39 大掃除
短めです。
盗賊を掃討し、生き残りを衛兵に突き出した後。
屋敷の大掃除が始まった。
掃除をするにあたって、まず最初に、どの部屋を誰が使うのか、という事を決める。
「はい!私2階の一番奥が良い!」
「却下。掃除したくないだけだろ」
「ちぇー」
メリーが元気良く綺麗な部屋を確保しようとするので、すぐさま止める。
「まあ発見者という事で俺が使おうかな」
「駄目よ!ズルだわ!」
掃除をしたくないのは皆同じ。
俺が使う、いや私が使う、いやいや私が使う……とそのやり取りを何回か繰り返したところで、リナによって一つの案が提示された。
「あそこは全員共同の寝室として使うって事にしない?寝る時以外は使わない感じで」
「……よし、もう面倒だからそれにしよう」
度重なる押し合いに嫌気が差した俺は、リナの提案に飛びついた。
メリーもリーニャも頷いているので、満場一致で提案は可決された。
「じゃあ俺は1階の地下室横を使おうかな」
「じゃあ私はその横ね」
「えー!!じゃあ私その横ー!」
「私ハリーの部屋が良い」
俺、リナ、メリーの順番で決めていったところで、リーニャがポツリと呟いた。
いくら子供とはいえ、自分の部屋は与えた方が良い気がする。
「リーニャ、自分の部屋はあった方が良い。その上で誰かの部屋に入り浸るならまあ……」
「……分かった。じゃあメリーの横にする」
そんな訳で、1階の右側はほとんど居住地帯となった。
元々使用人の部屋を想定されていたのか、右半分は全て個室となっていたので問題は無い。
左半分に調理場や食堂などの共用設備があり、2階は書斎や風呂などがあった。そう、風呂があるのだ!風呂があるだけでも大満足というものだ。
「取り敢えず、自分の部屋はパパっと掃除して……共用部分はみんなでやろう」
「「「はーい」」」
そういう訳で、一度解散してそれぞれの部屋の掃除を始める。
家具は残り物があったりするが、傷が付いている物が大半なので捨てて新しく買おうと思っている。幸いお金はまだ余裕があるし。
なので、無事な家具を選定し、それ以外の物は廊下に運び出す。
無事だったのはソファーと机のみだった。
レベル54が生み出す怪力を使って、棚などの家具をどんどん運んでいく。
リナは俺と同じ発想だったのか傷んでいる家具を運んでいたが、メリーとリーニャの方はそんな様子は無かった。多少傷んでいても無理に使おうとしているのだろうか?
まあそれ程傷んでいない、という可能性もあるので、後で訊いてみよう。
さて、家具の運び出しは完了したので、後は埃を取る作業だ。
こういう時に家事魔法が欲しくなる。水魔法では掃除に適したものなど存在しないので、手作業でやるしかない。
掃除は上から下が基本と聞いたので、「万物創造」で雑巾を作ってどんどん拭いていく。水に関しては水魔法で好き放題出したり乾かしたりできるので、懸念する事は無い。
そういえば、ナスターニャ神にユニークスキルの使用回数は心配しなくても平気だと言われてから、ガンガン使っている気がする。そろそろ自重した方が良いかもしれない。
そうこうしている内に、30分程で掃除が終了した。
前世だったらくたくたになっているであろう作業だったが、高レベルであるお陰か特に疲労感は感じない。レベル制万歳だ。
軽く伸びをして廊下に出てみると、大量にあった俺とリナの家具が消えていた?
「……へ?」
どういう事?
その答えは、丁度廊下の向こうから歩いてきたリナが教えてくれた。
「ああ、家具なら玄関に運んどいたわよ」
「おお……え、掃除終わるの早いな」
「まあね。私は魔法が使えたし」
「精霊魔法万能過ぎるだろ……」
そりゃあエルフが秘匿する訳だ。ズルい。
「2人は終わってるのか?」
「さあ。入ってみる?」
手始めにリナの横のメリーの部屋を見てみようと、ノックをしてみる。
中から「入っていいよー」と返事が返ってきたので、遠慮無くドアを開けて中に入ると――最初よりも汚くなっている部屋がそこにはあった。
「……何故こうなった?」
「いやー、取り敢えず水拭きしようと思って水汲んできたんだけど、溢しちゃって……」
「…………よし、メリー、神殿に顔出してきていいぞ」
遠回しな戦力外通告を受けて涙目になっているメリーを部屋の外に追いやる。
「……マジでなんでこうなるんだよ……30分掛けて余計汚くなるとか」
「掃除下手ってレベルじゃないわね……」
「最初に会った頃のできるお姉さん感を返してくれ……」
部屋の主が居なくなった部屋で、しばらく俺とリナの愚痴が響き渡った。
文句を垂れていてもしょうがないので、気を取り直してリーニャの部屋に行ってみる。
何度かノックを繰り返しても返事が無いので中に突入すると、埃まみれのベッドで眠りこけるリーニャが居た。
「……リナ」
「ええ」
「この2人は掃除に参加させない方がいいな」
「そうね」
その後熟睡しているリーニャを寝室まで運んだ俺とリナは、2人きりで屋敷の大掃除を始めた。
早々に神殿から帰ってこようとしたメリーを立ち入り禁止にしたリナの判断は、とても正しかったと思う。




