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51 新築のお屋敷

 短めです。

 騒がしかった茶会から二日後。

 俺達は、新しく与えられた屋敷で寛いでいた。

 そう、新しく与えられたのだ。

 どういう事か――少し、時間を遡ってみよう。




 そう、あれは茶会の翌日。

 またもや王城からの使いがやって来て、二日連続の登城をする羽目になった。しかも、当然のようにラルク達も一緒だ。


 茶会は昨日やったし、用件はなんだろ……?と思いながら、国王と会ったいつもの部屋に行く。

 やはりそこで待ち構えていたのは国王だった。


「来たか!まあ掛けるがよい」


 国王も今回はちゃんとソファーに座っているので、一礼してからソファーに座る。

 メイドさんに出された紅茶を啜り、国王の話に耳を傾ける。


「さて、貴公らも正式に貴族となったという事で、餞別として貴族街に屋敷を建てた」


「た――建てた?」


 何を言っているんだ?

 屋敷が一日で建つのか?一体どうなっているんだ、この世界は。


 だが俺の動揺など気にせず、国王は話を続ける。


「フェッルム卿と、えー……その令嬢、そしてシカリウス卿とトナーレ卿はそれぞれ一つの屋敷にしている。後の四人は一人一軒ずつ屋敷を与える」


 ――は?

 一日で屋敷を六つも建てたの?本当にどうなってるの?


 いやいや、取り敢えず現実と向き合わねば。


「えーと、大変ありがたいのですが、俺――私達は既に屋敷を持っていますので……」


「ああ、当然それは知っている。なので、その屋敷よりも豪華な物を用意しておいた」


「……では、私達は同じ屋敷に住むので、一つにして頂く事は?」


 私達、とは当然俺とメリー、リーニャ、そしてリナの事だ。

 了承も無しに言うのはアレかもしれないが、今まで一緒に住んでいたのに突然離れるのはちょっと嫌だ。

 それに、メリーは一人暮らしをさせてはいけないタイプだ。文字通りのゴミ屋敷が生まれる未来しか見えない。

 メリーもリナも「よく言ってくれた!」と言わんばかりの顔をしているし、大丈夫だろう。


 国王は少し悩んだ後、鷹揚に頷いてくれた。


「よかろう。では、勇者の従者一行は少し大きな屋敷に建て替えておくとしよう。……さて、グラジオラス卿達は屋敷へ案内しよう」


 国王がそう言うと、どこからともなく無音で現れた執事が、部屋の扉を開いた。

 ラルクは口の動きだけで「またね」と言うと、執事を追うように部屋を出て行く。次いで、他の面々も部屋から出て行き、残ったのは俺達と国王だけになった。


「貴公らに残ってもらった理由は二つだ。まず一つ目から行こう。勇者様にはいつ会えるのだ?」


「……さあ、分かりません。基本私達とは別行動を取っているので、あちらから連絡が無い場合は会う事が叶わないのです」


 国王の言葉で実に微妙な顔になってしまった俺は、表情を修正しながら答える。

 リナのジト目の視線を感じる。やめてくれ。


「そうか……では、可能な時に王城を訪ねるよう、伝えておいて欲しい。いつでも門は開けておこう」


「分かりました」


 俺の返事に満足したのか、国王は一つ頷いて紅茶を啜る。

 つられて俺達も紅茶を啜り、落ち着いたところで国王が「さて」と話を戻す。


「二つ目は、昼食をもう一度一緒に摂って欲しい。丁度昼前だし、良かろう?」


「もちろん構いませんが……何か理由が?」


「いや何、エレティーナとオーレリアがえらく貴公らを気に入ったみたいでな。使いを出すと言ったら昼食を一緒に摂ると言って聞かんのだ」


 エレティーナとは第五王女、オーレリアとは第六王子の事だ。

 昨日一緒に昼食を摂った時に懐かれたとは思っていたが、まさかそこまでだったとは。


 もしやまた貴族絡みか、と少し勘繰ってしまったが、どうやら杞憂だったようだ。なんとも微笑ましい理由で、聞いただけで頬が緩んできた。


「嬉しい事ですね」


「ああ、そうだな。……エレティーナとフェッルム卿を婚姻関係にするのも良いか」


 ちょっと、王様?小声ですけどちゃんと「聞き耳」スキルで聞こえてますからね?

 不穏な発言をするのはやめて欲しい。俺は別にロリコンでは無いのだ。エレティーナ殿下は愛すべき対象ではあるが、それはあくまで子供としてであって、異性としてでは無いのだ。

 本当に不穏な発言をするのはやめて欲しいものである。





 そういった事があり、俺達は昨日の夕方頃新しい屋敷を与えられた。

 その大きさにも驚いたが、一番驚いたのは使用人が居た事だ。恐らく国王はサプライズ的な感じにしたかったのか何も言わなかったのだろう。


 お陰で、玄関の扉を開けた途端に「「「「「お帰りなさいませ、旦那様、奥様」」」」」と言われた時には開いた口が塞がらなかった。

 異様に数が多かったので後で訊いてみたところ、本来メリー邸やリナ邸に配属される筈だった使用人達も合流したとの事だった。

 多分、クェート城並みの人数が居ると思う。恐ろしい事だ。


 述懐を終えた俺は飲んでいた紅茶のカップを置き、ソファーから立ち上がる。


「あら、どこか行くの?」


 俺が立ち上がると、向かいで同じように寛いでいたリナが声を上げる。


「ああ、公爵様のところに行かないといけないんだ」


 訝しむリナに用件を伝えると、リナも自身の用事を思い出したのか、「あっ」と声を漏らす。


「私も貴族の人と約束してたんだった……行かなきゃ」


「そうなのか?婚約者候補?」


「馬鹿ね、そんな訳無いでしょ。研究者の人よ」


「ああ……」


 結構真面目な口調で怒られてしまった。

 確かにずっと研究者と話し込んでいたし、気に入られたのだろうか。


 まあともかく、遅れない為にも早めに出発するとしよう。


「旦那様、馬車は表に」


「ああ、ありがとう」


 何も命令を出していないのに、俺達の会話を聞いて即座に仕事をしてくれる。

 はっきり言って、少し怖いくらいだった。


 まあ悪い事では無いし、素直に感謝しておこう。


 メイドの一人に差し出された正装を羽織り、外に出た俺は馬車に乗った。

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