表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/34

2 ミラーノ市(1)

本日20時にもう1話投稿します!

 三人の遺体から離れて、暫く歩く。

 どこに向かって行けば良いかも分からないので、適当な方向目指してまっすぐ歩いている。ちなみに、エクスカリバーは腰に差したままだ。


 スキルリストにあるスキルをどれか取得しようか迷ったのだが、必要になった時でいいと思い直してやめた。

 一応、取得可能なスキルは以下の通りだ。


●スキルリスト

○片手剣

○危機感知

○鑑定

○収納

○運搬


 恐らく、俺の行動次第で増えるのだろう。

 「片手剣」はエクスカリバーを振るったからだろうし、「鑑定」は「万能鑑定(すべてをみとおす)」を使ったからだろう。「危機感知」はよく分からないが、「収納」と「運搬」は背中に背負っている鞄が関係していそうだ。


 スキルポイントは有限だしリセットも見当たらないので、スキルはその都度習得していく方針にしようと思っている。何か必要なスキルがリストに出現した時に、ポイントが足りないっていうのは嫌だからね。


 ちなみに、「変幻自在(シェイプ・シフト)」で適当に変えたこの体は、かなり便利だ。幻影とかではなくちゃんと実体があるし、身体能力はアスリート並みに高い。レベルアップで上昇したステータスの効果もあるにはあるのだろうが、レベル1の時から元の俺の身体能力より高かった。

 恐らくこのスキルを使えば、絶対にバレない変装が出来るだろう。女体化も出来そうだけど、怖いから必要に迫られない時以外はやらない。心まで変わってしまったら困る。


 一時間程歩いたところで、街道らしき物が見えた。「万物創造(クリエイト)」を使う羽目にならなくて済んだ様だ。


 看板などは見当たらないので、取り敢えず街道を道なりに進んでみる事にする。

 しかし、魔物などはいないのだろうか?まあ、遭遇しない分には助かるが……。


 数分歩いていると、前方からガラガラと馬車が進んで来た。ようやく人との対面だ。


「すみません!」


 大声を上げて注意を引く。幸い無視されたりする事もなく、馬車は止まってくれた。

 馬車に近付いて、御者に話しかける。


「すみません、もし宜しければなのですが、乗せて頂く事は出来ないでしょうか?」


 いきなり知らない馬車に乗るのは怖いが、今はそれしか手がない。

 それに、今はイケメン顔なので相当な事をしない限りは嫌われないと思う。


「……申し訳ないですが、私に決める権限はございません。中におられる方に伺ってください」


 御者がそう言ったと同時に、馬車の扉が開いて、赤毛の男が出てきた。


「ザビス、どうした……って、どちら様?」


「馬車を止めてしまいすみません。足が無くなって困っていたので、よければ乗せて頂けないかと思ったのですが……」


 馬車は商人が持つような荷馬車ではなく、貴族が乗るような扉付きのタイプなので厳しいとは思うが、一応言ってみた。

 でも、貴族にしては護衛も特にいないな。なんなんだろう、この人。


「あー……」


 男はチラッと御者を見る。

 何故に?

 男は御者から俺に視線を戻した。


「俺の仲間も一緒なんだが、大丈夫か?」


「ええ、勿論です」


「そうか、なら乗っていいぞ。勿論、街に着いたら金を払ってもらうぞ?」


「分かっていますよ」


 幸い金は持っているので、払い切れないという事もあるまい。

 扉を開いて馬車の中に入る男に続き、俺も乗る。

 中には、二人の女性が座っていた。……ハーレムか?


「アル、この方はどなた?」


「えーっとだな……すまん、名前を教えてもらっても?」


 アルと呼ばれた男の言葉に、仲間達は呆れた顔をしている。

 さて、名前か。困ったな……前世の名前を名乗ったら場違いそうだ。

 母親の名前がリリー・メイエルだったので、ハリー・メイエルと名乗っておこう。決して、どこかの眼鏡をかけた魔法使いを想像したりした訳ではないよ?


「ハリー・メイエルと申します。よろしくお願いします」


「……もしかして、貴族?」


 ……あ、これ失敗した?

 そうか、こういう異世界は平民は苗字がないのが基本だった……失敗。


「ああ、失礼しました。父親が異国の流れ者なのですが、苗字を持っていたそうで、偶に間違えて名乗ってしまうのです」


「そうか……」


 誤魔化し成功。

 ただ、この近隣にメイエルという姓を持つ貴族がいたら困ったな。次からは、ただのハリーと名乗ろう。


「俺はアール。冒険者をやっている。呼びにくければ、アルと呼んでくれ」


「私はメリーと申します。同じく冒険者で、巫女です」


「私シロ!よろしくねー」


 赤毛の剣士がアール、金髪の巫女がメリーさん、白髪の元気なのがシロ。シロに関しては、パッと見でどの職業なのか分かりにくかった。

 何故メリーさんだけさん付けかって?他の二人に比べて、大人な雰囲気を感じたからだ。決して大きな胸の存在感に緊張しているとか、そういう訳では無い。


 アールと共に二人の対面に座ると、馬車が動き出す。


「冒険者なんですよね?今は依頼中なんですか?」


「あー、まあそんなとこだな」


「ちょっ、アル!」


「なんだよ」


 俺の質問に答えたアールが、何故かシロに叱られている。

 シロに耳元で文句を言われているらしきアールが可哀想だった。


「すまん、悪いが俺達の事はあまり質問しないでくれると助かる」


「そうですか、すみません」


「いや、ハリーが謝る事じゃねえさ」


 極秘依頼中とか、そんな感じだろうか?

 かっこいい響きなので、勝手にそうだと思っておこう。


「なあ、ハリーのその剣、大分業物じゃないか?」


 黄金色に輝くエクスカリバーに気付かれてしまった。

 うーん、やっぱりこれ捨ててきた方が良かったかな……いやでも悪党に拾われて悪用されたら寝覚めが悪いし。

 やっぱりここは作り話作戦だな。


「父から譲ってもらった物なんです。詳細は知りませんが、父は生活に困ったら売ってもいいぞと言っていました」


「へえ……てことは、かなりの高値がつくってことか」


「かっこいいね!ちょっと触らせて〜」


「いいですよ」


 話に入り込んできたシロにエクスカリバーを渡す。

 シロは「ふーん」「へ〜」「ほ〜」と眺めながら声を出して、暫くすると飽きたのか返してきた。


「剣術は出来るのか?」


「いえ、ちょっと齧ったぐらいです」


「そうか。まあ、もし魔物に襲われたらその時は一緒に戦ってくれると助かる」


 全然嘘付きました。剣なんて握ったのはさっきが初めてです。

 それより、やっぱりいるのか魔物。どんな感じなんだろう?


 それから暫く談笑をして過ごした。

 三人に関する事は訊くなと言われたが、それは今の事だけらしく、普段の生活などはある程度聞く事が出来た。

 専ら気になったのは、冒険者についてだ。

 F〜A級まであり、三人はC級なのだそうだ。アルファベットを使っているところが、日本人とかが介在していそうだが、言われてみれば言語が普通に通じているのでよく分からない。

 ちなみに、簡単にランクごとの強さを教えてもらった。

 F級は冒険者になりたて。

 E級は採取などで上がるので、正直F級とそこまで変わらないそうだ。

 D級は駆け出し。一般人よりは強いが、本職の軍人よりは断然弱いそうだ。

 C級はベテラン。本職の軍人と同じくらい強く、大抵の冒険者はC級で稼業を引退するらしい。

 B級は強者。軍人よりも強く、一握りの冒険者がこの境地に達するらしい。

 A級は怪物。実際に戦っているのを見た事はないが、A級の冒険者がB級三人と戦って無傷で勝利したという話があるらしい。

 怖いから、A級には近付きたくないところだ。


 そんな感じで色々話しながら、馬車は進んでいく。

 俺に関する事も色々聞かれたが、大体は作り話でのらりくらりとかわした。


 幸い途中で一度他の馬車とすれ違った以外は特に人や魔物との遭遇もなく、夕方頃に人里に着いた。城壁に囲まれている都市で、中々のサイズだ。

 入市の列に馬車が並んだところで、アールに一言言って馬車から降りる事にする。


「すみません、私はここまでで大丈夫です。お金はいくら程払えば宜しいでしょうか?」


「おう、そうか。うーん……まあ、銀貨一枚くらいでいいかな」


 鞄から銀貨一枚を取り出し、アールに手渡す。貨幣レートがよく分かっていないので、銀貨があって良かった。


「もし冒険者になりたくなったら、冒険者ギルドに顔を出すといい。もしかしたら俺達と会えるかもしれないしな」


「分かりました。ありがとうございます」


 馬車から降りて、少人数用の列に並ぶ。

 おっと、そうだ。ステータスなどを見られたら本名がバレるので、「変幻自在(シェイプ・シフト)」で偽装できないか試してみよう。


(『変幻自在(シェイプ・シフト)』)


 ハリーという名前を意識しながら発動する。

 今度も煙が出るかと使ってから慌てたのだが、姿に変化がないと煙は出ないようだ。

 これ幸いと安心して、自身に「万能鑑定(すべてをみとおす)」を使って確認する。うん、大丈夫そうだ。

 ちなみに、ステータス欄までは変わっていなかった。あくまで偽装という事だろう。


 暇なのでそのまま目を瞑りながら列が進むのを待つ。

 スキルリストを見て気付いたのだが、「詐称」「偽装」「作り話」というスキルが追加されていた。不本意だ。それに、前者二つはまあ分かるとして後者はスキルらしくない名前だし。


 数十分してようやく列が解消し、衛兵と対面した。


「身分証はあるか?」


「すみません、どこかで落としてしまったみたいで、手元に無いのです」


「そうか、じゃあ入ってすぐの衛兵詰め所で発行してもらえ」


「分かりました」


 簡単な手荷物検査だけ受けて、銀貨一枚で入れてもらうことができた。帯剣したままでもいいというのが驚きだ。

 ちなみに、この街はミラーノ市というらしい。


 門を抜けて街中に入り、右手にある衛兵詰め所に入る。


「失礼します。身分証の発行をして頂きたいのですが」


「三番の部屋にどうぞ」


 部屋にはそれぞれ番号が振られている様で、指差された部屋の扉には3と書かれている。

 教えてくれた衛兵に礼を言って、三番の部屋に入る。


「身分証の作成ですね?こちらにお掛けください」


 中にいたのは、眼鏡をかけた女性だった。知的なイメージがしてちょっとかっこいい。

 対面の椅子に座ると、紙とペンを差し出された。


「こちらに必要事項をお書きください。読み書きが出来なければ、代筆も出来ますが?」


「いえ、大丈夫です」


 書かれている文字が読めたので、大人しくペンを受け取って自分で書く事にした。読めたと言っても、日本語だった訳ではない。見知らぬ言語だが、何故か読み書きもできるのだ。

 必要事項と言っても、名前と年齢、性別と職業ぐらいだったので、職業のところを仕方なく無職にして乗り切った。担当の女性には冷ややかな目で見られたけど。


 個人情報が書かれた用紙を受け取った女性は、もう一つの机にある水晶玉の様な物を操作している。非常に気になるが、席を立って見るのは躊躇われたので、自重した。

 暫くすると水晶玉が淡く光り、女性がこちらに戻って来て金属のプレートを差し出してきた。


「こちら、身分証明証になります。今度は無くさないでくださいね」


「ありがとうございます」


 身分証明証の発行にはお金を請求されない様だ。

 いや、俺が無職と書いたからこの女性が同情してくれたのかもしれない……。


 部屋を出る時にもう一度礼を言って、俺は衛兵詰め所から出た。

11/17 >表現のミスを修正。

   >ミラーノ市に関する描写を加筆。

   >名前偽装の際の状況を変更。

   >メリーをさん付けするように変更。

11/21 >アール・メリー・シロの容姿についての描写を加筆。

12/02 >スキル部分に「」もしくは『』を付けるよう変更。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ