古の文献
シューマッハ家での文献探しは、ハワード医師を通じて研究所の正式な仕事として認められた。その代わり、ラウラには定期的な報告書の提出が義務付けられた。しかし、ラウラにとって、それは何の苦にもならなかった。再生魔法の深淵に触れる、その驚くべき発見の数々は、頼まれなくとも誰かに伝え、記録に残すべきことだと、彼女自身が強く感じていたからだ。
あっという間に半月が過ぎた。古語と格闘する日々の中で、ラウラは、ついに求めていた「それらしい」記述にたどり着いた。それは、再生魔法の本質に迫る、驚くべき一文だった。
再生魔法は、その対象者の肉体の再生のために、周囲から「生命力」を集め、それを失われた部位の再構築に使う、という表現。
対象者の肉体の一部と、術者の魔力が消費されることは、ラウラも経験的に知っていた。しかし、「周囲の生命力」を集めて使うという、意識の及ばない領域の作用については、全くの盲点だった。
その瞬間、長らくラウラを悩ませていた謎の糸が、するすると解けていくのを感じた。
同じ部屋に重傷者がいる場合に、再生魔法を使ってはならない。
その禁忌の理由は、あまりにも明白だった。ただでさえ命の灯が細くなっている重傷者の周囲から、再生のために「生命力」を集めてしまえば、それは命を奪うことと同意義になる。救いの魔法が、瞬く間に呪いへと転じる。
ラウラは、念のために、カミラにも同じ文献を読み解くよう依頼した。何分にも、古語で記された重要なテキストだ。一言一句を読み違えてはならない。
カミラもまた、長い沈黙の後、ラウラと全く同じ意味を取った。
「間違いはないわ、ラウラ。これは、私たちが知るべき、魔法の恐ろしい側面よ」
確信を得たラウラは、この新たな知見を、すぐにでも再生魔法の「禁忌」として付け加えようと心に決めた。
さらに、この謎を調べる過程で、再生魔法の中断と再開に関する記述も見つかった。
再生魔法を何らかの事情で中断した場合、切断された部分は、時間が経つにつれて皮膚に覆われて滑らかになるのだという。それは、あたかも自然治癒がその場で完結したかのような、穏やかな状態になるらしい。
そして、再生魔法を再開したときには、その滑らかになった切断面から、驚くべきことに、まるで新たな肉芽が生えるように再生が再開される、と記されていた。外科医の手を煩わせる必要もなく、魔法は、その続きから、静かに、そして力強く再開するのだ。
ラウラは、古書の文字に刻まれた、この深く静かな「生命の理」に、ただ息を呑んだ。魔法は、単なる力の行使ではなく、生命の根源的な流れに触れる、畏れるべき業なのだと、改めて悟った。知識の森の奥で、ラウラは、一つ、また一つと、世界の真実の欠片を手にしていた。




