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新たな決意

 一連の事件がもたらした波紋は、人々の日常と、この国の仕組みの奥深くまで静かに広がり始めていた。 トーマスの新しい門出の話が終わると、今度はクリスティーナが、落ち着いた、しかし決意に満ちた声で話し始めた。


「私からも報告があるわ」 彼女が語り始めたのは、闇魔法使いの呪いよりも、ずっと現実的で、深く根を張った問題だった。


「今回の擁壁崩壊事故の根源にあった、土木建設工事の下請け・孫請けの問題を解決すべく、新しい法律を作ることになったの。法案を起草するように、大臣から正式に話が来ているわ」


 クリスティーナの眼差しは、遠い未来を見据えていた。 「一度の立法で完璧なものはできないでしょう。それでも、今回の事件のように、立場の弱い人々が泣くことが、できるだけ少なくなるように、今は知恵を絞りたいと思っているの」


 法案が法律となり、実際に効力を発揮するまでには、長い時間と、幾重もの困難が伴うだろう。 「時間はかかるけれど、私は頑張るわ」


 その言葉に、シュテファンが深く頷いた。彼は、市井で働く職人の現実を肌で知っている。 「行き過ぎたピンハネができないようにしないとね。まっとうに働いた人間が、まっとうな報酬を得られるように」


 ラウラもまた、心の中で静かに同意していた。彼女がこの事件を通して感じたのは、闇魔法使いの力そのものよりも、むしろ、粗悪な材料を使わなければ、会社が立ち行かないという、そこまで施工会社を追い込んだ社会の構造的な冷たさだった。


 公共工事というものは、多くの人々が「食える」ための、一つの大きな循環の仕組みなのかもしれない。下請け、孫請けという構造自体は、仕方がない面もあるのだろう。だが、現実には、その仕組みの中にいる人々の多くが「食えていない」。そこには、生命と生活を脅かす、歪んだ不均衡が存在している。


 ラウラは、古文書に記された再生魔法の禁忌と同じように、この社会にも、踏み越えてはならない一線があると感じていた。下請け会社が、ただ搾取される存在ではなく、人として、職人として、ある程度守られる仕組み。それがなければ、またいつか、どこかで、同じように悲しい事故が、人の心に闇を生み出すだろう。


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