回復魔法士養成カリキュラム作り
ラウラは、シュミット医師と机を並べ、一年間で回復魔法士を養成するという、前例のないカリキュラム作りに没頭した。
医学的な知識については、シュミット医師が自信を持っていた。 「入学試験で基礎的な学力と知識は確認しているから、回復魔法士に必要な解剖学の座学は、三か月もあれば終わるだろう。その後の三か月で、人体の解剖実習も可能だろう」
しかし、ラウラが担当する魔法の領域は、そうはいかなかった。 「魔法について何の知識もない状態から、半年で回復魔法が使えるまでに育てるのは、本人の素質とやる気に大きく懸かってきます。何より、魔力の量を底上げするには、この期間は短いと言わざるを得ません」
ラウラの懸念は、もっともだった。回復魔法は、技術以前に、莫大な魔力を消費する。
彼女は、一つの奇策を思いついた。 すでに入学が内定している十五名の兵たちに、正式な授業開始までの半年間に、「あなたたちには潜在的魔力があるから、それを増やす訓練をしてきてください」という課題を課せないか、と。
シュミット医師に相談すると、彼は現実的な問いを投げかけた。 「具体的には何をやらせるの?」 「簡単な魔法を使わせて、自分は魔法使いの素質があることを、まず知ってもらうところからでしょうか」
ラウラは、魔法の存在を信じさせることが、彼らの潜在能力を引き出す鍵だと知っていた。しかし、シュミット医師は、軍人としての安全性を優先した。 「魔力暴走による事故は問題ないかい?」 「それは……」ラウラは息を詰めた。「制御方法と並行して教えないといけないですね。暴走は、力の覚醒と同じくらい危険なものですから」
議論の末、二人は、準備期間中に、実りある妥協点を見出した。
入学前に一泊二日程度の事前合宿を行う。会場は、軍の施設を借りる。この合宿で、制御術の基礎と、魔力の増強法を訓練する。ハインリッヒ院長が、このための軍施設との交渉を担当してくれることとなった。
一方、建物の改造は、順調に進んでいた。寄宿舎部分と、講義室部分、休憩室部分、食堂部分など、病棟からの転用とは思えないほど、新しい学校の形が急速に立ち上がりつつあった。開学までの全ての準備が、期限内に完成する目途が立ったのだ。
ラウラとシュミット医師の、知識と情熱を合わせた協力体制によって、この秘密の学校は、現実の姿を帯び始め、半年後の開校に向けて、着実に時を刻んでいくのだった。




