43 王城前の騒乱(2)
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「……今、魔王って言ったかい?」
「……ああ、今魔王って言った」
「……それ、本当?」
「……ああ、本当だ」
非常にまずい。
レベルは75まで上がっているし、スキルも増えているし、何なら名前も『黒の壱』だったのが『黒の王』に変わってしまっている。
おまけに、「眷属召喚」「死者蘇生」の2つのユニークスキルまで増えている。
「まずいねぇ。最近現れたっていう勇者様は消息不明だしね……」
「取り敢えず、やれるとこまでやってみるしかねえだろ!」
「ヴァーラインの言う通りだな。俺は殺す気で行くぞ」
「ま、やるっきゃないか。ローナ!サポート頼むよー!」
『高級馬車』の3人は早々に会話を切り上げ、壱――ではなく王に向かって行った。
ラルクの呼び掛けに合わせて、神官・魔法使いの集団の中から、首にマフラーを巻いて口元を隠した小柄な女性が出てきた。あの人がラルクが呼んでいたローナだろう。
ローナは長杖を振るって詠唱を始めた。
「魔王となった我に向かってくるか、冒険者よ!」
「そうだぜ!テメェをぶっ殺してやるよ!」
王の言葉にヴァーラインが叫びを返す。
「挑発」スキルでも使っていたのか、王の腕が真っ直ぐにヴァーラインのタワーシールドに向かって行く。
ドゴォーン!とダイナマイトでも爆発したかのような轟音が響く。
「っつぅ……魔王ってのは思ったより大した事ねえんだな!」
衝撃により数歩分後退させられたヴァーラインが強がりを吐く。
王がヴァーラインを攻撃している隙に、ラルクとフーガが動いた。
ラルクは攻撃に使っていない左腕を、フーガは再び透明化して背後に回っている。
――さっきまでフーガが見えなかったのに、今は見えるのは何故だろう?
いや、そんな疑問は置いておいて。
王は幾分も焦った様子を見せず、落ち着いた動作でそれぞれの攻撃をいなす。
「重いねぇ……鋼鉄にでも打ち込んでるみたいだよ」
「全くだ。反応速度も桁違いだな」
2人はそれぞれの所感を呟く。
「眼光炯々」を併用しながら一連の流れを見た限り、俺達4人が連携して戦ってギリギリ互角といったところだ。勝ち目はかなり薄い。
とはいえ、それは俺が今の状態の場合の話だ。聖装備一式を身に纏えば、きっと勝利は見える筈だ。
ならば、取り敢えずの目標はリナが来るまで耐える事だ。
俺も戦いに加わろうと、観察を止め走り出したところで、俺と『高級馬車』の3人の体が黄色に輝き始めた。
「うおっ……!体が軽い……?」
「ローナの雷速足さ。もう少しで他の強化魔法も来ると思うよ」
俺の疑問の呟きに、いつの間にか傍に立っていたラルクが現象の正体を教えてくれた。
なるほど、サポートを頼むと言っていたのはこういう事か。
「ふん、強化魔法か。つまらぬ小細工を使う。ならばこちらも趣向を変えよう」
王がそう言うとともに指を鳴らす。
すると、王の足元に黒い粒子の山が3つ生まれた。
「――まさかッ!」
その正体とこれから起こる事象を悟った俺は、それを止めるべく走り出す。
「遅いわ!『死者蘇生』!」
王が広げた両手から、紫色の光が迸る。光は黒い粒子を包み込んでいき、やがて粒子は人型――正確には悪魔型に変貌を遂げていく。
「魔神様の眷属黒の弐、ここに復活!」
「魔神様の眷属黒の参、ここに回生!」
「魔神様の眷属黒の肆、ここに再生!」
聞き覚えしかない登場台詞とともに、上級悪魔達が現れる。
「驚いたねぇ……上級悪魔が3体か……」
背後からラルクのそんな呟きが聞こえてくる。
俺は最も近くにいた肆に斬りかかる。肆は復活したばかりだというのに素早く反応し、魔力を込めた腕で俺の攻撃を迎撃した。
「チッ、復活後の弱体化も無しか」
ゲームなんかだとこういうのは大体復活後は何かしら弱くなっている筈だが、「眼光炯々」で覗いたステータスは以前見たソレと同じだ。
他のパターンで言うと、術者が代償を払っているという可能性もある――が、王は特に弱ってもいないし、疲労を感じている様子も無い。
王の保有する器次第ではあるが、回数制限があるという希望的観測はしない方が良さそうだ。
そこまで思考をした後、鍔迫り合い中の肆から一度距離を取る。
「4対4とはいえ、個々の戦力差はあっちが上だねぇ……これは困ったね」
「悠長な事を言っている場合じゃないぞ……。ヴァーライン、魔王の注意を買って時間を稼いでくれ。ラルクとハリーと俺で悪魔共を殺る」
「おっしゃあ!任せとけ!」
フーガの指示に従って、ヴァーラインが魔王のターゲットを買うべくタワーシールドを持って走る。
残った俺達3人は顔を見合わせると、それぞれの戦う相手を無意識下で理解し合った。
俺が弐の相手、ラルクが参の相手、フーガが肆の相手だ。
悪魔達も俺達の狙う先を理解したのか、少し立ち位置を変えた。これでそれぞれの相手が正面にいる形となる。
そして、3人と3体は戦闘を開始する。
ガキン!とそれぞれの武器と腕が衝突した音が、3つ分辺りに響き渡る。最初こそ同じタイミングで鳴ったものの、その後は不規則なリズムを刻んでいく。
「死から蘇った気分ってのはどんなんなんだ?」
情報収集をしようと、斬り結びながら弐に話しかける。
これがお堅そうな雰囲気を醸し出している肆なら応じなかっただろうが、弐は話に乗ってくれるタイプのようだ。
「幸福ですね。こうしてまた主君のお役に立てるのですから」
「主君、ね。それは黒の王を言ってるのか?」
「ええ、もちろんです。あの方が我らが仕える相手です」
――毎度登場する時には『魔神様の眷属』と言っているのにか?
鍔迫り合いをしながらそう言おうとした時、俺の剣が黄色く光った。俺の体を包んでいるものと同質のそれだ。
そして、光る俺の剣は先程まで斬る事が叶わなかった弐の腕をいとも容易く斬り飛ばした。
「強化魔法ですか――」
弐の呟きは、最後まで紡がれる事は無かった。
次の瞬間には、俺の剣が心臓に突き刺さっていたからだ。
そしてそのまま、再び黒い粒子へと変質していった。
若干脆いような気がしなくも無い……気のせいか?復活後の弱体化という可能性も――。
思考の海に潜っていきそうになった頭を振って、未だ戦っている筈のラルク達の方を見やる。
ラルクと参の戦いは、強化魔法のお陰かラルク有利で進行しているようだ。
対するフーガ対肆の方は、僅かにフーガが押されているようだ。アサシンというスキル構成型、正面戦闘は苦手なのだろう。
ならば、俺はフーガの方に参戦するべきか。
俺がそう思って一歩を踏み出そうとしたその時、待ちに待った叫び声が戦場に響き渡った。
「ハリー!!」
他でもないリナの声だ。
反射的に振り向くと、背中にはいつもの聖装備入り鞄を抱えていた。野次馬が居る可能性を考慮して、鞄に入った状態で持ってきたのだろう。大量にいた騎士達は死んでしまったし、神官達も6割死亡、3割は行動不能状態だから気にする者は『高級馬車』ぐらいだが、判断としては間違っていない。
リナから視線を前方に戻し、肆と戦うフーガを見る。
一瞬の内に判断を終わらせた俺は、右手に握る剣で『魔力撃』を発動する。
発動したのを感じた直後、紫色の光が宿る剣を肆に向けて一直線にぶん投げる。フーガに注意のほとんどを向けていたであろう肆は、超高速で飛来してくる剣に気付く事無く、側頭部から黒色の血を吹き出す。
それを最後まで見届ける事無く、俺はすぐさまリナの方へと走った。
――さあ、久々のアリスの出番だ。
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