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48 王城(2)

 短めです。

 国王主催の茶会が行われるまでの間、俺達は家名決めや家紋決めなどに追われる事になった。

 正直言って礼儀作法なんかを先に学びたいのだが、家名などを先に決めないといけないらしい。解せぬ。


 そんな訳で、まず初めに家名を決める事に。

 ネーミングセンスが壊滅的な俺は、ここで大きな苦労を味わう事になった。


「まあ、すぐ思い付くよね」


 ラルクてめえ、煽ってるのかそれは?煽りと受け取ってもいいのか?


 そんなラルクは、さっさと「グラジオラス」と家名を決定していた。今日から彼はラルク・グラジオラスとなる訳だ。


 他の『高級馬車』の面々も、予め考えてあったかのようなスピードだった。


 ヴァーラインは「スクートゥム」、フーガは「シカリウス」、ローナは「トナーレ」。


 いやいや、君達早くない!?と思っていたら、こちら側でも同じような事が起きていた。


 メリーは「シビル」、リナは「アニマ」。リナの場合、「エルフィー」というエルフである事を表す名前が元々あるので、リナ・アニマ・エルフィーと名乗る事になるらしい。


「……考えるの早くないすか?」


 小声で隣に座るリナに問い掛けると、呆れ混じりの溜め息が返された。


「アンタねぇ……あの流れで叙爵されない方がおかしいってもんでしょ。あっちもそれが分かってたから決めるのが早いのよ」


「あ、ハイ……」


 俺が馬鹿だっただけらしい。なんか悲しくなってきた。

 そういう事らしいので、決まっていないのは俺とリーニャだけになった。


「もう諦めた。ハリーと同じにする」


 考える事に疲れたリーニャがそんな事を言う。


「えっ、ちょっとそれはズルいわよ!」


「何がだよ……」


「なんなら、ハリーも私と同じにする?」


「ちょっとちょっとリナまでズルいわよ!」


 あの、国王も居るんでやめてくれませんかね……。

 ほら、茶会用のスーツ届けに来てくれたメイドさんが苦笑してるよ……?


 この口論をさっさと止めるべく、俺は頭にパッと思い浮かんだ、「フェッルム」を家名にする事にした。ラテン語で「鉄」とかそんな意味だった気がする。元素記号の由来だったかな?

 俺がペンでサラサラと書いていくと、リーニャが俺の書いた字を真似して書く。

 というかそもそも、リーニャは文字が書けないのにどうするつもりだったのだろうか……?まあ今は模倣するだけだからできるみたいだが。


 それを見てメリーとリナが「あーっ!」と声を上げるが、素早く全員分の紙を回収して国王に手渡す。抗議の時間は与えないのが良いのだ。


 次に家紋を決める。

 これには紋章官と呼ばれる職業の人達が呼ばれた。

 彼らは現在存在するこの国の貴族の家紋や、近隣諸国の貴族の家紋を完璧に覚えているらしい。記憶力凄い。


 彼らに紋章の図案を言語化して説明すれば、デザインを代行してくれるらしい。もちろん、自分で描きたい者は描いてもいいそうだ。

 自分で描く事を望んだのは、なんとリナだけだった。


 それぞれの家紋のデザインを紹介しておこう。


 グラジオラス家はラルクの持つ魔剣をそのまま描いたような感じだ。ラルクは自身の剣に愛着が湧いているのだろう。何度も細かい違いを指摘して紋章官を困らせていた。

 スクートゥム家はヴァーラインの持つタワーシールドだ。こちらもラルクと同じで、担当した紋章官は終始胃の痛そうな顔をしていた。

 シカリウス家は短剣を2つ描いたものだ。フーガは短剣を一本しか使わないので、自身の装備品をイメージした訳では無いのだろう。実際、先の2人のように細かい注文を付けたりする事は無かった。

 トナーレ家は杖の周りに稲妻のマークを描いたものだ。ローナの魔法属性である雷をイメージしたのだろう。


 シビル家は占い師が使う水晶玉のような感じだ。最初こそナユリエ教で使う紋章を使おうとして、紋章官に怒られていた。神が好きなのは分かるが、それを家紋にまで持ち込んじゃいかんでしょう……。

 アニマ家はリナの最も好む使い魔精霊の神狼(フェンリル)だ。魔王戦を経てレベルアップした事によりようやく使えるようになったそうなのだが、見た目が結構神々しいというか、恐ろしいので屋敷の中で呼び出すのはやめて欲しい。特徴を良く捉えて描いていて、絵が上手いのが伝わってきた。

 俺とリーニャのフェッルム家は、よくある鉄鋼のイラストを採用した。変に凝らせるよりも、シンプルなのが一番なのさ。


 全員が家紋を決め終わった頃には昼になっていたので、そのまま王城で昼食を頂く事になった。国王と同じ料理を食べさせて貰えたのはまあいいとして、当たり前のように王妃と第五王女、第六王子が同席するのはやめて欲しかった。緊張で折角の料理をまともに味わえた気がしない。

 ちなみに、第五王女と第六王子の2人はかなり幼く、たどたどしく貴族の挨拶をしているのが妙に可愛かった。リーニャはモフモフで良いが言動にはあまり可愛げが無いので、ああいう子供は可愛くて癒される。


 昼食後は、早速用意された貴族用の身分証明である指輪を貰った。魔法用の触媒としても使えるらしく、性能は市販品とは一線を画すらしい。

 見た目もかなり美しく、魔石に綺麗に家紋が彫られていた。どういう技術が凄い気になる。


「あぁ、リルちゃんをずっと見ていられる……」


 リナは指輪に嵌まった魔石を撫でながらそんな事を呟いていた。うーん、目がちょっと怖い。


 その後、公の場で着る正装を貰った。家名決めの最中に茶会用のスーツは貰っていたので、取り敢えずこれで恥を掻く事は無い筈だ。

 ん、待てよ……?こういうのは大抵仕立ての筈なのに、何故当たり前のように用意されているんだ?


「メイドさん、これって予め何着か用意されている物なんですか?」


「……?いえ、仕立て品の筈ですけど?」


「……あ、ハイ……」


 何故こちらのサイズを把握されているのか。恐ろしい。

 いや、あれか?鑑定系のスキルで確か分かるんだったか。バリバリ個人情報覗いてんじゃねえか!人権はどうなってるんだ人権は!

 あ、ここ異世界か。


 そんな風に恐怖を感じたりしつつ、様々な準備を整えている間に、あっという間に茶会の時間となった。

 少しでも面白いな、と思って頂けたら、感想・評価・ブックマーク等して下さると非常に嬉しいです!今後の活動のモチベーションになります!

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