進級試験は厳しい
二年の終わり、ラウラは理論も実践も、両方で優等生の座を保ったまま、進級試験を迎えた。トーマスは、今回も苦戦していた。理論でも実践でも、合格ラインぎりぎりのところで足踏みを続けている。今回もまた、ラウラが作成した「これだけ覚えれば合格できる」という教材を使っていたが、実践がうまくいかないと、理論の勉強にも身が入らないらしく、どこか投げやりな様子が見て取れた。
「たかが進級試験で絶望しているような魔法使いが、卒業して使いものになるのかしら」
ラウラがそう挑発しても、トーマスは「どうせ俺なんか、だめな魔法使いさ」といじけるばかりだった。だが、ラウラはさらなる言葉を投げかけた。
「トーマスは、結界魔法が攻撃にも使えるってこと、忘れちゃったの? 攻撃魔法なら誰にも負けないのが自慢だったじゃない」この煽りには、トーマスも反応した。「結界魔法で敵の体全体を覆って、中の空気を抜いたり、水を満たしたりすれば、敵は戦闘能力を失うのよ」と、ラウラは続けた。
その言葉を聞いて、トーマスは再び真剣な表情で結界魔法の実践に取り組み始めた。彼の顔つきから、いかに攻撃に結びつくイメージが、彼のやる気を引き出すのか、ラウラは改めて知った。トーマスは本当に、攻撃に繋がらないとやる気が出ないのだ。彼女は、彼の単純さに呆れながらも、その素直な反応を少し微笑ましく思っていた。
ラウラは楽々と、トーマスはかろうじて、三年生に進級することができた。三年生の授業は、ミヒャエル先生による回復魔法が中心となる。攻撃とは結びつかない分野なので、トーマスはまた苦労しそうだ。




