選抜
ラウラは、シュミット医師の言葉に、反論の余地がないことを悟った。彼の指摘は、自身の天才性という鏡によって隠されていた、厳然たる現実だった。
「先生の言い方に異議がない訳ではありませんが、仰っていることは間違っていないと思います」
ラウラは、正直に認めた。彼女の瞳には、真実を受け入れた者だけが持つ、澄んだ光が宿っていた。 「こと回復魔法については、医学の知識が重要で、場合によっては致命的なことになることも理解できます。基礎的な学力で、入学者の足切りをしましょう」
こうして、生徒の選抜に関する方針は、二人の間で固まった。
新しい学校は、一年制で定員は十五名。入学資格は、「魔法学校卒、もしくは魔力および学力試験に合格した者」と定められた。魔力という天賦の才と、知識という努力の積み重ね。その両方が、奇跡の術を扱う者には求められることになったのだ。
カリキュラムも、急速に形作られていった。解剖学、組織学、手術管理といった、回復魔法の土台となる医学関係の講義は、陸軍病院の医師団が担当することになった。
一方、回復魔法そのものや、魔法理論の講義については、ラウラが中心となって担うことになった。彼女は、すぐに心強い協力者を思い浮かべた。ミヒャエル先生と、そして、親友の聖女カミラ。彼女の繊細な癒しの技は、この学校にとって、何物にも代えがたい宝となるだろう。魔法学校と教会への正式な協力の打診は、病院長のハインリッヒ少佐が担当することとなった。
建物の改造についても、具体的な計画が進んだ。まずは、広めの教室一つと、教員の控室が必須とされた。
しかし、もう一つの大きな問題が、二人の前に残されていた。 「学生は、通いにしようか、それとも寄宿制にしようか……」
シュミット医師が呟いた。その選択は、学生たちの生活の全てを左右する。軍の管理下で厳格に教育するのか、それとも、ある程度の自由を与えるのか。それは、単なる宿泊形式の問題ではなく、この学校の魂を決定する問いだった。ラウラの新しい闘いは、目に見える図面だけでなく、人の生活の隅々にまで及ぶ、小さな決断の連続となって続いていくのだった。




