37 王都
一日で100PV越えが嬉しいので、本日2話目の投稿です!
「結局アイツらは何がしたいんだ……」
悪魔達が消えた後の空間を見て呟く。
俺達を殺したいのであればもっと大勢引き連れてくればいい筈なのに、毎度数は少ないし。
そもそも何故わざわざシャーマイン市から離れてから出てきたんだ?あれだけ自由自在に現れたり消えたりできるなら、シャーマイン市内で襲う事もできた筈だ。実際そっちの方が俺達は動きにくい筈。
「分からん事が多いな……」
取り敢えずは、王都に向かうとしよう。
◇
それから数日。
あれ以降悪魔達は現れる事無く、夜間の警戒も無意味と化した。
リーニャが青く発光するのが悪魔が現れる前兆だと思うのだが、リーニャ自身はよく分かっていないようだ。
俺とリナで立てた仮説としては、「受神」スキルを使ってナスターニャ神が警告してくれている、というのが有力だと思っている。あの青い光がナスターニャ神のアイデンティティっぽいからだ。
ともかくとして。
ようやく治安の悪い公爵領から離れる事ができた俺達は、王都入りを果たした。
「……凄いわねぇ」
メリーが思わず呟いたのも頷ける。
城壁は二重に築かれており、城壁と城壁の間には大規模な農場が広がっていた。城壁の内側に街が広がっているのだろうが……そのサイズがこれまで見た都市よりも明らかに大きい。シャーマイン市の2倍ぐらいある気がする。
「交通量も多いな」
検問所は複数設けられており、少し見渡しただけでも馬車用とみられる道路がいくつかある。今は朝の早い時間で本来ならば馬車は少ない筈なのに、俺達のいる道路はそこまでだが他の道路は混雑している。
「アンタら、王都は初めてかい?」
王都の様子に圧巻されていると、一人の農民が話しかけてきた。
「ええ、そうなんです」
「だろうと思ったよ。ここは貴族用の道路だから、そのまま進まねえ方がいいぞ」
「あっ、そうなんですか……教えてくれてありがとうございます」
「良いって事よ。初めて王都に来る連中はみんな間違うからな。看板を置いたところで俺らみてえに文字を読めねえ奴が多いから、結局俺らが注意するしかねえんだ」
親切にも教えてくれた農民にもう一度礼を言い、馬車を反転させて一度城壁から出る。
イリーナ嬢の紹介状を使えば押し切れるような気もしたが、無用な問題は起こしたくない。
城壁沿いを走らせて、他の入り口から入る。こちらは交通量がそれなりに多いので、待ち時間が長そうだ。
まあ、気長に待つかね。
◇
今回は特に騒動も無く検問を抜けた。
担当の衛兵に暴言を吐かれる事も無かった。リーニャを見て一瞬表情を歪めたが、それだけだ。それ以降は言葉に出す事も顔に出す事も無く、普通に検問を終えてくれた。
まったく、シャーマイン市の衛兵も彼を見習って欲しいものだよ。
「で、どうするの?」
腕を組んでうんうんと頷いているとメリーから訊かれたため、少し考えて言葉を返す。
「まあ取り敢えずは宿に泊まって……家でも買って定住できるようにしようかな。最悪リーニャが学校か何かに通えれば定住できなくてもいいけど」
「はいはーい。じゃあ不動産屋にでも顔出す?」
「そうしよう」
ある程度の方針を定めた俺達は、ひとまず馬車を停める場所を確保するために宿屋へと向かった。
◇
「無理だね、獣人は泊めてやれんよ」
宿屋の主人からの言葉だった。
これまでの宿では最初は断られるものの、少しお金をプレゼントしたら快く泊めてくれたのに、ここは駄目らしい。
「どうしてですか?まさか贈り物が足りない?」
「いやぁ、泊めてやりたい気持ちはあるんだがな。ほれ見ろ、あそこで朝っぱらから飲んだくれてる奴らを」
主人が顎で示した方向を見ると、まだ正午にもなっていないのに酒盛りをしている男達がいる。心なしかリーニャを見て不機嫌そうだ。
「ああ、なるほど、排他主義者の飲んだくれがいるからですね」
「結構ガッツリ言うなあ……ま、そういうこった。悪いが他を当たってくれ」
律儀に賄賂を返却してくる主人に礼を言って宿屋を出る。
獣人差別、ここに極まれり。
「……ごめんなさい。私のせいで」
溜め息を吐きながら馬車に向かっていると、リーニャが申し訳無さそうに呟いた。
俯いているリーニャの頭をポンと叩く。
「リーニャのせいじゃないぞ。いいか?差別やいじめってのはどんな理由であれやってる側が悪いもんだ。自分のせいだと思わないであの駄目人間達に文句を言うぐらいの気概の方が良い。まあ実際に面と向かって文句を言ったら駄目だが……」
中盤少し愚痴っぽくなってしまったが、言いたい事は概ね伝わった筈だ。
リーニャは顔を上げながら「うん、分かった」と短く呟いた。
◇
「ここも駄目かぁ……」
4軒目となる宿屋を出ながら呟く。
もうすぐ昼になってしまう程の時間を費やして回ったが、どこもかしこも「獣人お断り」だった。
「なんでなのかしらねー、こんなに可愛いのに」
リーニャを励ます意味を込めてか、メリーはそう言いながら猫にやるようにわしゃわしゃとリーニャを撫で回す。
リーニャは目を細めて破顔しているので、嫌がっている事は無い筈だ。
リーニャを可愛がるメリーを見ながら、リナと一緒に相談を始める。
「どうするの?いくら王都とはいえ、この調子だったら他も駄目じゃない?」
「だよなぁ……即日入居できる家でも探す方が良い気がしてきた」
「まあこっちの世界は電気ガス水道とか存在しないから文字通り即日入居できるでしょうけど……お金掛かるわよ?」
「お金ならいっぱいあるし……あまり使いたくないが、最悪の手段はある」
「ああ……アレね」
「ああ、アレだ」
あちらの世界だったら法に触れる手段だし、何ならこっちの世界でも法に触れそうだが、バレる事は無い筈だ。
まあ使わないに越した事は無いけどね。
そういう訳で、俺達は宿屋探しを諦めて不動産屋に顔を出す事にした。
◇
「即日入居でご紹介できるのは、こちらの2軒でしょうか」
金額自由、即日入居、4人以上が住めるスペースという注文で不動産屋から紹介されたのは、2つの家だった。
「こちらは貴族街にある屋敷なのですが、盗賊が住み着いているという噂があり……度々衛兵が捜査を行っていますが、一切証拠が挙がっていない屋敷となっております」
ふむ、盗賊ぐらいなら何とかなりそうだな。
そう思いながら、もう一軒の説明も聞く。
「こちらは……少々言いにくいのですが、家内が悲惨な事になっておりまして」
「悲惨?」
「ええ。前の持ち主が掃除など何もせぬままに消えた結果、家の中は見るも無残な状況になり、結果として我々も手を出せぬ事に……」
「なるほど……」
どちらが楽かと言われれば上手く答えられない問題である。
盗賊狩りをした方が楽な気もするが、衛兵が証拠を挙げられないとなると面倒である事に違いは無い。
掃除の方は、俺はそこまで得意では無いし、メリー達もどちらかといえば大雑把な部類な感じがする。
値段的には然程違いは無いし……敷地が広い前者の方が良さそうか?
「ではそうですね……こちらの屋敷の方を買おうと思います」
「おお、買って下さいますか!ありがとうございます!」
どうやら不動産屋もあまりの売れなさに扱いを困っていたらしい。手を握られて感謝されてしまった。
まあ、盗賊狩りぐらいなら数日掛ければなんとかなるだろう。
そう思った俺は、早速不動産屋と手続きをする事となった。




