどこかだった場合、適当な使用人か貴族でも捉まえて吐かせ――教えてもらうよう優しく頼んでみよう。
方針を決めた俺は、いつもの国王との面会場に向かう。
流石に城内で全速力を出さないくらいの理性は残っている。
若干早歩きになりつつ、すれ違う使用人や役人などへの会釈もそこそこに、俺はかなりの短時間で件の場所に辿り着いた。
「メリ……ー?」
少し乱暴になってしまいつつ扉を開けた先に居たのは、ソファーに座って紅茶を嗜むメリーと国王の姿だった。
「あら、ハリー。どうしたの?」
紅茶のカップをソーサーに置いて、そんな事を聞いてくるメリー。
「はぁ……」
文句を言うどころか、安心しきって膝から崩れ落ちてしまった。
よかった……。
◇
「へー。ふーん。ほー」
「……なんだよ」
「なんでもー」
やけにニマニマしながら俺の顔を見つめるメリー。
普段は残念な姿を見せる事も多いものの、見た目は完全な美少女なので、正面から見つめられると少し居心地が悪くなってしまう。
何故こんな事になっているかというと……俺がここに来るまでの事情を詳細に話したからだ。
メリーの為に公爵邸から飛び出してきた、というのが嬉しかったらしい。
今は顔面に一発入れて黙らせたいくらいうざいが、まあともかく無事で良かった。
胸中で再び安堵していると、またもドアが開いた。
「ラムディーノ公……ノックを忘れる程焦っていたのか?」
「ッ!し、失念しておりましたな……これは失礼」
そう言って頭を下げるラムディーノ公爵は、少し汗を掻いているように見える。恐らく急いでここまでやってきたのだろう。
「まあ良い、貴公も座れ。茶を出させよう」
国王のその一言でメイドがテキパキと動く。
たちまちの内に俺とラムディーノ公爵の分の紅茶が用意され、俺とメリーの対面、つまり国王の隣にラムディーノ公爵が座った。
「それで、結局これはどういう状況なんです?まさか、ただメリーと茶を楽しみたかった訳ではないでしょう?」
「当然だ。……口で説明するより、見てもらった方が早いだろう。これを見るがいい」
そう言って国王は隣に座る公爵に、何やら資料のようなものを手渡す。
とても気になるが、グッと我慢して公爵が見終わるのを待つ。
やがて数分して資料がこちらに突き出されたので、若干焦りながらもそれを受け取って目を通す。
そこに書かれていたのは、ミラーノ市で俺が遭遇した悪魔事件と、つい先日王城前で起こったばかりの魔王事件の関連について、そしてそれらに関わった人物のリスト。
そして……ミラーノ市での事件の犯人が書かれている横に、「特筆事項:反逆罪に該当する可能性のある者」との記載が。そこには、見慣れた名前――アール、シロ、メリーの三人の名前が書かれていた。
「ッ……なるほど……」
無意識の内に舌打ちしそうになっていた口を押さえ、小さく呟く。
反逆罪と言えば、一族郎党が処刑されてもおかしくない罪だ。実際、関わった者の多くは近々処刑される事だろう。
だが、そんな人物は当然檻に入る筈……ここでメリーが優雅に茶を嗜んでいるという事は、つまり彼女はそれに該当しなかったのだろうか?
そんな俺の疑問に答えるように、国王が口を開く。
「本来であれば、そこに書かれている三人は審問の後に処刑してもおかしくない。しかし、勇者様やフェッルム卿が買っており、また信頼している人物という事で、看破の後特に問題が見当たらなければ、一定の拘留期間を経た後に解放する事となった。もちろん、爵位の剥奪も免除だ」
「よかった……」
「それに、拘留と言ってもあくまで手続き的なものだ。待遇はそこまで悪いものではない」
「なるほど……具体的にはどれくらいの期間ですか?」
「シビル卿の場合は三週間程だ。後からやってくる彼らに関しては、今のところは何も言えぬ。まだ無罪であると決まった訳でも無いしな」
「…………」
まあともかく、久々にアールやシロと会える機会ができたという事で良しとしよう。
ところで、一体彼らは何をして該当する可能性があるとみなされたのだろう?
「なあメリー、なんか心当たりあったりするのか?」
「心当たりって、言い方……なんかした人みたいじゃないの。……まあ、あれよ。私達とハリーが初めて会った日、私達は何をしてた?」
そう言われ、この世界にやってきた日の事を思い出す。
……馬車に乗っていただけじゃないっけ?
ああいや、違うな。なんか、頭の中で極秘依頼がどうのと考えた記憶がある。
「馬車に乗って、アールが御者と意味深な視線を交わしてたな」
「そう、正にそれよ。口外禁止の極秘依頼だったんだけどね、依頼の内容が、依頼人が御者をして私達はただミラーノまで乗るだけっていう、よく分からない依頼だったんだけど……どうやらその御者が、あの事件の犯人だったらしいわ」
「はあ……」
なんともまあ、意味不明な方法で街に入ったものだ。
道中での記録を残したくなかったのだろうか?
そんなものに巻き込まれたこちらの身にもなって欲しいものだ。
「まあ、別にアール達もなんともない筈だし、三週間経って落ち着いたらアール達と一緒に観光でもしましょ」
「……ああ、そうだな」
かなり前に別れた二人の顔を思い出す。
――流石にそろそろ付き合っている……よな?
何はともあれ、恐れていた事態は起こらなかったという事で、俺達は安心して茶を楽しんだ。
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