50 茶会の裏で
短めです。閑話にするか悩みましたが、本編に入れる事にしました。
貴族達に囲まれて困っていたハリーを救出した国王は、宰相とともに自身の執務室に戻った。
彼らにも茶会に参加したい気持ちはあったが、やる事が残っている。
「……シャーマイン公爵の遺体の検分は済んだか?」
「はい。まるで内側から破壊されたかのような傷跡があったとの事です」
「ふむ……」
どこかで聞いた事のあるような話だ……と国王は考える。
そんな国王の頭の中を見透かしたかのように、宰相が言う。
「ミラーノ市で起きた事件の犯人も同様の傷跡を持っており、調べたところほぼ同じ、僅かにサイズが違うのみでした」
宰相はそう言いながら、国王に資料を手渡す。
(わざわざ検死担当を王都に連れて来るとは……数少ない空間魔法使いを使ってとは、余程関連があると見た訳か)
そこで国王は、資料のある一か所に気が付く。
「む……ミラーノの事件を起こした者は、シャーマイン公爵家の手の者だったのか」
「はい。王都での事件後に捕らえた者を尋問して分かった事です」
なるほど……と呟きながら、犯人の名前の近くに特筆事項がある事に気付く。
そこには、「反逆罪に該当する可能性のある者……C級冒険者アール、C級冒険者シロ、メリー・シビル名誉子爵」と記載されていた。
「これはどういう事だ?」
「は……。犯人は自身が公爵家の使いである事が露見しないよう、身分を偽ってミラーノ市や他の市に入ったのですが……その際に、偽証の為に冒険者を使ったようでして……それに関わっていた者が、そちらの三人となります」
資料によれば、犯人はわざわざ御者のフリをしてまで入市したようである。
あくまで自分は冒険者に雇われた御者、という体で通したのだろう。
(シビル卿が勇者の従者になったのは、この事件後だった筈だ……勇者様や、あの他者には用心深そうなフェッルム卿が、身の潔白が証明できていない者を仲間とするとは思えない……。いや、念の為直接話を聞いておく必要はあるか?ともかく、シビル卿よりもその二人の冒険者を連れて来るべきだな……)
数秒でそこまで思考した国王は、咳払いを一つした後宰相に命令する。
「シビル卿には、明日――いや、明後日に使いを出せ。直接話を聞く事にする」
「は。冒険者の方は?」
「冒険者ギルドを通じて連絡を行い、王都に連れて来い。手段は問わぬが、なるべく手荒な真似は取るな」
「は。畏まりました」
資料を机に置いた後、国王は呟く。
「そういえば、神託に関する情報が無いな……。本当にどこの神殿も、何も無かったのか?」
「はい。確認を取りましたが、どこも神託は降りていなかったそうです。付け加えるならば、ミラーノ市の事件も同様だったそうです」
「ふむ……」
国王は腕を組んで考える。
基本的に、災害や悪魔の出現など、人の手には負えない事態が発生する場合、先んじて神託にてその情報を得る事ができる。その為、魔王の出現前に勇者を召喚する事だったりができるのだ。
だが今回の場合は、魔王が王都に出現するという、異常事態中の異常事態であるにも関わらず、直前になっても一切の情報が入ってきていなかった。
(いや……まずそこがおかしい。魔王は遠方に出現するという話だった筈だ。何故この地に?遥か昔の大乱の時代でも、最低数年の空白期間はあった筈だ。しかし、魔王の出現は近々起こる……どういう事だ?)
国王に考えられる事態としては、ナユリエ神が弱っている、もしくは魔神が強大になっているかのどちらかだ。
しかし神が弱っているのであれば神聖魔法の効力は弱まる筈。そういった情報は入ってきていない。
つまり消去法で行けば、魔神が強大になっているという事になる……。となれば、各所で悪魔が出没したりする可能性も考えられる。
「宰相、各地の防備を徹底しておけ。これから神託が頼りにならない時代が来るやもしれぬ」
「……は」
神に対する不敬もいいところではあるが、そうも言っていられない。実際に今回の事件は神託が降りていなかったのだ。
とはいえ、ルネキア王国は勇者の一派を引き入れる事に成功している。ならば、他国よりは安全か。
(貴族連中は過剰報酬だと言ったが、やはり見込みは間違っていなかったように思うな……)
国王の未来予測が正しいか正しくないか、それは時が経ってみなければ分からない。
しかし、勇者の一派を貴族にするという判断は間違っていないように感じられた。
(例の件も、やはり進めるべきだな……)
この世で最も危険な場所に行くとなった時、誰を護衛にするか。そう聞かれれば、間違いなく彼ら九人の内誰かの名前が挙がるであろう。国王はそれぐらい彼らを評価している。
国王は深呼吸をして椅子に座り直し、積み上がった書類に向き直った。
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