46 騒がしい夕食
「へぇ〜、結構良い屋敷に住んでるんだね」
「でっけぇな!」
ラルクは感心したように、ヴァーラインははしゃぐ子供のようにそれぞれの感想を言う。
他の2人は無口なのか、先程からあまり喋っていない。
玄関の扉を開けた後、明かりを点けてラルク達をリビングに案内する。
「おお、広いな!」
「まあ適当に座っててくれ」
「はーい!」
おいメリー、何一番元気良く返事してるんだ。君は招かれる側ではなくて招く側だろう?
はぁ……と呆れながら、リナがサッと淹れてくれた茶を運ぶ。
「あ、料理は私が一人でやるから良いわよ」
「え、でも……」
「良いわよ、ハリーは戦いで疲れてるでしょ?はい、コーヒーでも飲んでなさい」
そう言われ、コーヒーを握らされてキッチンから追い出されてしまった。
手伝いで機嫌を取るつもりだったのだが、まあ本人がいいなら良いか?
――うーん……まあ、良いか。
少し悩んだ後、コーヒーを啜ってからラルク達の座っているソファーに座る。
「へえ、コーヒーかい。珍しい物飲むんだね」
「知ってるんだな」
「まあね。これでもA級冒険者だよ?」
確かに長い間冒険者をやっていれば、色んな事にも詳しくなるか。
そうだ、冒険者と言えば……。
「ずっと気になってたんだけどさ、パーティー名の由来って何なの?」
「ああ、それね。ヴァーラインが考えたんだけど……」
「馬車ってのは4つ車輪が無えと動かねえだろ?俺らも4人居ないと動かねえ!っつうのを表現したかった訳よ」
「はあ、なるほど……」
ネーミングセンスはともかく、理由は割とちゃんとしたものだったようだ。
「おっと、そういえば。まだちゃんと自己紹介してなかったね」
「あー、まあ言われてみればそうだな……」
戦闘中でバタバタしていたから、確かにちゃんと自己紹介はしていないか。
「改めまして。A級パーティー『高級馬車』リーダーのラルク、職業は剣士」
「俺ぁヴァーライン!職業はタンクだ!」
「フーガだ。斥候兼アサシンだ」
「……ラルローナ。ローナって呼んで。魔法使い」
フーガとローナは口数が少ないのか、必要最小限しか喋らなかった。
コーヒーカップを机に置いて、こちらも自己紹介を返す。
「えー、パーティーは組んでないけど、一応リーダー的なのをやってる。D級のハリーだ。剣士をやってる」
「C級巫女のメリーです。副リーダーをしてます!」
――いつから君は副リーダーになったんだい?
という言葉が出そうになったが、客人達の手前グッと堪える。
「……ん゛ん゛、それで、今キッチンで料理を作ってるのがC級のリナだ。魔法使い兼斥候、だな。で、今ここには居ないんだけど寝てる奴がもう一人――」
「――えっ」
リーニャの事を説明しようとしたところで、示し合わせたようなタイミングでリーニャが入ってきた。
当のリーニャは、リビングに見知らぬ人達が居る恐怖からか固まってしまった。
「えー、アイツがもう一人のリーニャ。獣人で人見知りだけど、仲良くしてやってくれると嬉しい」
「ああ、そんなに心配しなくても、僕らは獣人は嫌いじゃないよ」
「獣人……!」
この国は獣人差別主義者が多いけどラルク達はどうだろうか、と思っていたが杞憂だったみたいだ。
ローナに至ってはリーニャを見て何故か目を輝かせている。アレか、猫好きみたいな感じか?リーニャさえ良ければ後でモフらせてあげよう。あの毛並みは素晴らしいからな。
◇
人見知りで怯えるリーニャをどうにか宥めた後、リナによって料理が供された。
料理自体は結構こちらの世界でポピュラーな物だが、リナの味付けは割と日本風の味付けなので、ラルク達は少し驚きつつも美味しいと言っていた。
「ワインもあるけど、飲む?」
「僕はいいかな」
「俺は貰うぜ!」
「「…………」」
フーガとローナは無言でフルフルと首を振ったので、リナはヴァーラインにだけワインを注ぐ。
ちなみにローラの膝の上には、ぐったりとしたリーニャが寝かされている。さっきまで散々体中を撫で回されていたので、疲れたのだろう。
「おっ、美味えな!」
「……ちょっと気になってきたね。僕にもくれるかい?」
「ええ、もちろん」
ヴァーラインの飲みっぷりを見て、ラルクもワインを飲みたくなったようだ。
リナにワインを注いでもらい、「うん、美味しいね!」と言っている。
「そういえば、ハリー君の嫁は誰なんだい?」
「……は?お前まさかもう酔ってるのか?」
危うくコーヒーを吹き出すところだった。
コイツは急に何を言い始めるんだ?
「いやあ、まだ酔ってないよ。それで、誰なんだい?まさか全員とか?」
「……全員違うわ」
「あっ、そうなのかい?口説くのを我慢してて損したよ」
「……は?」
一体どういう事だ、と他の3人に目を向けてみる。
ヴァーラインは会話に興味が無いのかワインをグビグビ飲んでいるし、フーガは何も話す気が無いようだ。消去法でリーニャに膝枕をしているローナが話してくれた。
「ラルクはナンパ師。元々私もナンパされて入ったようなもの」
「心外だなあ。今は迫ったりしていないだろう?」
「当然。今同じ事をされたら二度と使えなくする」
「「……怖」」
対象はラルクの筈なのに、俺までヒュンとしてしまった。
「うんと、ともかくお前はコイツらを口説きたいと?」
「もちろんさ!そんな綺麗な女性が2人も居て、口説かない方が不自然じゃないかい?」
「……その感性が不自然」
「ローナの言う通りだな。お前の頭が今この場において一番不自然だ」
「……ちょっと、酷い言われようじゃないかい?」
ラルクの言葉を聞いて、メリーとリナは少し体を動かして距離を取り始めている。
「あっ、私達意中の殿方が居ますので。ねえ、リナ?」
「え、ええ」
「だ、そうだ。俺は関与しないから勝手にやってくれ」
「本当かい!?ねえねえ――」
早速口説き始めたラルクを見て溜め息を吐きながら、コーヒーを啜る。
メリーとリナから強い抗議の視線を感じるが、無視だ無視。
「――んっ……」
騒がしくなってきた事で意識が覚醒したのか、リーニャが少し声を漏らした。
それを見てローナが聖母のような顔をしてリーニャの頭を撫でる。うん、こっちが平和だからこっちに居ようかな。ナンパ師?そんな人は知らない。
そんな俺を見て、ローナが一言呟いた。
「ハリーは分からず屋なんだね」
「……何故に?」
「そういうところだよ」
ローナからは呆れ、メリーとリナからは抗議の視線を向けられる。
女性陣の視線が痛いです。場の空気を読めないラルクでなく何故俺なんだ!
そんな風にして、夜は少し姦しく過ぎ去っていった。
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