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34 スキルの検証

 短めです。

「じゃ、実験しましょうか」


 公爵領に向かう旅のある日の晩。

 ナスターニャ神によって強化されたユニークスキルの効果を検証するべく、俺とリナは野営地から少し離れた場所に佇んでいた。

 俺のスキルは既に確認が済んでいたし、リナのスキルも1つしか確認する事が無いので、すぐに済みそうだ。


「うーん……標的は俺でいいか」


「駄目よ、もし防げなかったらどうするの」


「って言ってもなあ……レベルも54になったし、イージスの防御力も結構だぞ?」


「こっちのスキルだってそうよ。強化前の段階で、格上を弾き飛ばしたのよ?」


 弾き飛ばした、の具体的な表現を聞いて、俺は自分を実験台にする事を中止した。

 そんな肉片になるなんて思わないじゃん……。


「じゃあ、マネキンでも作るか」


「それがいいわね」


 結局、「万物創造(クリエイト)」でマネキンを作り、それにイージスを持たせる事にした。

 力を籠める事ができないマネキンに盾を持たせて果たして意味があるのか分からないが、まあ良いだろう。


「それじゃあ、いくわよ」


「うい」


 気の無い返事を返し、掌を突き出すリナを見守る。

 ……しかし、一向にスキルを使う気配が無い。


「どうした?」


 心配して声を掛けてみる。


「うーん……武器が無いと使えないみたいね」


「前からそうだったのか?」


「ううん、前は素手でも使えたわ」


「じゃあそこが変わったところか……」


 手元には護身用の灰輝銀(ミスリル)合金の剣しか無いので、リナには一度テントに戻って魔短剣を取りに行ってもらう。テストとはいえ、スキルを持っていない武器種でやるのはあまり良くないだろう。


 リナが帰ってきたところで、気を取り直してスキルの検証を始める。


「『致命一撃(ヴォーパル・アタック)』」


 リナがスキルを発動させると、魔短剣が聖剣のような青い光を放ち始める。魔剣は赤い光の筈なのにだ。

 青い光が一際強くなった後、リナがマネキンの持つイージスに向けて魔短剣を振るう。途轍も無い衝撃音が響き渡り、イージスを持つマネキンごと粉々になって破壊された。


「うわぁ……」


「これは人間には使わない方が良さそうね」


 絶句する俺とは対照的に、リナは一度見た事があるからか冷静だ。


 そして、今ので気付いた事がある。

 「眼光炯々(ワイズ・アイズ)」スキルの効果か、今の攻撃を自分が受けた際の様子がありありと分かったのだ。


「重傷にはなるけどギリギリ致命傷ではないぐらいか……」


「なんか言った?」


「いや、なんでもない」


 どちらにせよ、喰らいたくない事に違いは無い。

 しかも今の分析は俺が可能な限りの防御を行った場合、具体的に言えばアイギスとイージスに全魔力を流し込み、スキルを全力で使用した場合の話だ。準備を整える前に放たれれば致命傷は免れないだろう。

 リナ、恐ろしい子……。


「ん?ていうか、普通に動けるのか?」


 リナが平然と立っている事に今更ながら気が付いた。

 前に使った時は立つのもままならないと言っていた気がしたのだが……。


「確かに言われてみればそうね。うーん、魔力をギリギリまで使った時みたいな脱力感はあるけど、動けはするわね。戦闘は無理そう」


「なるほどな……」


 その辺りの融通が利くようになっただけでも、かなりの進化だろう。相討ち前提みたいなスキルではなくなっただけでも万々歳だ。


 その時、野営地の方からメリーが顔を出してきた。


「今の音、何かあったの!?」


 先程の轟音で目が覚めたのか、短杖(ショート・スタッフ)を構えた臨戦態勢だった。


「すまん、ちょっと実験をしてただけだ……気にしないでくれ」


「そう、よかった……」


 本気で心配してくれていたみたいで、ちょっと罪悪感があった。

 メリーにもう一度謝っておき、3人で野営地に戻る。


「そういえば、リーニャは?」


 轟音で目覚めたのがメリーだけな事に疑問が行ったのか、リナがメリーに問う。

 だが、それは訊くまでも無い事であると俺は理解している。


「リーニャは寝てるわよ」


「えぇ……?」


「リーニャが食後に起きるとは期待しない方が良い」


 唖然とするリナに追撃を喰らわせる。

 恐らく食後のリーニャは天変地異が起きたとしても目を覚まさないだろう。それくらい深い眠りに就いているのだ。

 そのせいで、俺達は4人居るというのに夜番は3人で回している……。


「まあ、被保護者みたいなもんだしな……しょうがない」


「そうね」


 仲間であるとはいえ、リーニャはまだ俺達に比べると幼い。

 食べて寝て遊ぶのが仕事の年齢なので、可愛い子には旅をさせよとは言っても実際に旅をさせるのは酷だろう。


「王都に着いたら、リーニャが成人するまで定住してもいいかもな」


「良いんじゃない?私はハリーの好きにすればいいと思う」


「まあ、魔王は他の勇者がいるから、私もいいと思うわ」


 2人の賛同も得られたという事だし、真面目に検討してもいいかもしれない。

 幸いにして、お金には結構な余裕がある。

 ラエン伯爵領での盗賊狩りでかなりお金は稼いだし、それ以外にもクェート伯爵からイリーナ嬢を守った褒賞で金貨を貰ったりもした。

 王都の地価や物価がどれぐらいかは分からないが、冒険者稼業を続けていけばリーニャが成人するまでの費用ぐらいは稼げると思う。

 今の段階で考えられる問題としては……。


「獣人差別とかか……」


「あー、まあクェート伯爵領がおかしかっただけで、基本的にこの国は獣人嫌いよね……」


「貴族の奴隷とかだったら、普通の平民ぐらいの待遇は受けられるって聞いた事があるわよ?」


「なるほど……」


 メリーの言葉を真剣に検討してみてもいいかもしれない。

 ハリーの姿では無理かもしれないが、アリスの姿ならば下級貴族の爵位ぐらいは貰えそうだ。あまりにも獣人差別が酷かったら、アリスとして王城に顔を出してみるとしよう。


「まあ、王都に行ってみてからだな」

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