兄弟のそれぞれの道
その頃、姉のクリスティーナは、国の建設土木を担当する部署の官僚になっていた。主な仕事は国が発注した工事の施工監理や場合によっては監査を行う部署に配属されて全国の現場を飛び回っていた。国は、優秀な魔法使いを高給で雇い、土木工事をはじめとするさまざまな事業に活用していたが、彼女はもっと効果的な使い道はないかと模索していた。身内に魔法使いがいるのだから、魔法が一体どういうもので、何ができるのか、ラウラを通して間近で観察し、考えていこうと思っていた。あわよくばラウラと一緒に官僚の道を歩んでいけたらとも考えていた。
次兄のシュテファンは、金属加工の会社に職人として入社し、そこの親方に付いて腕を磨き始めていた。硬い金属を自由自在に扱い強くも脆くもできる金属加工に魔法のような魅力を感じていた。ラウラが卒業したら、何かアクセサリーをプレゼントしたいなぁと考えていたが、実際に彼が今取り組んでいる金属加工は、アクセサリーとは畑違いの、武骨で頑丈な金具類を作る仕事だった。
長兄のフリードリヒは、軍の上級士官になるため、体育学校から大学へ進み、勉学に励んでいた。ワーグナー家の兄弟たちは、それぞれの道へ進み、それぞれの人生を歩み始めていた。それは、まるで、夜空に散らばる星のように、それぞれが異なる光を放ちながら、輝いていくようだった。