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40 これから

 短めです。

 王城のとある一室。


「神託は降りていないのだな?」


「はい。王都以外の神託持ち神殿にも確認しましたが、どこの神殿も降りていないそうです」


「むぅ……」


 それは、国王と宰相の会話だった。


「現シャーマイン公爵が悪魔崇拝者であるというのは、誤情報だったという事か……?」


「ですが……シャーマイン市の治安は悪化しており、盗賊のみならず悪魔崇拝者も増加している傾向にあります。公爵が揉み消しているため表面には出ておりませんが、情報局が拾ってきています」


「ふむ……情報局の動員を増やせ。そして、数日後の王公会議の際はシャーマイン公爵の監視を厳重にせよ」


「はっ。通達しておきます」


 悪魔や魔王といった存在は神託によって情報がもたらされる。それによって騎士団などを動員し、被害を未然に防ぐ事ができるのだ。

 だが、今回の場合は……何の神託も降りていなかった。

 本来であれば、何の危機も訪れていないという幸運な事なのだろう。

 しかし、シャーマイン公爵に悪魔崇拝者の嫌疑が掛かっている現在、何の神託も降りていないという事は不自然なのだ。


 国王の指示によって、宰相はすぐに部屋を出て動き出す。


「新たに現れたとされた勇者も、消息が不明になっている……不吉な事が起こる前触れか?」


 国王は誰も居なくなった室内で、ポツリと呟いた。

 その勇者がお膝元に居る事には、気付いていないようだ。





「「終わったぁ……」」


 俺とリナは、リビング代わりに使う事になった部屋のソファーでぐったりと転がっていた。

 広い屋敷内をたった2人で掃除するという重労働をこなし、完全に疲労が溜まっていた。


「いや、本当、ありがとうございました……」


 ソファーの目の前では、メリーが平伏してお礼を言っていた。

 メリーは一度だけリナの目を掻い潜ってコッソリ侵入し、調理場の掃除をしようとして更に汚くしたので、現在正座させられている。

 俺とリナの怒号を浴びたメリーは、本当に申し訳無さそうにしている。


「礼なんていいから、なんかご飯買ってきて。私は今日は作れないわよ」


「はい!分かりました!」


 ようやく正座から解放されたメリーは、ハキハキ返事をするとそそくさとリビングを出て行った。


「あれ本当に反省しているんでしょうね……」


「さあ……」


 メリーの様子を見て、リナが愚痴る。


 ちなみにリーニャの方は、絶賛熟睡中である。こちらに関してはリナも怒る気力が失せているのか、叱りに行く様子は見受けられない。


「まあ、後は家具でも買ってくれば大体生活はできる筈……よね?」


「ああ、問題無い筈だ」


 一通りの掃除は済ませてあるし、使えなくなった家具は処分済みだ。

 必要な家具の数を調べて、それらを購入・設置すれば作業も終了する。それらは明日行えばいいだろう。


 まあともかく、今日は疲れた。





 翌日は、家具の購入と設置に奔走した。

 各々の好みや使いやすさなどもあったため、まず購入の段階でとても時間が掛かった。

 ギリギリ予算範囲内で収まったものの、なるべく早めに資金稼ぎの目途を立てなければいけなくなってしまった。


 その後一日掛けて設置を行った。

 当初は自分達の部屋は自分達で……と思っていたのだが、これまたメリーがやらかす事が判明し、再びメリーは出禁となった。

 リーニャの方は今度は眠気に負けなかったのか、ちゃんと真面目に設置をしていた。


 ちなみに、リナの部屋が日本の女子高生っぽくて入りづらくなっていたのは秘密だ。

 細部までこだわりたかったのか、「万物創造(クリエイト)」で壁紙やぬいぐるみなどを作らされた。

 リナ曰く、前世の自分の部屋を再現したかったそうだ。


「やっぱり、これが一番落ち着くのよね~」


 などと言ってベッドに腰掛けていたが、作業を手伝わされた俺は全く落ち着かなかった。

 前世では女子の自室など入る機会が無かったので、平然とした態度でいられる訳が無い。


 俺の内心の動揺がリナに伝わらなかったのは、レベル3まで上げた「表情管理」スキルのお陰かもしれない。





 更に翌日。

 夕食を終えた俺達は、リビングでリーニャのこれからについて話し合いをしていた。


「学校に通わせるにしても、獣人を受け入れてくれる学校なんてあるのかしら?」


「そこよねー。色々聞いた感じだと、どこも無理そうなんだけど……貴族学校なら行けるかも、って感じね。ただ、獣人が貴族になれる訳無い、って鼻で笑われちゃったけど」


「うーん……やっぱり学校に通わせるってなったら、ハリーを貴族に仕立て上げるしか無いか」


「そうね、取り敢えず王都に悪魔でも呼び込めばいいんじゃないかしら?」


「おい、何言ってるんだ」


「冗談よー、冗談」


 ほぼ全てメリーとリナで決めているのだが、時折不穏な発言が聞こえるのが怖い。

 冗談だよねー、と言って笑い合っているこの2人が怖い。いざとなったら本気で実行しそうである。その片方が巫女であるという事が信じられなくなってきた。


「えっ、てか獣人が通える学校は無いってマジ?」


「マジよ。神官とか治療に来た人達とかに訊いたけど、みんなそう言ってたわ」


「恐るべし獣人差別……」


 学校ぐらい通わせてやれよ、と切実に思う。


「ほんと、人間のやる事はどこの世界でも変わらないみたいね……」


「だなぁ……」


 リーニャを学校に通わせてやりたいが、かと言って貴族にはなりたくない。

 さて、どうしたものか……と首を捻っていると、ある人物の顔が思い浮かんだ。


「クェート市に学校って無いのか?」


 確かクェート伯爵領はこの国にしては珍しく獣人差別が広がっていない地域だ。あそこならば、リーニャも普通に暮らしていける筈。


「うーん……流石に無いんじゃないかしら?いっその事ハリーがイリーナさんと結婚して学校を作れば……」


「却下だ却下。そんなら普通に貴族になって貴族学校に通わせた方が早いだろ」


「確かに」


 結局妙案は思い付きそうになく、みんなして首を捻る羽目になった。

 まあそんなに焦る事でも無いし、ゆっくりと考えていこう。

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