9 初野宿
本日18時にもう1話投稿します!
今現在、俺とメリーはミラーノ市を出て、東にあるグランデル市に向かっている。ミラーノ市が所属するグランデル伯爵領の中で、最も大きな都市だ。
これは先程初めて知った事なのだが、メリーは出発直前までアールとシロに黙っていたらしい。本人曰く、驚かせたかったとの事だ。そんな理由で急遽パーティー脱退とか許されんでしょう、とか思ったけど、二人は意外と簡単に認めてくれた。メリー、最初の時はお淑やかなイメージだったのに、本性は全くそんな事がなかった……。
さて、そんな訳で、食料を詰めた鞄を抱えて、並んで歩いているという訳だ。
その間暇なので、スキルについての話をしておこう。
中級悪魔との戦いを経て俺のレベルは42に上昇し、スキルポイントは96となった。
これらを使って、取得可能なスキルからポイントを割り振る事になった。まず、現在のスキルと、スキルリストを見てみた。
●スキル
○変幻自在
○万能鑑定
○万物創造
○片手剣Lv5
○危機感知Lv2
○射撃Lv1
○回避Lv2
○武器防御Lv4
○弾き防御Lv3
○連撃Lv3
●スキルリスト
○収納
○運搬
○詐称
○作り話
○表情管理
○尋問
○吹き矢
○拉致
○誘拐
○礼儀作法
○疾走
○逃走
○採取
○索敵
○投擲
○盾
○防御
○破壊魔法耐性
○銃
○銃撃
○照準
○魔法銃
○光量管理
○装填
○魔力操作
○充填
○潜伏
○隠蔽
○酒精耐性
○格闘
○覗き見
○聞き耳
数が凄い、多かった。
スキルリストを開いた俺は、まず不要な物を消去する事にした。具体的に言うと、「詐称」「尋問」「吹き矢」「拉致」「誘拐」「破壊魔法耐性」「光量管理」「酒精耐性」だ。どれも使い所が限定的か無いスキルなので、消去に遠慮は無い。もし必要な時が来たら、その都度復活させれば良いのだ。
8つのスキルを消した俺は、96もあるポイントの使い道に悩む。既存のスキルのレベルを上げてもいいし、新しいスキルを取得してもいい。
暫く悩んだ俺は、最初に6ポイントを消費して「索敵」スキルを取得、Lv3まで上昇させた。後に実験して分かった事だが、「索敵」スキルLv3は自分の半径400mの魔物・敵意のある人間を捕捉出来るというスキルだった。中々に便利だ。
次に、「盾」「防御」「格闘」の汎用性の高そうなスキル達を取得、Lv3まで上昇させた。合計して18ポイント、中々の消費量だ。まあ、これらがあれば戦闘ではかなり有利な立ち回りが出来る筈なので、惜しいとは思わない。
次に、「危機感知」と「回避」の二つをLv4まで上昇させる。たった二つに14ポイントも持っていかれたが、どちらもかなり強力なスキルなので、致し方ない。
さて、ここで一旦落ち着いて残りは58。
ケルネティアを上手く扱う為に必要そうな「銃」や「魔法銃」辺りのスキルも気になるが、ここは「片手剣」スキルを最大にしておく事にした。40ポイントという馬鹿みたいな消費量だが、後悔はしていない。
残るは18ポイント。キリ良く使うならば、先程の様に3つのスキルをLv3にするのが良いだろう。
暫し唸った後に、前々から欲していた「表情管理」と、情報収集に便利そうな「覗き見」「聞き耳」を取得する事にした。これで戦闘以外の面もサポートされる筈だ。
これらの操作を経て、俺のステータスは以下の様になった。
●ハリー 年齢15 レベル42 MP 512/512
○スキル
・変幻自在
・万能鑑定
・万物創造
・自己鑑定
・能力取得
・片手剣Lv10
・危機感知Lv4
・射撃Lv1
・回避Lv4
・武器防御Lv4
・弾き防御Lv3
・連撃Lv3
・索敵Lv3
・盾Lv3
・防御Lv3
・格闘Lv3
・表情管理Lv3
・覗き見Lv3
・聞き耳Lv3
○称号
『盗賊狩り』『悪魔殺し』『勇者』
かなり増えて見づらくなってしまったが、まあ戦力強化は大歓迎であるので、仕方が無いだろう。
◇
夕陽が見え始めたところで、野営の準備を始めた。
この世界では地図は貴族や金持ちぐらいしか持っていないようで、手に入れる事が出来なかった為、後どれくらいでグランデル市に辿り着くのか、付近に村落があるのかどうかなどは分からなかった。その為、街道沿いの適当な空き地を使う。
出発前に買った折り畳み式のテントをメリーが広げている間に、焚き火の準備を行う。俺は手先があまり器用ではないので、そういった作業は苦手なのだ。その点、火起こしは魔道具が使える為、楽で良い。
魔道具がなんなのかは、正直良く分かっていない。その内本でも買おうと思うが、自作するかどうかは微妙なところだ。魔法は覚えてみたいが、今のところスキルリストにも現れていないので、スキルの取得方法が不明だ。
そんな事を考えている内に火は燃え上がり、集めた薪に引火した。こういう火が燃える時の匂い、何気に結構好きなんだよね。
テントの組み立て予定地の横辺りに置いておいた鞄から調理器具を取り出す。といっても、鍋とおたま、ヘラやナイフぐらいしかない。
メリーが料理はてんでダメと言っていたので俺がやる事にしたのだが、いかんせん俺も料理経験が無いので、どうすれば良いのか見当もつかない。
取り敢えず昼間の内に確保していた兎肉を良い感じのサイズに切り、調味料と共に鍋に投入する。調味料はかなり貴重品のようだったので、あまり量は使っていない。
肉汁溢れる鍋を見ていると、お腹が減ってきた。
野菜などは特に持っていないので、今日は肉オンリーだ。量的には問題がないが、栄養的にはかなり心配である。野営をするのは数日とはいえ、都市に滞在するのも数日ちょっとぐらいなのだから、もう少し料理を覚えなければいけないかもしれない。
良い感じに焼けてきた肉をひっくり返したタイミングで、テント設営を終えたメリーがこちらにやって来た。
「昼の兎肉?良い香りね……」
「焼いただけだけどね。まあ、もう少ししたら食べられると思うよ」
メリーは肉の香りのせいか可愛らしくお腹を鳴らしてしまい、顔を赤くして俯いた。
俺も先程からお腹が鳴るのを我慢している身なので、特にツッコんだりはせず、無言で肉を焼く。
数分もして充分に焼けた事を確認したところで、焚き火から離してメリーにフォークを渡す。俺は「万物創造」で作った箸を握り、鍋から直接肉を取る。
うーん、折り畳み式の机やらなんやらを買わなかったのは失敗だったかもしれない。ああ、ストレージ的なスキルが欲しい。
「ん、美味しい!ハリー、凄いわね」
「調味料をかけて焼いただけだぞ?スキルも無いし……」
「それでも美味しいから凄いのよ。私は肉を焼くだけでも火事を起こしかけたわ」
「何をやったらそうなるんだ……」
実は結構ポンコツなのかもしれない。
肉を食べ終わって、鍋と食器を少し離れた川に持って行って洗う。次からは、川のすぐ側にテントを作ろう。
清潔な布でゴシゴシと拭いていると、バシャバシャと水音が聞こえてきた。顔を上げると、一糸纏わぬ姿のメリーが水浴びをしている。
「何やってるんだ……」
すぐに目を逸らし、食器に視線を戻す。幸せな光景だったが、ガン見するのは良くない。記憶の中に留めるだけにしておこう。
「何って、体洗ってるのよ。洗える時に洗っておかないと、気持ちが悪いのよ」
言い分は分かるが、俺の前でするのが意味が分からない。
口に出しても止める気配は無かったので、仕方無く視界に入れないように苦労しながら場を離れた。
「――あれ?」
おかしい。
テントが一つしかない。
ミラーノ市で野営道具を買った時は、ちゃんと二つ買った筈だ。なのに、何故?
「どうしたの?」
後ろからメリーが声をかけてきた。
振り向くと、タオルしか身に付けていない。羞恥心を持ってくれよ……と思いながら、テントに視線を戻す。
「なんでテントが一つしかないんだ?」
「ああ、面倒だったから、一つにしちゃった。良いでしょ?」
「良くない……」
とはいえ、テントを組み立てる能力は俺には無かった。
ちろりと舌を出すメリーの説得を諦め、俺も川に向かって水浴びをした。途中、メリーが乱入しようとして来たが、すぐさま「万物創造」で強力煙幕を作り出した為難を逃れた。俺の貞操は守られたのだ。
その後、夜番の順番を決め、後半の担当になったメリーがテントに入って行くのを見届けた。
さて、索敵スキルがある限り接敵に気付かない事は無いし、何をしようか。
スキルリストをチラッと確認して解体や調理、野営に洗浄といったスキルが追加されている事を見た後、本を読む事にした。本は『魔法とは』『悪魔と魔王』『薬草図鑑』の3つしか買っていないので、読みかけだった『悪魔と魔王』を読む事にした。
この本によれば、魔王も勇者や転生者と同じくユニークスキルを持つらしい。例として、「無限転移」や「一撃必殺」などが挙げられていた。前者は汎用性が高く便利そうだし、後者は格上殺し性能が高そうで羨ましい。
本に読み耽っている間に交代の時間が来たので、テントに入りメリーを叩き起こして横になる。「夜這い?」などと寝ぼけた事を言っていたので、テントの外に放り出してやった。
普段はこんな遅くまで起きている事が無いので、瞼が重い。
おやすみなさい――。
12/02 >スキル部分に「」もしくは『』を付けるよう変更。




