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47 王城(1)

 黒の王との戦いから数日後。

 俺達の屋敷に、王城からの役人が来ていた。


「勇者様ご一行に王城でのパーティーの招待が来ているのですが……勇者様はおられないのですか?」


 玄関の扉を開けて開口一番そう言われた。


「居ません」


「そうですか……では、従者の方々だけでも問題ありませんので、準備ができましたら表に来てください」


「分かりました」


 ここでアリスが出て行くと今度は何故(ハリー)が居ない?ってなっちゃうから、仕方が無い。

 そう、仕方が無いのだ。





 寝ぼけ眼のリーニャを叩き起こし、朝食の準備を始めようとしていたリナを慌てて止め、茶を啜っていたメリーからカップを没収した俺は、身なりを整えて表に出た。

 リーニャとメリーから抗議の視線が来るが、全て無視だ。王城でのパーティーなんて、遅れたりしたら俺は代表者として死ぬぞ。


 最初に俺と話した役人が御者も兼業するようで、彼は俺達に一礼した後御者台に座った。

 馬車はよく貴族が乗るイメージのある箱馬車だ。扉を開けて中に座ると、間も無く馬車が動き出す。


「……これ、全然揺れないわね」


 馬車が走り始めてから少しして、リナがそんな事を言った。確かに言われてみれば、全く揺れを感じない。いつも青い顔をしているリナが平気そうなのはそれが理由か。


「本当だな。サスは何を使ってるんだろう……?」


「車体がほんの少しだけ浮いているんですよ。この馬車は魔法道具(マジック・アイテム)なんです」


「へぇ~……」


 窓越しに問いの答えが返ってきた。

 なるほど、流石ファンタジー。不都合な部分は全て魔法で処理できる訳か。


 現代日本にも欲しいね、魔法。





 王城の門前に辿り着くと、丁度同じタイミングで馬車から降りる人物が居た。


「やあやあハリー君達!数日ぶりだね!」


「おはよう……朝から元気だな」


 他でもない『高級馬車』の4人だ。まあ、今回呼ばれた理由からすれば当然ではある。


「あれ、勇者様は()ねえのか?」


「ああ、居ないよ」


「そうか……」


 勇者様(アリス)が居ないと聞いたヴァーラインは、表情を曇らせる。

 ――一体何故?


 俺の内心が顔に出ていたのか、何も言っていないのにラルクが疑問に答える。


「どうやらヴァーラインは、勇者様に恋をしてしまったみたいでねぇ」


「そ、そんなんじゃねぇ!ただ……その……礼を言いてえだけだ、礼を!!そんだけだからな!!!」


 顔を赤くしながら照れ隠しに叫ぶ巨漢。

 対する俺は、その言葉を聞いて何とも言えない表情になっていた。


「うん……まあ、その……頑張れよ」


 照れているヴァーラインの肩を叩いて励ましておく。

 彼の想いは永久に成就する事は無いだろう……アリス()の心は男なのだから。


「皆様方、ご歓談の最中ですが、そろそろよろしいでしょうか……?」


「ああ、すみません!すぐ行きます!」


 俺達を呼び出した役人からお声が掛かったので、謝りながら会話を中断する。


 王城、緊張するね。





「君達、魔王を討伐してくれて、本当に感謝する!」


「「「「「…………」」」」」


 王城に入って来て、とある部屋に案内されて早々、今俺達は一国の王が頭を下げる図を見せられている。

 誰か何か言ってくれないかな……それがこの場に集まった国王以外の全員の胸中で呟かれた言葉だった。


「――いっ」


 気まずい沈黙が流れる中、ラルクとメリーが同時に俺の背中を小突いた。


 ――お前ら、マジで後で覚えとけ?


 吐き出そうになった溜め息を飲み込み、緊張しながらも言葉を絞り出す。


「えーと……頭を上げて下さい。俺達は当然の事をしただけで……」


「その当然の事で、多くの民と国が救われたのだ。感謝せずにはいられない」


「…………」


 おいこの人止まんねえぞ、どうするんだこれ。


 うん、なんかこう……漫画とかでこういう場面で冷や汗流す気持ちが分かってきた。こういうところ他のお偉いさんにでも見られたらどうするんだろうね?多分俺の背中今冷や汗凄いんだろうな。怖いよ、この状況。怖くなってきたよ。


 幸いにして一分程で低頭は終わり、国王は顔を上げた。

 部屋入ってからずっとこれだったから、初めてお顔が見れた。うん、これマジ。

 少しだけ生えた髭が丁寧に整えられた、貫禄ある顔だ。ザ・国王って感じ。いやどんな感じだ?


 心の中でのセルフツッコミを中断し、促されるままソファーに座る。

 滅茶苦茶柔らかい。これうちにも欲しいね。


「改めて、A級冒険者パーティー『高級馬車』、そして勇者様の従者様方、本っ当に感謝する!褒賞に一人当たり金貨一千枚と、貴族位を用意している!」


「い、いやあの……」


「分かっている、魔王を討伐したには少ないだろう?申し訳無いが、高慢ちきな貴族連中が納得する中で最大限の待遇なのだ。無論勲章も与える」


「そうでは無くてですね……」


 金貨一千枚って何だよ、とそう叫んでやりたかった。俺達の住んでいる屋敷が十軒は買える計算だ。

 それに貴族位も要らない……事は無いが、面倒事は勘弁してもらいたい。俺は可能なら働きたくは無いのだ!


 どう断ろうか、と思案していると、ラルクから囁きが。


「素直に受け取るのが良いよ。あっちとしてもメンツとか色々あるから、むしろ受け取ってくれないと困るのさ」


 てめぇマジでさっきから代表者扱いしやがって、一応お前もそっちのリーダーだろうが!


「わ、分かりました。ありがたく受け取らせて頂きます」


「それで、だ。貴族位に関してなのだが、名誉子爵位を与えるか、永代男爵位を与えるか、好きな方を選ばせるという事になっておる。時間は与える故、よく考えて選ぶが良い」


 名誉貴族が一代限りの貴族、永代貴族が世襲制の貴族……だった筈だ。

 どちらかというと、名誉貴族の方が面倒事に発展し無さそうだ。大貴族とかは血筋を重んじるイメージがあるから、いきなり平民が永代貴族にのし上がるのは好まれない気がする。


 少しだけ悩んだ後、名誉子爵位を貰う事にした。

 俺の次に早かったのがリナで、こちらも名誉子爵。後で理由を聞いたところ、やはり同じく面倒事をなるべく回避する為だった。

 次がフーガとローナ、同タイミングで永代男爵を選択した。

 そのままメリーとリーニャとラルクは名誉子爵を選択、ヴァーラインが永代男爵を選んだ。


「よし。……本来であれば、叙爵や叙勲は10月に貴族を集めてまとめて行われるのだが、今回は例外扱いとして、この場で授ける事となった」


 まあ、わざわざ俺達の為だけに各地から貴族を呼び集めるって言うのもアレなのか。

 玉座の間使わなくていいのかな、とかも思うけど……。


 そんなこんなで、国王から勲章やらなんやらを受け取る。

 貴族用の身分証は後日渡されるそうだ。家名や家紋などを決める必要があるとの事。

 夕方頃行われる茶会と夜に行われる晩餐会までは時間があるので、その間にその辺りの手続きをする事になるらしい。


 家名、か。

 前世の苗字を使う気にはなれないし、何か考えなければ。

 少しでも面白いな、と思って頂けたら、感想・評価・ブックマーク等して下さると非常に嬉しいです!今後の活動のモチベーションになります!

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