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軍の意志

 工兵隊での打ち合わせを終えて準備室に戻ってきたシュミット医師は、いつにも増して難しい顔をしていた。彼は、会議室で高官たちに囲まれた時よりも、よほど深刻そうな様子だった。


「工兵隊というか、軍の方針を聞かされてきたのだが、ラウラ君の考えているものとは程遠い内容だったよ」


 シュミット医師は、そう話し出すと、まず最も大きな障害を口にした。 「まず第一に、聖女カミラの招聘は難しそうだ。軍と教会は水と油的な部分もあってね。それに、今回の学校には、軍以外は関わらせたくないようで、魔法学校にラウラ君が相談に行くのは構わないが、講師を派遣してもらうのは難色を示された」


 彼の眼差しには、その決定に対する不満が滲んでいた。 「結果として、魔法関係の授業は、全て君一人に担わされるようだ」


 シュミット医師は、ラウラが激しく怒り出すか、あるいは、辞退を申し出るだろうと予測していたのか、何かを警戒するように身構えていた。しかし、ラウラは、フリードリヒ兄さんから軍におけるこの学校の実験的かつ閉鎖的な位置づけを聞いていたため、さほど驚かなかった。彼女の心には、すでに、この困難な現実を受け入れる準備ができていた。


 ラウラは、次に最も現実的な懸念を尋ねた。 「学生たちは、自宅から通うのですか? それとも、寄宿舎住まいですか」


「工兵隊では、寄宿舎というより兵舎を作る腹積もりでいたよ」シュミット医師は答えた。「ここの学校の生徒は、入校した時点で軍に入隊という位置づけで、新兵と考えた方が、この後の話が理解しやすいかもしれない。君は、一等軍曹として、その新兵を指導する訳だ」


 その言葉によって、ラウラの心の中で、すべての要素が一つに結びついた。


 彼女の仕事は、回復魔法の研究でも、純粋な教育でもない。 再生に特化した回復魔法を使える、衛生兵を養成すること。


 それが、軍が彼女に課した、静かで、しかし揺るぎない使命なのだ。ラウラの理想と、軍の論理が交差するこの場所で、彼女の新たな役目は、技術者から、軍事教官へと、静かに変わり始めていた。


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