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戦場の真実

 ラウラの決意を聞いたフリードリヒ兄さんは、妹の理想と、軍という組織の冷酷な現実との間に、深く心を痛めていた。彼は、一人の先輩軍人として、ラウラに戦場の真実を語り始めた。


「最近は平和な世の中だから、私自身も、実際に戦場に身を置いたことはない」


 彼の言葉には、正直な軍人としての謙虚さが滲んでいた。 「けれど、部下の兵士や同僚の士官から聞いていることから分かるのは、ラウラが想像しているよりも、戦場は遥かに過酷だということだ」


 彼は、現在の世界が抱える、根源的な矛盾を指摘した。 「今は戦争と戦争の間の時期で、間違いなく次の戦争は起こる」


 そして、彼は、ラウラの「敵味方入り乱れての治療」というロマンを、現実の冷たさで打ち消した。


「戦場では、敵味方が入り乱れることは、あまりない。それは英雄譚の中だけの話だ。実際は、どちらかが一方的に蹂躙した後に進駐するか、逆に蹂躙された後に進駐されるかの、どちらかになる」


 彼の説明は、明快で残酷だった。 「敵の陣地と味方の陣地の間に、広大な危険地帯が広がり、人死には、主にその危険地帯で起こる。そのほとんどが、誰にも看取られることなく、そこで絶命する」


 フリードリヒは、妹に、これ以上、想像だけで理想を抱いて欲しくはなかった。 「戦争の現実は、こればっかりは、体験した兵士に聞くしかない。ラウラが望めば、その機会を作ることはできる」


 ラウラは、兄の言葉に、大きく揺れた。戦場の現実を、自身の五感で知りたいという、教育者としての強い好奇心。しかし、同時に、その過酷な真実を知ってしまった時の、底知れない恐怖心が、彼女の胸で相半ばした。知への渇望と、心の防衛本能。その二つの力が、ラウラの心を激しく揺さぶるのだった。


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