SS 大掃除の裏で
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短めです。
「――邪魔よ。どっか行ってなさい」
リナによってポン、と私は屋敷から追い出された。
もちろん抵抗はしたけど、後衛の私がリナに力で勝てる訳が無い。これって理不尽よね!?
ガンガン、と屋敷の門を叩いてみるけど、ハリーもリナも一向に開けてくれない。私の事嫌いになっちゃったのかな……。
そうやって門をガンガン叩いていると、段々と周囲の視線が気になってきた。
傍から見れば、家から追い出された哀れな出来損ない貴族令嬢だ。うわあ、やめて、私をそんな捨て猫を見るような目で見ないでーー!!
◇
「はぁ……」
諦めた私は、貴族街から離れてトボトボ歩く。
落ち込んだ時は、お酒を飲むか神殿に行くかのどちらかだ。今はまだお酒を飲むには早い時間だし、神殿に行こうかな。
神殿に行けば悩みなんかサッパリ忘れていられる。よし、そうしよう。
幸いいつも身に着けている巫女服も杖も持ち合わせている。これで神殿で仕事ができる筈だ。
行き先を決めた私は、俯いていた頭を持ち上げて歩き出す。
私が沈鬱な表情で無くなったからか、少し歩けば若いチャラチャラした雰囲気の男2人に絡まれてしまった。
「なあなあそこの巫女さん!ちょっとその辺でお茶飲まねえか?」
「そうそう!ちょーっとお茶飲むだけだからさ!」
さあハリー、愛しの私が絡まれてるわよ!助けて!
あ、屋敷で掃除してるんだった……。
「すみません、私には意中の人が居るので」
だから帰れ、と遠回しに言うが、このチャラそうな男達には通じなかった。
「大丈夫大丈夫、ちょっとそこの店でお茶するだけだから!」
「なんなら恋愛相談だって乗るよ!」
「俺ら経験豊富だからさ、手取り足取り直接教えてあげるよ!」
「そうそう、直接体に教え込んであげるからさ!悩みが消えるついでに気持ち良くもなれるよ!」
何が経験豊富よ、そんな下手な誘い方で引っ掛かってくれるのは余程の考え無しか痴女のどっちかだけよ。
それにサラッと気色の悪い事を言うのやめて欲しいわね。鳥肌が立つわ。
おっと、いけないいけない。
私はお淑やかな巫女だ。丁寧に対応しなければ。
「いえ、ご心配には及びません。お話ししてくれてありがとうございました。急いでいるので、それでは」
二度も頭を下げたんだ、感謝して欲しいくらいね。
ん゛ん゛、私は巫女、私は巫女……。
「いやいやちょっと待ってよ、俺らにこんだけ時間使わせたんだからさ、ちょっとぐらい付き合ってくれたって良くない?」
「本当だよなぁ。用事あったってさあ、ちょっとくらいなら大丈夫だよね?」
「そうそっ!」
男達はそうやって私の手首を引っ掴む。
ハリーと一緒にレベルを上げたお陰か大して痛くないけど、普通の女の人なら痛みに呻いてるぐらいの強さね。そんなんだから彼女が居ないんじゃないかしら?
「やめてください。衛兵を呼びますよ?」
そう言いながら、私の手首を掴む男の手を引き剝がす。実戦経験も無い輩の腕を引っぺがすぐらい、後衛の私でも造作も無い事だ。
「あー、痛ってぇ!!今ので捻挫したかもしんねぇわ!」
「うーわ!!ちょっと誘ったくらいで手出すとか、女だからって舐めてんの?」
「あんた巫女だよな?ほらさっさと治せよ!」
必要最小限の力しか込めていないので怪我をする筈も無いのだが、男は何故か己の手首を摩っている。
その程度で怪我をするなら、多分街を歩かない方が良いわよ?
と言ってもいちいち口論をするのは面倒なので、サッと懐から短杖を取り出して、手早く回復魔法を詠唱する。
「はい、治しましたよ。それでは」
ひらひらと手を振って去ろうとしたのだが、何故か男達はまだ諦めるつもりが無いようだ。
「おいちょっと待てよ!詫び入れていけよ!」
「そうだぜ!怪我させといて『治しましたはいそれじゃあ』はおかしいだろ!」
怪我は一切させていないし、むしろ無駄な回復魔法を使わせたそちらが詫びを入れるべきなのだが……。
まあ、面倒だし言う通りにしてあげよう。
「お怪我をさせて申し訳ありませんでした。それでは失礼します」
私はそう言って丁寧に頭を下げる。
イライラしてきたが、ここは自制だ。冷静にならなければいけない。
「チッ、話が通じねえ女だな――やっちまおうぜ」
「うーい」
男達は一向に話が進まない事で苛立ちを募らせたのか、拳の関節を鳴らしながら近付いてくる。
沸点まで低いとか救いよう無いわね、私みたいにもっと我慢しなさいよ。
そんな思いを込めて、拳を振り抜いてきた男の鳩尾に杖を刺し込む。
「かはっ……!」
男は息を詰まらせながら、鳩尾を押さえてうずくまる。
結構痛いのよねー、これ。まあ自業自得だけど。
もう一人の男はまだ諦めないのか、ゆっくりと拳を振りかぶっている。二回は欠伸ができそうな速度だ。
キッ、と一瞬だけ男を睨む。「威嚇」スキルは持ってないけど、レベル差的にこれで充分な筈。
効果はてきめんだったのか、ほんの一瞬だけ投射された殺気によって、男は震えている。
「それでは、失礼しますね」
「「…………」」
男達から返事が返ってくる事は無かった。
いやー、女の敵を黙らせるっていう良い事をしたわ!これならリナも喜んで屋敷に入れてくれる筈ね!
……そう思ってもう一度屋敷の門を叩いたけど、リナは入れてくれなかった。
酷いわ!私泣いちゃいそう!




