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冷酷な現実

 シュミット医師が病棟の改造について工兵隊と相談するために席を外している間、ラウラは好機と見て、フリードリヒ兄さんと情報交換をした。


 フリードリヒ兄さんによると、回復魔法学校の設立は、軍内部では実験的事業と見なされているようだった。建物の改造費用はもとより、学生の学費も全て軍から出るという、破格の待遇だという。そして、卒業後の進路についても、すでに決定事項があった。


「卒業後は、全員任官して、まずは軍の医療機関に配属される、というところまでは決まっている」


 フリードリヒ兄さんは、ラウラの顔をじっと見つめた。 「ラウラは楽しそうにしているからいいんだけど、一つだけ、頭に入れておいて欲しいことがある」


 彼の声は、静かだったが、その言葉は重かった。 「お前が育てた回復魔法士が、やがて戦場に行くことも、決して忘れないでくれ」


 ラウラは、すぐに反論した。回復魔法使いとしての、揺るぎない信念だった。 「戦場に行っても、回復魔法士は、敵の命を奪うことはないわ。味方の命を救うのが、彼らの仕事よ」


 そう、彼女の魔法は、命を生かすためのものだ。しかし、その言葉を口にした瞬間、ラウラの心に、新たな現実の影が差した。


 —助けた兵士が、敵の命を奪うことはある。


 そういえば、以前、足の再生をした兵士が、兵隊を続けられることを心から喜んでいた。あの時、ラウラは、彼の喜びを「失業しなくて済む」という意味合いで受け取っていた。


 だが、戦場という場では、その「喜び」は、「戦闘を続けられる」という意味に変わるのだ。


 ラウラが教える、その奇跡の術は、直接的に敵を傷つけなくとも、軍の戦闘能力を維持し、結果として、敵の命を奪う行為を助長する。自分が育てた魔法使いが、間接的にではあるけれども、人の命を奪わなければならないかもしれないという、冷酷な現実。


 ラウラは、背筋が冷たくなるのを感じた。自分の能力が軍という名の暴力装置の中にいることで、無意識のうちに、戦場で何を生み出すのか。その重さと葛藤を、ラウラは今、改めて噛みしめるのだった。


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