閑話6 訓練
短めです。
「目をよく見て!相手の視線から攻撃を予測してください!」
「はい!!」
今現在、俺はクェート伯爵城の教練場でギーナス氏との稽古に励んでいる。
俺は今までレベルやスキルに頼った戦い方をしていたので、技術的な事を教われるのは本当にありがたい。しかも「片手剣」スキルのお陰か、教わった事をスポンジが水を吸収するように簡単に覚えられるので、体を動かして訓練をする事が非常に楽しいのだ。前世では運動など苦手で嫌いだったのに、今は笑いながら運動できている。
ギーナス氏の指導通り、視線からの攻撃予測に努める。
確かに目をよく見れば、ある程度描かれる剣の軌道を読める。
ギーナス氏の目から予測された剣の動くところに先回りして防御を――予測とは全く違う軌道で剣が襲い掛かり、俺の剣が弾かれる。
「相手の視線はフェイントにも使われますよ!予測に頼り切りにならないで!」
「はい!!」
言いたい事は分かるけどさ、目で予測しろって言った直後にそれはちょっと酷いんじゃないかな……。
そんな風にして、目線や足捌きを使った攻撃予測、またフェイントの入れ方、フェイントの見切り方などを教わる。
一度休憩を言い渡されたので、2日前にイリーナ嬢と一緒に買った灰輝銀合金の剣を床に置き、タオルで汗を拭く。この剣は魔力が通しやすく、戦闘しながら魔力を流す練習になって助かっている。
また、訓練の過程でスキルリストに「先読み」「牽制」「目線隠し」などのスキルが増えていた。近接戦闘で非常に有用そうなので、その内ポイントが溜まったら順次取得していきたい。
「ハリー殿!休憩は終わりですよ!」
「分かりましたー!」
スキルリストを見ている間に休憩時間が終了してしまったらしく、ギーナス氏に大声で呼ばれたので、タオルを置いて代わりに剣を掴む。
適度な距離まで近付き、打ち込み訓練をするために剣を構える。
「ああ、今日の打ち込みは終わりで良いですよ」
「あれ、そうなんですか?」
そう言われたので、剣を下す。
ただその言葉が嘘で普通に打ち掛かってくる事も考えられるので、完全には下ろさない。ギーナス氏は訓練中でも平気でそういう事をやってくる人なのだ。
「油断しない姿勢は満点ですが、生憎と嘘ではありませんよ。そろそろスキル系統を教えようと思いまして」
「あー……この間言ってた『魔力撃』みたいなやつですか?」
「そうですそうです。私の剣を見ていて下さい」
そう言われたので、剣を下ろしてギーナス氏の剣を凝視する。
魔力の流れが生まれ、ギーナス氏の手元から紫色の光が出始め、それは柄を通って刃先に溜まっていく。
――どこかで見覚えがある。あれは……湖近くの洞窟だったか。
盗賊の頭目が使っていた、俺の鉄剣を一瞬にして破壊したあの技。つまりあれが、「魔力撃」スキルという訳か。
とはいえ、ギーナス氏の方が頭目が使っていた時よりも発動速度が速い。
スキルを発動させ終えたギーナス氏が、剣を軽く振りながら言う。
「こんな感じですね。ただ魔力を込めるだけとは違うのが――」
「光が紫色な事と、特に刃先に集中しているところ?」
「ええ、そうです」
俺の先回りに、ギーナス氏が感心したように頷く。
訓練中に見せるギーナス氏の剣の輝きは、俺の剣と同じく灰色の筈なので、そこがまず違う。それに、ただ魔力を通した時は柄から刃先まで全てが輝くのが、今は刃先の20センチぐらいだけが輝いている。
「『魔力撃』スキルの効果は、使い手によって異なります。共通する効果は、普通に剣に魔力を込めた時と同じように、表面がコーティングされて刃毀れしにくくなると言ったものですが……例えば私の場合、単純に鋭さが増します。他には魔力を込めていない物体を粉々に砕くとか、珍しいものでは爆発するなんてものもありますね」
「なるほど……」
盗賊の頭目が使っていたのがそれか。
確かにあの壊れようは不自然だった。
それぞれの戦い方などに特化した効果を発揮する、という事か。
「やってみる事が一番早いでしょう。魔力を刃先に集中させる事を意識してやってみて下さい」
「分かりました」
ギーナス氏の指南通り、刃先を意識して魔力を流してみる。
スキルが無い影響か、かろうじて紫色の光を出す事には成功したが、柄の少し上辺りで発光が止まってしまった。
失敗か……と思いつつ魔力の供給を止めると、何故かギーナス氏から拍手が送られる。
「初めてでそれはかなり良い方ですね。その調子で毎日練習していけば、数か月程で覚えられるでしょう」
「数か月ですか……気の長い話ですね」
「私の場合は1年程掛かりましたがね。やはりハリー殿は筋が良いですよ」
「……どうも」
恐らく半分以上スキルの影響なので、褒められてもこそばゆいだけだ。
はぁ……と息を吐いてから、確認のためにスキルリストを開く。やはりスキルリストに「魔力撃」が追加されていた。という事は、レベルを上げてスキルポイントを溜めればすぐにでも使えるようになるだろう。
「それでは、次は『身体強化』や『集中』などのスキルを覚えていきましょう」
「お願いします」
この調子で俺は次々と取得可能なスキルを増やしていき、スキルリストに現れるスキルはこれまで以上に多くなっていった。




