45 後始末
短めです。
エクスカリバーとデュランダルに付着した黒い血を軽く払い、鞘に仕舞う。
魔王に進化しても死後は変わらないようで、王は他の悪魔達と同じく黒い粒子になって風に飛ばされていった。
弐、参、肆も同じようにして風化していく。
まあ、ユニークスキルでも無ければ蘇生できない筈だし、わざわざ集める必要も無いだろう。
風に紛れて飛んでいった粒子達から意識を外し、次いで付近の状況を見る。
悲惨な状況は相変わらずだ。ほとんどが即死だったようで、生き残っている者は極僅かな神官達と俺達、そして『高級馬車』の4人だ。神官達は衝撃波のショックで失神、『高級馬車』の方はメリーの治療を受けているようだ。
誰もこちらを見ていないようだし、一度場を離れて聖剣達を仕舞ってから出直すとしよう。
視線が向いていない事を再確認した俺は、激闘の跡地から離れた。
◇
気を利かせてくれたリナが来てくれた事で、鞄に装備を仕舞う事ができた。
俺は代わりに仕舞っていた灰輝銀合金の剣を腰に差し、リナと一緒に現場に戻る。
「なんだアレ、役人……?」
「っぽいわね」
戦闘終了からそれなりに時間が経過したからか、生存者の付近に役人が来ていた。
面倒臭そうだし、離れておこう……。
「あっ、ハリー君!こっちこっちー!」
ラルクぅぅぅ!!お前空気読めよ!!
ラルクのせいで役人に目を付けられた俺とリナは、事情聴取に加わる事となった。
「彼らの証言に間違いが無いか、確認させてもらうぞ。今から私が行う質問に、簡潔に事実を答えてくれ」
「分かりました」
そう言う役人は「看破」というスキルを所持していた。字面とやっている事からして、嘘でも吐いたらバレるんだろうなあ。
「まず最初に、ここに上級悪魔が2体出現した。それは間違い無いな?」
「はい、間違いありません」
「そして、君とあちらの2人が協力してその内一体を討伐した。間違い無いな?」
「はい、間違いありません」
「その後残った上級悪魔が魔王へと変貌、君がそれを確認した。間違い無いな?」
「はい、間違いありません」
「その際に見た称号やスキルなど、覚えている範囲で教えてくれ」
「はい。まずスキルは――」
長く見た訳では無いので覚えている情報は少ないが、記憶していたスキルと2つのユニークスキル、そして称号は伝えた。
役人は手元の紙に俺の言った事をメモすると、質問を再開する。
「えー、更に魔王が上級悪魔3体を召喚した。間違い無いな?」
「はい、間違いありません」
「君達3人がそれぞれの上級悪魔を討伐した。間違い無いな?」
「はい、間違いありません」
「そしてその後、突如として現れた勇者が魔王を討伐した。間違い無いな?」
「はい、間違いありません」
「勇者の行方は分かるか?また、どこから来たかも分かるか?」
――ヤバい質問が来た。
「……いやー、ひょっとするとまだここに居たりするんじゃないですかね?そう時間は経っていませんし……」
「そうか。分かった、ありがとう」
ほっ。
直接的に「分からない」と表現しなかったからか、何とか耐える事ができた。
「それでは、次に君に質問なんだが――」
俺だけじゃないの!?
役人の矛先が、今度は俺の隣に立つリナの方に向く。
「――勇者の装備が入った鞄――そう、これだ。これを持ってきたそうだな?どこから持ってきたんだ?」
「えー、と……私の住んでいる屋敷です」
「ほう……君と勇者の関係は?」
「……主と従者?ですかね」
「なるほど、なるほど……その屋敷の持ち主は誰だ?」
「えー……勇者様です」
これはセーフみたいだ。まあ、ハリーも勇者だしな。
記録を終えた役人が最後に、とばかりに質問をする。
「君達は随分と仲が良さそうに見えるが……一緒の屋敷に住んでいたりするのかね?」
「……それ、訊く必要あるやつですかねぇ?」
「ああいや、そうだな、すまない。では質問を変えよう。君達の関係は?」
「仲間ですね」
「ほう?なるほど、了解した……。後日王城から役人が君達の屋敷に向かう筈だ。名前や住所など教えてくれ」
一通りの質問を終え、俺達の住所を再確認した後、役人は引き上げていった。引き上げていった、と言っても本拠地である王城はすぐそこなのだが。
役人が帰ったのを見届けたラルク達がこちらに話し掛けてきた。
「いやー、質問責めで大変だったねぇ」
「おい元凶が何言ってやがる」
「あはは、まあ後から嗅ぎ回られるよりかはマシじゃないかな?」
「……確かに」
「そうだろう?」
まあ、面倒事を先に消化できたという事にしておこう。
コイツが巻き込みたかっただけという線も捨てがたいが、今は疲れているので不毛な言い争いはあまりしたくない。
「で、何か用か?何も無いなら早く帰って寝たいんだが……」
「良ければお近付きの印に夕食でもどうかな~、と思ったんだけど」
「あー、言われてみればそんな時間か……」
激闘で意識が回っていなかったが、空を見上げてみれば少し赤みがかっている。確かにそろそろ夕食の時間だ。
「場所の当てはあったりするのか?」
「いや、特には」
「そうか……じゃあ、うちの屋敷に来るか?」
「おお、いいのかい?じゃあお邪魔しようかな」
「おう。……メリーとリナもそれでいいか?」
念の為2人にも確認を取ったが、幸い頷いてくれた。
リナの方は実に微妙な顔をしていたが。
……料理の手伝いもして、それとは別で何か機嫌を取る手段を考えておこう。
「それじゃ、行くか」
ラルク達を屋敷に案内するべく歩き出す。
……あれ、そういえばなんか一人足りないような……?
「なあ、リーニャはどうしたんだ?」
隣に立つリナに囁きかけると、両手を広げて頭を振られた。
「寝てるわ。叩き起こそうとしたんだけど、全然起きないから時間も無いし置いてきた」
「ああ、そう……」
まあ、リーニャが居てもあまり役には立て無さそうな状況だったし、気にしない事にしておこう。
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